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強欲タヌキは金の夢を見るか

国防大臣は煮ても焼いても食えない感じです。

ぶぶ漬けでも出したほうが良かったのでしょうか。

言うだけ言って、大臣は帰っていった。


メイドさんにたのんで小皿に塩をひとつまみもらい、迎賓館の玄関にぱらぱらと撒く。


シルフィール姫が不思議そうな顔をしていたので、お清めと答えておいた。

塩には邪悪な気を祓う神聖な力があると説明したらふんふんと頷く姫さま。


姫に巫女装束を着せたら似合うかなーなどど、違う思考が流れ込んでくる。

自分にも邪気が来たようなので指についていた塩をなめて御祓いした。


---


双子が静かなので眠っているのかと思えば、僕のスマートフォンでなにやらしている。


とっくにバッテリーを使い果たし、車のエンジンを掛けたときにシガーソケットから充電しようと思って寝室のドレッサーに置いてあったのを双子がみつけたらしい。


「「ますたー!すまほーちゃんのじゅうでんできた」です!」


なんとスマートフォンにも精霊が宿っているという。すまほーちゃんというのは双子が名づけたようでこちらの世界に来てから「入った」と双子が説明してくれた。

人の言葉は理解できないようだが、精霊同士で言葉を交わす程度の知能があるみたいだ。

双子が精霊に働きかけ、充電機能を追加してくれた。


事も無げに言う双子ちゃん。


すまほーちゃんはものすごく小さな精霊で、精霊がエーテルを一旦魔力に変えた後、双子が施したマジックサーキットによりさらに電気に変換し、バッテリーが切れても半日くらい掛ければ満タンにできるという。


ちなみに魔導照明器具のマジックサーキットをコピーして改良したと説明する双子。魔導照明器具はスイッチにあたる部分から人が魔力を流すことで数時間ぼんやりと点灯するものだ。

暗くなってから専任の魔導士に来てもらい魔力を補充する。僕や姫さまには何故かできない。適正というのがあるらしい。

ちなみに月明かりのほうが明るいくらいだがむーどはまんてんだ!

発光石という迷宮で掘り出される鉱石に雷系の弱い魔法を発生するマジックサーキットを加えることで光るのだという。

姫さまに聞いたところ発光石自体が非常に高価なものらしく、僕は今のところ、迎賓館の寝室でしか見たことが無い。

床に近い場所の照明が1つ外れているけど見なかったことにしよう。


双子ちゃん、外すときは一声かけてね!

お菓子の包み紙すらはがせないのにどうやって外したんだろう。


「「ますたーはほかのせいれいにもすかれている」です」とのことだ。

まだ自分専用精霊については何の手がかりも無いので、すまほーちゃんに聞けないかと双子にお願いしたところ、わからないと回答されたようだ。



---



マーガレットさんに頼んで国王さまに夕食のお誘いをする。

姫さまが入り浸っているので国王が毎晩やってきても問題はないだろう。



夕食の時間。


食堂の華奢ないすに似合わない鋼の筋肉が座っている。

シルフィール姫の父上。

御義父さんだ。


今日はパスタである。うん、パスタ。

ミートソースである。イチゴとか抹茶ではない。

双子はちるちると一本づつ食べているので一向に減らない。味わいすぎだ。

しかたないので、フォークでくるくる巻いてお口にさしこむ。

あーんしている姫さまはしばらく放置した。泣きそうな顔になったので一回だけ。

父親の目の前で娘につっこむというのはどうだろう。パスタを。


国王の皿には4人前くらいのパスタが積まれていたが、一瞬で皿が空になる。

それをみていた双子が「「マスターもやって!」です」と無茶を言う。


そして、お酒タイム。しかしアルコールは抜きで。

今日は姫さまも隣に座っている。


わざわざ来てもらったのは他でもない。大臣のことである。

僕が城に行けば大臣やその配下に怪しまれそうなので、国王さまにご足労願ったという寸法である。


暴れん坊ローブの捕縛に勇者を駆り出そうという話をかいつまんでする。


「こちらにラクーンが押しかけたと聞いておどろきました。確かに顔合わせくらいならと許可をしましたがそのような話を。」


子供たちへのいやがらせにラクーンが絡んでいるのは間違いないという判断で一致した。



「お話中失礼します、アイリスさんがお見えです。」

ほんわかメイドさんが知らせてくれた。

もう夜も遅いというのに、どうしたんだろう。アイリスとリーナ、もうひとり見慣れない・・・

たしか屋台村で双子に声をかけていた子。


双子が反応した。

「「エテルナおねーちゃん!」です!」


エテルナは双子の姿を見て驚き、僕の顔を見てさらに驚いていた。


「シースちゃん、レーネちゃん!あのときの魔導士さん!え?勇者様?アイリス本当なの!」


「エテルナ、この人ならあの手紙を見せても大丈夫だから。」


「ええ、あの、そちらの冒険者さまとお嬢様は・・・お嬢様はあの時とうもろこしを食べていらした。」


エテルナさんの観察力と記憶力は優れているようだ。


「大丈夫です。冒険者さんもお嬢様も良い人です。」


ここでエテルナに「こちらは国王と姫さまです。」と言っても萎縮しそうなのでやめゆ!


アイリスとエテルナは仕事場が同じなんだそうだ。

昨日、エテルナの郷里から勉強のためにやってきた妹分が、そわそわして落ち着かないので理由を聞いたら村から手紙を預かってきたという。


村長から「兵士以外の信用できる大人に見せるように」と言われ、腹巻に手紙を隠し、ずっと守っていたという。

信用できる大人ということでアイリスに相談したところ、僕に行き当たったと。


手紙は未開封だが、封筒はよれよれになっている。必死に守ってきた証拠だ。


開封して中身を確認する。


ところどころ修正された、たどたどしい文字。エテルナたちよりも前に城へ勉強に来て、ある程度の力を付けてから村に帰った子供が、大人がしゃべるのを聞きながら書いたという。


内容は駐在している兵士の横暴と武器を横流ししている疑いがあるというものだった。

村人に露骨にわいろを要求する者、そして農機具と称して武器を持ち込み、どこかに運んでいるという。


「まちがいなくラクーンの配下だろう。」

と冒険家のおっさん、もとい国王が渋い顔で答える。


「武器については国防大臣の命令で老朽化した物を選んでかなりの数を鋳潰し、農作業用の道具に作り変えたと報告があったばかりだ。」


国王は続ける。

「国境周辺の農村には文字の読み書きができるものがほとんど居ない。村から子供たちを集めて勉強をさせ、村に帰ってから大人たちにも教えることで認字率を上げ、国から配布する農業用の資料などを読んでもらい効率よく農作物を作ってもらうのがねらいだ。そして計算もできれば地方の豪族による税の搾取も防げると考えたのだが。」


豪族は税の徴収などで国の方針に対立し、度々小競り合いが発生していたという。


「ラクーンが武器を横流ししているとすれば間違いなく豪族宛だろう。武器横流しの報告は知りうる限り一切あがってこなかった。村人がラクーンの配下の兵士に伝えたところでもみ消される。今回の件は文字の読み書きができる子供がいなければおそらくわからなかった。」


僕は答える。

「つまりはラクーンが子供を目の敵にするのは、村に帰ってから文字の読み書きや計算を教えられてはこまるからと。」


国王は自身のふがいなさを悔いているかのような表情でつづけた。

「おそらく最初は子供たちが書いた陳情書を兵士に渡してたのかもしれない。ラクーンはそれを知って妨害工作を始めたと考える。だから「兵士以外の」と念を押されたのだろう。」


国王は立ち上がった。


「この件はわたしが預かりましょう。勇者様は例の「暴れん坊ローブ」の件で何かお考えがあるのですね。」


「ええ、ラクーンの誘いに乗ろうと思います。化けたぬきに一泡吹かせます。」


国王はグラスに酒を注ぐと一気に飲み干した。


「飲みに行ったのに酒臭くないと怪しまれますから。」


「お父様!」


いままで静かにきいていたシルフィール姫が突然吠えた。

たぶん飲みたいだけだろう!という意思表示だ。


国王は酒瓶片手にふらふらとした足取りで城に帰っていった。懐には大事な手紙を忍ばせて。


エテルナやアイリス、リーナは完全に蚊帳の外になってしまった。

みんな何か心当たりがあるようで神妙な顔つきで聞いていた。

双子もうんうんと頷いていたがまねをしていただけなのだろうか。


エテルナは冒険者のおじさんが手紙を持っていってしまったことを気にしていたが、あの人がこの国で一番えらい人だからとだけ伝えた。


エテルナは会話の内容に首をかしげていたが、ようやく合点が行ったという様子であわあわしていた。

アイリスは姫さまが「お父様!」と呼んだ時点でわかったようだ。

リーナはしっぽをふってよろこんでいる!(つまりわかっていない)


すっかり遅い時間になってしまった。

エテルナたちは寮に住んでいるというが、こちらに来る時点で門限ぎりぎりだったので今日は戻れないそうだ。


3人ともどこかでかたまって夜明かしをするつもりだったという。


すこし引っ込み思案の姫さまが珍しい意見を放った。

「アイリス、リーナ、エテルナ。今日はここに泊まっていって!」


後世に語り継がれる壮絶なパジャマパーティーの始まりである。


「そうと決まればお風呂よね!」


といい終わる前に


「みなさん、お風呂の用意ができました。」

姫さまが発言する30分ほど前から、ほんわかメイドさんによる作戦が進行中であった。


次回はまたもやお風呂です。女子が3人寄ればなんとやら。

リーナわんこちゃんは勇者の毒牙(もふもふ攻撃)にかかってしまうのか!


スマートフォンの魔改造はいわゆる伏線です。

双子の工作スキルにご期待ください。


追記

迎賓館を設計した匠の思い付きにより、寝室の照明装置は非常に高価で扱いにくい発光石を使用しましたが、そのほかの場所では普及品の魔導照明装置が使われています。

発光石は雷系、その他は火系の魔導が使われているようです。

(この辺は不可解な能力を持つ登場アイテム一覧でまとめる予定です。)

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