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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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不完全な預言書

「ひめたべラジオ第二十一回放送」


預言書「ひめたべらじおとやらも二十一回目じゃ!今日は小僧が数分間くっきんぐをやるのじゃ」

勇者「おうわ!いきなり呼び出さないでください!…もしかしてリゾットをつくれと?」

預言書「察しのいい小僧はだいすきじゃぞ」

勇者「何かせりふが違いませんか?」

預言書「それじゃ早速つくってもらおうかのう」

勇者「今から作りますので、調理中は決して覗かないでくださいね」

預言書「分かった!わかったからはやくたのむのじゃ!」

---三分経過---

預言書「まだかのーまだかのー。ちょっとくらいなら覗いてもかまわんかのー」

預言書「がさごろ。ちらっ…」

???「みーたーなーーーーーー」

預言書「ぎゃーーーー!お、おぬしは誰じゃ!!!!!!小僧をどこへやったのじゃ!!!!」


その時、僕達がいるゲストルームにがちょがちょと音を立てて走りこんでくる人物が!


「勇者様!大変です!バザーの会場で騒ぎが!」


パレードなどで使われる装飾された軽鎧に身を包んだマーガレットさんの部下だ!


僕を呼びにきたということは、彼女達のような精鋭にも止められないほどの乱闘なのだろうか。


「分かりました。すぐに行きましょう」


そのまま出て行こうとする僕の腕をむんずとつかむバラの騎士のおねいさん。つかまれた所が地味に痛い。


「勇者様、マッスルキング様から「深緑の慈悲」を身に着けておいでくださいとの言伝を頼まれています!」


あれが必要になるとはいったい何が起きているのだ!もしかして会場に何かよからぬ分子が紛れ込んでいる?


「それなら赤竜王も使いましょう!」


それを聞いたバラの騎士のおねいさんがあわあわしている。


僕は一人で着られるようになった「深緑の慈悲」を装着し、「テイルズオブドラグーン」を背中に吸着させる。


以前は宝物庫にそのつど返していたのだが、いろいろありすぎて「自宅」に置きっぱなしするようになっていた。


今の騒ぎで目を覚ました双子ともえを抱きかかえ、姫さまとバラの騎士団のおねいさんと共に赤竜王に乗り込む。


OSが起動し、魔導機関エンジンが動き出すまで三十秒あまり。行き先を聞くのを忘れていた。


「えーっと、バラの騎士団の」


「スーフィニアと申します!」


「す、すふ…、スーさん!それで、場所はどの辺りに」


「あの…。武器選考会が行われる場所、でお分かりになられますか?」


「大丈夫だ!問題ない!」


「え、え?」


「?」


もえの髪飾りがおきまりのクエスチョンモードに。


そんなやり取りの間に赤竜王のコンソールパネルの準備中を示すオレンジ色がすべてグリーンシグナルとなる。


クラッチを踏んでギアを一速に入れ、アクセルを踏み込む。


「赤竜王発進!」


「「マスター了解なの!」です!」


真っ赤なボディに走る黒いストライプが中二病心をくすぐる赤竜王が一気に上昇し、会場の上空まで数十秒で到達した。


---


眼下には少なくない人数の群集が一箇所に集まり、数人を取り囲んでいる。


赤竜王で来たのはいいが、どこに着地しよう・・・。


真下を見るためのサブモニターを覗き込む際、うっかりステアリングのホーンパッドを押してしまった。


「GYAOOOOOOOOOOOOON!!!!!!!!!!!」


「うわ!!!!!!!!!!なんだこれ!」


ぷぺーという感じのクラクションが鳴るのかと思ったら、大音量で竜の咆哮のようなものが響き渡った!


それまで不規則に動いていた群集がぴたっと静止する。


ついでにコクピット内も静止している。スーさんががっつり固まっているけれど、おもらしとかしてないよね?


赤竜王のコンソールには「特殊補助装置「ドラゴンハウリング」が作動しました」という表示が。


どうやら大勢の敵を瞬時に制圧するための非殺傷音響装置らしい。いつの間に。


すすすすという感じで群集の輪が広がったので、そこに着陸をする。


---


マッスルキングさんから群集が暴れていた理由を聞いて力が抜けた。


この人たちは勇者を見るために集まっていたのだ。


昨日、武器選考会に勇者が現われるといううわさが広まり、発表からあまり時間をおかずに行われた勇者のお披露目に間に合わなかった人たちが、勇者を一目見ようと押し寄せたのだという。


しかし、出てきたのは。


今、僕の目の前にいる兄妹。まだ二十代に入ったか入らないかという感じだろうか。


---


地方で小型の魔獣を狩る流しのハンターをしていた二人だが、着ている防具が森の中で目立ちにくい「深緑の慈悲」に似た緑と黒のツートンカラーであったため、とある村でその防具を見た長老が早合点し、勇者と間違われた。


そこで大変なもてなしを受け、ちょっとばかり図に乗ってしまったところを悪徳商人の口車に乗せられて、勇者を騙った武器詐欺の片棒を何度か担がされてしまった。


という話を後になってから聞いた。


---


それで、この二人が出てきたのだが、パレードで本物を見ていた見物客からクレームが出て、それまで本物だと思って見ていた群集が騒ぎ出し、収まりがつかなくなった!


らしい。


小銭程度だが見学料を徴収していたのがさらに悪かった。


兄妹を置いて小銭を抱えて逃げ出したという悪徳商人は群集にもみくちゃにされたとかで、何故かふんどし一枚で横たわっている。


うんうん唸っているからたぶん大丈夫だろう。


だから本物を見せれば収まるのでは。ということで「深緑の慈悲」を着てと…。


固まっていた群集がざわざわしはじめた。


僕はふと思いつき、赤竜王の手のひらに乗ってから、姫さまの操作で上に持ち上げてもらう。


背中の「テイルズオブドラグーン」を取り外し、天高く突き上げ、魔力を流す。


城のテラスでやったことを再現した。


刀身が輝くと


「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」


群集から地響きに似た歓声が上がる!


その隙に手のひらからコクピットに飛び移り、赤竜王で兄妹と悪徳商人をむんずとつかむと、その場を離れた。


---


僕はその兄妹と悪徳商人をバラの騎士団に預け、自宅に戻った。


僕一人でゲストルームの様子を見に行くと、女児とカミラは仲良く眠っていた。


見張りを頼んでいたするどい目つきのメイド、カレラさんと騎士見習いはどうしちゃったのメイドのナタリアには休憩をとってもらうことに。


ゲストルームには僕と女児、カレラの三人だけだ。例の話を聞くなら僕一人のほうがいいだろう。


椅子に座って二人の寝顔を見ていると、「すまほーちゃん」がぶるぶると震える。


十六夜おもらしちゃん?」


通話ボタンをタップした瞬間、耳障りなノイスが流れ出した!


ふっと意識が遠くなる。


---


「すまん小僧。そこの二人、特に十五番には余計なことを喋られては困るのじゃ」


「預言書」は「すまほーちゃん」を使い、二人の記憶を一部封殺した。


スーさんこと、スーフィニアさんは「やや番外編「とある魔導士の不寝番」」に出てきたバラの騎士です。


そしてラジオは投げっぱなしに。

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