実績解除の鬼と勇者
24/04/18 typo修正
「勇者さま!」
深緑の慈悲のロックを解除し、バイザーを上げると姫さまが深緑の慈悲の前に椅子を置いてその上に立ち、何かを見せようと必死に背伸びをしている。
「もしかしてDSOVRのアクセサリですか?」
「はい!あの世界からも持ち出しが出来ました!」
姫さまの目の色と良く似たサファイヤブルーのイミテーションジュエリー。
おそらくは魔素で形作られたものだろうと推測されるが、鑑定する方法が無い。
なにしろ本物そっくりの特性を持つので。
いつぞやみっちゃんさんが欲張って持ち出したダイヤの指輪はダイヤそのままの輝きを有している。
ちなみにこの世界にも似た鉱石はあるが、カットの技術が足りない。
ダイヤはダイヤで研磨すると聞いたことがあるが、この世界にはそこまでの硬度に対応した研磨機が無いのだろう。
古代遺跡からはダイヤに似た指輪等が出るらしいが、あいにくと現物を見たことが無い。
そういえば自分の分は取ってなかったっけな。
皆さんの分を用意するのにいっぱいいっぱいでしたし。
ということで、外を見ればかなり日が傾いていた。
本日は兵士用にDSOVRの環境を用意しただけで終わってしまった。
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お夕食の時間。
ラシーマス国王からDSOVRの件で改めて礼をしたいと言われ、使っていただくことでこちらに得があるので大丈夫ですよとは答えたのだが、それでもというので…。
「以前にもお願いしたかもしれませんが危険な方の宝物庫を閲覧させていただけけたらと」
主に双子のお願いであるが。
双子は今日にでも覗きに行きたい様子だが、一応入室の手続きがあるというので明日にしてもらった。
ライスリッチフィールドが特殊なだけなようで。
マッスルキングさんがいればほぼフリーパスで出入りしてましたし。
あそこも魔力紋によるロックが掛かっており、ライスリッチフィールドの王族にしか開けないと。
ちなみに姫さまでも開錠可能だが認識装置が高い場所にあり、ちょっとだけ背丈が足りない。
僕が抱きかかえてテストしたのだが、アルマから文句が出たのでこの方式は今後封印されることになった。
抱きかかえる際、姫さまの胸に触れたとか触れないとか。
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お夕食後、食休みをしてからいつものように半露天風呂を堪能。
今夜はオンライン版のDSOVRへ行きたいという皆さんの為に従者の星へと集まることになった。
押し入れから布団がリレー形式で運ばれ、アッという間に雑魚寝用の場所が完成。
先日怖い思いをしたレイアさん。彼女は臆することなく今日もお供の竜舌の騎士と花壇メイドを伴い、かの地へと赴く。
皆さん、どこかしら体が触れいてるのを確認し、僕の魔力がアルマに流れ込み、意識が遠のいていく。
「今日は大勢だな」
「ええ、お邪魔します」
「このままあちらに行くのであろう。たまにはワシらもついて行ってみるか」
いつものように十六夜さんのおぱんてぃうす様とお話をしてからスカート下より這い出すと、みなさん転送ゲートへと吸い込まれていくところでした。
十人ほどのグループ行動を義務付けており、それぞれに護衛が一人。
今日はローカル側でたくさん遊んだばかりなので、街の散策がメインになるらしいと姫さまから聞いているが一部戦闘狂の方々がいらっしゃるのでどうなることやら。
十六夜さんと無月さん。今日は特にやることも無いというのではじまりのまちを堪能するという。
僕も第四エリアの暑い砂漠をうろついて少々疲れているので遠出は避けることにした。
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今日はクレープよりたこ焼きの気分である。
「勇者さま!こちらです!」
支払いを仮想通貨で済ませ、受取った舟を持って座る場所を探していると姫さま達から声がかかった。
勇者さま呼びはちょっとまってほしいが、姫さまの癖なのでしかたない。
他のプレイヤーからは「運営さんが勇者か」「そう言われるとそんな気がする」といったささやき声が漏れているが気にしてはいけない。
今のゲーム内の時間帯は丁度お昼に差し掛かったかどうかというタイミングで、みなさん昼食を取っている感じだ。
姫さまの隣にはレイアさんたち、そして大黒屋さんの姿も。
この人数だとパーティというよりレイドに近い気がするのでまず小人数でパーティを組んでもらい、レイド申請を実行。
レイド内のみ会話が伝わるようにすれば他のプレイヤーに立ち聞きされる心配は無くなる。
『初のレイド申請が行われました。実績解除により各エリアにレイド用ボスが準備されます』
不穏なワールドアナウンスが流れた。またなにかしちゃいましたか。
レイドボスってこの前究極のなんとかでぶち倒したアレとは異なるのだろうか。
さすがにHPバーが10本とかあるボスは出てこないだろうけれど。
今日は無視しておこう。せっかくみんなで集まって軽食パーティをしているところなので。
そういえば社長を見なかったな…。
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「社長、大変です!」
某S県の民家を魔改造した深夜のサテライトオフィスにヤマの悲鳴が。
「どうした、またDSOVRでトラブルか?」
「各エリアのレイドボスが解放されました。まさかこの時点でレイド申請が来るとは思わず」
「レイドの申請が出来るのは第三次抽選後のはずだったが」
「すいません、うっかりフラグを立てたままなのを…」
「レイドの申請など普通はやろうと思わぬだろうから、もしかして」
「もしかして益田さんです。身内で会話するためにレイドの申請を」
「パーティには人数の上限があるから自然とそうなるか…レイドボスは?」
「各エリアの中心付近にポップして待機中です。エリアに入らなければ活性化されません。活性化しても以前のようにエリア封鎖も起きないので近づいたプレイヤー以外は問題は無いかと」
「まぁ、近づいたら益田でもなければ瞬殺だろうな…ワールドアナウンスで追加の注意を流しておくか」
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『警告!レイドボスは各エリアの中心付近にポップしました。近づくと問答無用で戦闘状態に入ります。戦闘能力は未知数です。不用意に近寄らないようご注意願います』
2度目のワールドアナウンスの声、多分ヤマさんだろうな。
これ、僕のせいなんだろうけど一応謝罪のめぇるを出しておくか。
「勇者さま」
「あー、倒しには行かないよ。倒しても多分次が出てくるだけだろうし」
「いえ、どんな物か確認したいなと思いまして」
意外と好戦的なんだよな姫さま。
他の皆さんも興味があるらしく、僕の方を期待のまなざしで見つめている。
「第一エリアのレイドボスなら大丈夫かな?」




