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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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2000/2393

お風呂に出現した泡の塊と勇者

お夕食が終わり、お風呂の時間。


「勇者さま、今夜は境界の地へ行かれるのでしょうか?」


「特に…ああ、そういえば」


新入りのココナをあそこに連れて行かないと。


そのココナは先輩方にやさしく背中を流され、戸惑っている様子。


「ココナをひなちゃん達にも紹介しておかないとならないかな」


「順番は決めてありますので」


何の順番かと尋ねると、僕の回りに寝る際の順番だそうで。


あれ、決まっていたんだ。


いつも適当なポジション取りかと思っていたのですが。


「その泡の塊だれ?」


なんか一人だけとんでもなくせっけんを消費している方がいらっしゃるのですが。


返事が無いけど聞こえないのかな。


「流すよー」


泡の塊から現れたのは褐色の肌。


「アルマ?」


もしかして今夜向こうに行くのが聞こえていつもより念入りに体を洗っていたとか?


デリカシーが無いと言われそうだけど、彼女達のにおいが気になったことは一度も無いんですが。


まぁ、あまり僕が言うと余計に気にしそうなので、水に流しておく。


泡の塊は排水溝の上で山となり、徐々に押し流されていった。


---


皆の順番はランダムに決まるが、アルマの定位置は僕の隣だ。


彼女の吸魔体質が境界の地へ皆を連れていく原動力となっている。


以前はこの方法しかなかったが、今はVRヘルメットという代替手段が。


寝るのにあれを被るのはどうかという点となによりアルマがこの役目を果たさないと自分がここにいる意味が無いと思い込んでいる節があるので。


「サブローさん、寝るまで息を止めて」


「なるべく努力します」


そして新入りのココナは僕の左隣に。


「あの…ここでは皆さん一緒に寝られるのですか?」


「毎日じゃないけれど…ほぼ毎日かな?」


そういえばここ最近は連日だった気がする。


昨日はさすがに控えましたが。


怪我をしたことは社長には伝えてあるが、ひなちゃんと妹さまにはちょっと話づらくて伝えていない。


あの動画をあちらで見ることになれば気付かれるかもしれないが。


「それじゃあ、精神転移開始」


僕の流した魔力がアルマに吸われ、輪を描くようにして眠る皆さんを境界の地へといざなう。


---


「一日ぶりな気がします」


「あまり無茶はしないように。あれはどういうわけか右目に見えなかった」


「右目の不調ですか…またマッサージしますか」


「いや、今日は遠慮しておこう。それだけいれぎゅらーだったのかもしれない。そろそろそこから出るのだ。娘がまっておるぞ」


いつものように十六夜さんのむっちりとしたおしりさまに話しかけてからスカートを出ると、ココナが心配そうにこちらを見つめていた。


まぁ、やってることが不審者そのものですし。


「ココナ、おどろかせてごめん」


「あの…ここは?さっきまでお屋敷に居ましたよね?」


「ここはどこにでもあってどこでもない。時空の狭間に存在する時のとまりし場所、境界の地へようこそなのじゃ」


十六夜さんから何度目かの説明がなされたがココナには伝わっていない様子。


「まぁ、難しい事は考えず夢の中だと思ってもらっていいよ。起きても覚えていると思うけど」


「こんなにたくさんの人が出てくる夢は見たことないです!それにみたこともないものがたくさん…」


「ここにあるものは僕が居た世界、地球にあるものが殆どだからね」


「ちきゅう?」


「その辺は起きてから説明するとして、ココナ、甘いものは好き?」


「あまいもの?どんなものですか?」


彼女、カズラヤにいた頃は甘味の類を食べさせてもらわなかったのか。


「ちょっとびっくりするかもしれないけれど、おいしいものだと思うから」


いきなり大盛のクレープはハードルが高そうなのでハーフサイズを食べさせてみるか。


確かお子様用のやつが自販機にあったと思うけど。


「勇者さま、ココナちゃんのお世話は私たちにおまかせください」


姫さまが手を差し伸べるがココナはしっぽをかかえちょっと後ずさる。


あまりぐいぐい来られるのがいやなのか、それとも姫さまがユークレスさんそっくりなのが怖いのか。


「今日は僕が案内するから」


姫さまはちょっとショックを受けている。


まさか自分の祖母が原因だとは分からないだろうし。


そのユークレスさんはココナに嫌われないよう一生懸命自分を押しとどめているようだが。


---


「はい、ココナ。これはクレープというお菓子」


「お菓子…お菓子を貰えるんですか!」


おしっぽさまをぶんぶんと振って喜ぶココナ。


ここが仮初の世界で、食べたとしても味覚だけしか満足させられないのだが。


ちょっと説明に困るので、一旦は全部夢で押し通すか。


ちなみに皆さん勝手知ったるなんとやらで、思い思いの場所で甘味やらコナモンやらを食している。


ハーフサイズのクレープの包みを破り、露出した生地を彼女に向ける。


「ココナ、あーんして」


「こう、ですか?」


ちいさなおくちを開けたココナにクレープを。


「いいにおいがします。これは…」


「これが甘いお菓子だ。この世界、夢の中なら好きなだけ食べられるからね。もちろん元の世界でも」


クレープはねこのしっぽに丸投げしてしまったので一度様子を見に行かなくてはならない。


何度か試し焼きを見せてはいるのだが。


ココナの目じりに涙が浮かぶ。


「あの時、荷馬車にしばりつけられてもうしんじゃうのかと…ずっとあのお店で下働きをしていて…それもやらなくてよくなるのかなとおもったらちょっとうれしい自分がいて」


ハーフサイズのクレープを食べながらぽつぽつと話始めたココナ。


「光の女神さまの御許に行くのかと…旦那様に拾っていただいて、わたし…」


僕にしがみつき声を殺して泣くココナを軽く抱きしめていると、見知った顔が。


「先輩、その子どうしたんですか?」

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