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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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2012/2387

治療魔導を覚えたどりあーどと勇者

「魔獣反応、1キロ圏内無し」


深緑の慈悲のバイザーに投影したマップからは魔獣の反応が消えた。


周囲は割と開けた平原で魔獣が発生する魔素溜りといったものも存在しない。


一体どこから湧いてきたのか。


「あなたは…もしや、預言書の」


護衛の冒険者から声を掛けられた。おそらくこのメンバーのリーダーだろうか。


30代くらいの男性で、一般的な茶色の皮鎧、要所を守るプロテクタ、獲物はショートソード。


「はい、預言書の勇者です」


「助けていただきありがとうございます。我々だけではとても守り切れなかったと」


「巡回中にたまたま見つけただけですので、あ、そうだ」


『シロさん、イザベラ。申し訳ないけど二人でタングラート城へ報告に行ってもらえるかな。あと大黒屋さんにも』


一旦音声をミュートし、シロさんとござる侍に魔獣大量発生の連絡とお魚の引き取りをお願いした。


『まかされたにゃ!』


アヒルちゃんは展開したままなので問題ない。


二人を乗せたアヒルちゃんは「ぐえい!」と鳴くとタングラート方面へと飛び立った。


「今のは!」


「国から借り受けた古代遺物アーティファクトです。それで被害の方は?」


「幸い荷馬車と乗客には…ただ、うちの面子が三人大けがを」


「けがの程度は?」


「こちらのエルのお嬢さんに治していただいたのですが、まだ歩くのは無理な感じで」


大けがを一気に治してしまうと反動があるのである程度のところで治療を止め、時間が経ってから再治療となる。


どりあーどさんは森の民と認識されているようだ。ならば特に説明は要らないだろう。


話をしながらスキャンをしているが、野良迷宮の痕跡もない。


「魔獣の湧いた形跡が無いんですよね…ここまで来る途中に森を抜けたりはしませんでしたか?」


「森は1ニールほど前に抜けましたが」


馬車の来た方向を再度スキャンするとやや魔素濃度の高い場所が見られる。


「もしかするとずっと後をつけられていたのかもしれませんね」


「そんな…見張りは立てていましたし、見通しのいい平原であれだけ目立つ魔獣が」


これも何かしらの異変なのだろうか。


ちなみにそろそろ日が傾き始めている。一番近くの村までたどり着くまでには真っ暗になるだろう。


「ひとまず先を急ぎましょう。近くの村まで護衛しますので」


「そんな恐れ多い…」


「また魔獣が襲ってくる恐れもあります。魔獣の湧く瞬間を確認できれば今後の対策にもつながりますし」


僕は深緑の慈悲のホルスターからコピーのアヒルちゃんを取り出し、顕現させる。


4輪駆動の二人乗りATVだ。


後ろにどりあーどさんを乗せ、荷馬車の後ろを走ることに。


またしても出現した謎の物体に冒険者の皆さんは目を丸くする。


古代遺物アーティファクトと言えば大体どうにかなるので問題ない。


---


『姫さま達は先にお夕食を済ませてください』


『勇者さま、どりあーどさんお気をつけて』


魔獣の大量発生の一報とお魚の配達完了を確認し、荷馬車とその護衛を近くの村まで送り届ける途中の僕たち。


警戒しながらの行軍の為、足は遅く日暮れまでに村に着くのか怪しい雰囲気となってきた。


それと荷馬車にはけが人を乗せている関係でそれほど速度を出せないというのもある。


「どりあーどさん、お腹空いたら適当に吸ってもらってかまわないですよ」


深緑の慈悲のヘルメットを跳ね上げ、魔蔦の入る隙間を作ったのだが僕が素顔を晒したら後方を警戒していた女性冒険者が「きゃあ!」と悲鳴を上げるものだから馬車が止まってしまった。


「サンドラ、何があった!」


「ご、ごめんなさい!預言書の勇者様が」


何事かと馬車の後ろに集まってくるみなさん。


「もしかして大教会の人相書きと違うから驚かれているんですか?」


「いえ、あんなところの戯言は信用しておりません。その、呪いで鎧を脱げないと…」


「それも誰かが広めた嘘ですね。さすがにこれが普段着と言うわけではありませんから」


みなさん、まじまじと僕の顔を見てくるものだから何か顔についているのかと。


今のトラブルで余計に遅くなってしまい、村に付く頃には完全に日が落ちていた。


---


「何か気が付いたことがあれば冒険者ギルドに申し出てください。僕のところに連絡が来ますので」


とはいえちょっと不安なのでドローンを展開しておくことにする。


村は300人ほどの集落で冒険者向けの宿も整っている。


けが人にエリクサーを渡そうかと思ったが間違いなく問題が起きる。


水で薄めて効果を落とすことも考えたが、実験もしていないので却下とした。


「治療していただき助かりました。手当が遅れていたらどうなったか」


「お礼なら彼女に」


ある程度時間が経ったのでもう一度治療魔導を掛けると言って荷馬車に行ったどりあーどさん。


「しばらく安静にしていれば大丈夫」との事らしい。


しかし彼女、いつの間に治療魔導を取得したのだろうか。


「それでは僕達はこの辺で」


「もう日が落ちて移動は危険では?」


「大丈夫です。空を飛んで帰りますので」


ATVをエアカーに変形させるとまたしてもどよめきが!


あっけにとられる皆さんをその場に残し、名も知らぬ村から辞去することにした。


---


「姫さま、ただいまりもです」


「勇者さま!ご無事でしたか!」


「ちゃんと深緑の慈悲を着て戦いましたので大丈夫です」


お屋敷に深緑の慈悲を着たままは入れないので玄関でパージし、立たせておく。


「魔獣の大群が出たと報告を受けましたが、どのあたりで?」


今日は国王様もいらっしゃる。当然だが王妃様の姿も。


「タングラート領内に少し入ったところにある平原です。周囲には野良迷宮の反応も無く、どうやって湧いたのかは不明でして」


現場にはひそかにドローンを展開、半径10キロ圏内を捜索するよう指示を出してある。


「今回、護衛の冒険者にけが人が出ていましたのでどりあーどさんが治療を…そういえばどりあーどさん、いつ覚えたんですか?治療魔導」


「あの時…サブローが大けがをした」


僕が自分の不注意で究極のアレに生身で乗り込み、コクピット内で振り回されて怪我をした時の。


というか随分最近ですね。


「ヒールリングなしで治療するとちょっと目立ちそうな気も」


「これでどう?」


彼女は自身の魔蔦を右腕に絡めるとヒールリングのような銀色の物体が出現した。


しかしどりあーどさん、なんかスペックが急上昇しているというか…。


「お話の続きは夕食の後にお聞かせくださいませんか?」とオパール王妃が玄関近くにいた僕達を食堂へと連れていく。


カズラヤの件もまだ未報告だったので改めて話をすることに。

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