変わり種の黄金饅頭と勇者
黄金饅頭の中が気になって確認していると…。
「益田よ、それは何じゃ?今川焼にしては中身が」
社長は今川焼の派閥か。
「あんこの代わりに餃子の種が入っている変わり種です」
「そんな設定をした覚えはないのだが」
「おそらく双子が改造を…」
先程から姿の見えないシース、レーネの二人が何かしているのは間違いない。
しかし、黄金饅頭に餃子を仕込むとはどういった風の吹きまわしなのか。
ちなみに皆さん緑茶を召し上がっている。
「半分寄こすのだ」
まだ手を付ける前だったので餃子入りを半分に割ったものを社長に手渡す。
「なんとも奇妙な…また益田が何かやったのかと思ったのだが」
変わったことはすべて僕のせいになるらしい。
「あまくておいしいです」とココナがカスタードクリーム入りの黄金饅頭をはむはむしている。
「このロールケーキ、しっとりしていて舌触りがいいわね」
薫先生は半分ほど食べ終わっている。長さはそれほどないが割と太目だ。
恵方巻きくらいのサイズ感だろうか。
僕も餃子あんの黄金饅頭を一口。
皮がコレジャナイ感を醸し出すが、普通に餃子だ。
ただ、食べ応えがあってまた違った食感となる。
月餅ともまた違った歯ざわりというか、本当に小麦粉に膨らし粉が入っただけの皮が何とも言えない。
ちょっと半分だけだと物足りないので追加でもう二つくらい買うことに。
「ココナ、チョコはどう?」
「どんな食べ物でしょう?」
「色は黒いけど独特の甘味があって癖になると思うよ」
ココナにチョコクリーム入り黄金饅頭を差し出す。
「先生はどうします?」
「甘味少な目がいいかしら」
「でしたら抹茶ですかね?」
そんなわけで先生には抹茶クリームの黄金饅頭を。
「これハンバーグ入れてもいいんじゃないですかね」
餃子あんの黄金饅頭、ハンバーグ入れたらただのハンバーガーになるのでは?と。
ハンバーガーと違ってソースがこぼれにくいからソースまみれの黄金饅頭が出来そうなのだが。
今日はちょっと自販機弄る時間が無いので明日以降でやろう。
「やっぱり益田は…その餃子いりじゃがDSOVRに出しても良いか?」
「一応双子に確認してからお願いします。大丈夫だとは思いますが」
果たして誰が食べるのだろう。
仮想世界だからこそ食の冒険が出来るというのもある。
現実世界で餃子の種を仕込もうとしたらとんでもなく手間がかかるだろうし。
皮が焼けるまでに具に火が通らないだろうからあらかじめ調理しておいたアンを用意しないと無理そうだ。
「このちょこというのもおいしいです!」
ココナはチョコ入り黄金饅頭を平らげた。
口の周りにちょっとチョコついてますが。
「益田、ちょっとビールを」
社長からオーダーが入った。
やはり酒の肴ですよねこれ。
片手で食べられるからお酒も進みそうな感じですが。
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「ますだっちー、何食べてるんですかー」
今日はカモネギコンビの姿も。
「餃子の種入り黄金饅頭です」
「餃子?」
「回転焼きじゃないの?」
この二人は回転焼き派閥か。
よし戦争だ。という訳にもいかないか。
二人も自販機で餃子の種入りを買い求め、かぶりつく。
「肉汁すごい」
「味は餃子なのに見た目回転焼きで脳がバグりそう」
「益田君、それおいしいの?」
「先生も食べますか?」
まだ口をつけていないのを二つに割って薫先生に。
ココナの視線が釘付けになっているので残りの半分を彼女に。
「見た目が大判焼きなのに…」
先生はそちらの派閥でしたか。というかみんなバラバラだよな。
「おにくのあじがする!」
ココナはお菓子なのにお肉の入った謎の物体に目を丸くする。
「欲しかったら追加で持ってくるよ」
口いっぱいに黄金饅頭をほおばり、こくこくと頷くココナ。
「不思議…後引くというか、これ二つ食べたら完全カロリーオーバーだと思うけど」
餃子3つ分くらいのアンが入っていそうだし。
「「薫先生、ここでカロリーの話は禁句です!」」とカモネギコンビが。
ホントに息ぴったりだよな。
そういえばあちらの世界で餃子は見たことないんだよな。
バイオプラントのキューに餃子弁当を入れておくか…。
口の中がニンニクになってしまったのでお茶で中和を。
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「勇者さま、ココナちゃんのお着換えは続けますか?」
「ちょっとお腹いっぱいみたいだから休ませてあげて」
仮想空間でも満腹感はある。
ただ、このまま現実世界に戻るとどうしようもない空腹感に襲われることになるのだが。
ココナ大丈夫かな。
インベントリに携帯食が入っているのでお腹が空いて目を覚ましたら食べさせないと。
「そういえば先程から胡麻の香りが」
「餃子入りの黄金饅頭を食べていたせいかな」
「ぎょうざ…ひめゆぶにも出てくるギョーザでしょうか?」
「多分合っていると思うけど、普通の餃子とちょっと違うというか」
こっちの冷凍食品コーナー、餃子もあったと思うのだが誰も存在を知らないよな。
コナモンの大将、地球にいた頃は餃子は別カテゴリらしくあまり食べなかった気がする。
ひめゆぶの餃子回はまだ未読だったな。今度読んでみよう。
そんなわけでファッションショー帰りのみなさん、何故か餃子入り黄金饅頭を次々と買い求める。
売り切れは無いので大丈夫なのだが。
地球出身のみなさんの反応が面白い。
鈴は何?という表情だし、アカネさんも困惑気味。
おにぎり三人組は久々に食す餃子の味に懐かしさを感じているような。
境界の地の本日の締めが餃子入り黄金饅頭になるとは。
これ、バイオプラントのキューに入れるんですか?




