くっつきたがるシロの秘密と勇者
「勇者さま、最近シロさんとのスキンシップが多い気がします」
「そうかなぁ…いつも通りだと思うけど」
「いつもならお風呂上りにくっついたりしないです」
僕とシロさんは境界の地にある自販機コーナーに拉致され、取り調べを受けている最中だ。
「今日はくっつきたい気分だったにゃ」とシロさんが。
「シロさん、勇者さまとのスキンシップは平等にというお約束をお忘れですか?」
そんな事決まっていたんだ。初耳と言うか、おそらく僕抜きでの話し合いの席で出たんだろうけど。
「極力守っているにゃ」
「それでなくともシロさんは学生時代に…そういえば薫先生からの聴取もまだ済んでいないんですよね」
なんか怖い話になってきた。
「勇者さま、薫先生をお呼びすることは?」
「ちょっと待って、薫先生にも予定があるだろうし」
「薫先生にも関係のある事ですので」
ひとまずメッセージを流しておく。姫さまがお話をしたいという事を書いて。
一応DSOVRにはいるようで、オンライン状態なのは確認している。
数分してメッセージが返ってきた。
今日もドラちゃんの散歩をして丁度終わったところだというのでDSOVRへ迎えに行くこととなった。
僕が逃げないよう、姫さまも同行するという。
---
「すいませんケイさん」
たまに薫先生と呼んでしまうが、1対1の場合は秘話機能が働くので問題ないだろう。
「なにかあったの?深刻そうな顔をしているけれど」
僕は深緑の慈悲を着てヘルメットもかぶっているのに?
「教え子の態度を見れば大体わかるものよ」と。
そんなに表情出るの?このヘルメット。怖いんですが。
「お話はいつもの場所で伺います」と姫さまが。
適当な場所にいつものようにドアを出現させ、境界の地へと薫先生を招いた。
---
「益田君とシロマリアさんの話ですか?前回話した以上の事は…」
薫先生も24時間僕達を見守っていたわけではない。適任と言えば国のエージェント達だろう。
それこそ家に盗聴器まで仕掛けていたようで。主に僕が秘密を洩らさないかの確認の為らしいけれど。
「勇者さま、そのえーじぇんとという方とお話は出来ませんか?」
「さすがに連絡手段は無いですよ。名前すら教えてもらってなかったですし」
皆さんコールサインで話をしていたので誰が誰やら。
「ところでどうしてまたその話を?」と薫先生から質問が。
「最近シロさんが勇者さまにちょっとくっつきすぎなのでもう一度昔の話をお尋ねしようかと」
「登下校時もそうだけど休み時間もほぼ一緒にいたわよねあなたたち」
ああ、新しい話が蒸し返された。休み時間も日本語の勉強を手伝っていただけなのに。
ちなみに彼女が所属していた委員会の資料なども僕が事前に翻訳をして渡していた。
「シロはいつも通りにゃ?」
「いつもなら勇者さまの護衛に挙手されるようなことは無かったと思うのですが」
「たまたまにゃ。タングラートに行くと聞いてお昼にお魚が食べられたらいいかにゃくらいのノリだったにゃ」
まさかの食欲が理由。
「姫さま、シロさんはこういう人なので特に理由は無いと思いますけど」
下校時も買い食い率ほぼ100%でしたし。
「元恋人にそれはないにゃ!」と抗議された。
今は恋人じゃなく、家族なので元恋人呼びされるんですけど。
「シロさんが勇者さまにくっつきすぎなのはお魚が原因ということですか?」
「そういうことにゃ」
薫先生、とんだ痴話げんかに巻き込まれてかわいそうと思ったが、本人は何故か楽しんでいる様子。
「まさか益田君をめぐって女の戦いが始まるなんて」
まぁ、それは僕も同感です。社会人になるまで仲の良かった女性ってみんな異世界人なんですよね。考えてみれば。精霊女王は異世界精霊か。ソニアは異世界妖精?
シロさんも本当のところ普通の猫人なのか疑問に思うところがあるのですが。
なんとなく原因が分かったところで僕はココナのお世話をすることに。
---
「今日も着せ替えですか…」
皆さん思い思いの衣装に身を包み、フォトブースで撮影を楽しんでいる。
子供服以外にも新規にコスプレ用の衣装も並んでおり、地球の文化に染まった彼女達はアニメのコスを楽しんでいる。
「旦那さま!」とココナが駆け寄ってきたので抱き留めた。のは良いのだがそれは何のアニメの衣装ですか?
ミニスカの巫女装束におきつねさまのおみみとおしっぽさまがマッチしていますが。
「ココナちゃん!写真撮るよ!」
今のはアルマか?
「旦那様はお着換えをなさらないのですか?」
そんな上目遣いで言われたらぐらっと来ますけど。
男性用のコスは用意されているんだろうか。
見たところ特に無さそう…なんだろう。あのトルソーに着せられた真っ黒な服は。
全身黒づくめでコートも真っ黒。要所に金色の装飾がされているけれど元ネタが分からない。
見た感じその一着くらいしかないので、ココナのお願いとあらばとおもい着ることにした。
---
「益田君、今になって中二病発症したの?」
「薫先生やめてください、非常に刺さりますので」
装飾が凝りまくった模造刀まで持たされ、オンラインゲーの主人公のような格好に。
「ちゅうにびょうなら小学生のころにやっておったな」と昔をえぐり返す人が。
なんであんな遊びをしていたのか、当時の僕に聞きに行きたいくらいだ。
「勇者さま、ちゅうにびょうとはひめゆぶに出てくるちゅうにびょうと同じでしょうか?」
姫さままでえぐりに来ている。
「特に何かに目覚めたわけでは無いですので、あくまで中二病のコスだと思っていただければ」
右目や右腕がうずいたりはしませんので。
アカネさん、そんな真顔で見つめないでください。
今、何かのキャラ名を口にしましたけどどの作品ですか?
黒づくめロングコートのままフォトブースに連れていかれポーズを指定されての撮影。
これ、もしかして国家間で共有はされないですよね?




