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屋台村のち国王会談

軽食につまみになんでもそろう屋台村。

城内に勤める人たちの憩いの場にもなっています。

国王さまにあう前に腹ごしらえだ。


武器保管庫へ行く途中、気になる場所があった。


「屋台」に見えるお食事どころ。


僕は焼きそばやたこ焼きなどに目が無い。

ソースやしょうゆの焦げるB級グルメスメルには敏感だ。


マーガレットさんに聞いたら割と最近作られた施設で、城の中で働く人に低料金で食事を提供する場所だという。

シルフィール姫は間近で見たのは初めてらしく興味津々のようだ。


一度前線基地である迎賓館に戻る。

マーガレットさんは雑用があるとのことで、現地集合にした。


留守番をしていた双子は夕べのお風呂に続いておいてけぼりを食ったのでややご立腹だ。


目つきのするどいメイドさんにお願いをする。

「すいません、今から城内の屋台村に行こうと思いまして、双子とシルフィール姫が目立たないよう町の子供っぽい服を着せたいのですが、見繕ってもらえますか?」


メイドさんの目が光った。


15分ほどで双子と姫用の質素な服が用意された。

双子は麻でつくられた素朴な感じのワンピースにサンダル。下はかぼぱんである。

姫さまは若草色の無難な感じの服を着ている。用意された衣装の中に何故かねこみみのついた帽子があったのでそれをかぶってもらう。


しかし、3人とも何を着てもかわいい。


自分はさっき借りっぱなしだったローブを着て、髪を隠すための帽子をかぶった。真っ黒な髪は割と目立つ。

あやしい宣教師のようである。


着替えまでしておいて思い出す。

問題はお金が無いことだ。


さすがに姫さまが小銭など持ち合わせているわけもないし、マーガレットさんに借りるのも気がひける。

目つきのするどいメイドさんに相談したところ軍資金を出してくれた。

僕が城内に出て買い物をするだろうということで、あらかじめ用意されていたらしい。


途中でマーガレットさんと合流する予定だが、買い食い経験の無い姫さまとこちらの貨幣についてまったくの素人が屋台に行くのは無謀と思われたのか、目つきのするどいメイドさんが同行してくれることになった。


着替えが終わってきょとんとしている双子に声をかける。


「シース、レーネ、いまから外へご飯を食べに行くぞ」


「「マスターとデート!」です」


双子のテンションが上がる!


---


じゅうじゅうという音、香ばしい香り。次々と裏返される串焼き。宙を舞う何か。

いらっしゃいと威勢のいいおっさんのダミ声、おねえさんのかわいらしい声に客が振り返る。

あちこちの屋台から湯気が立ち上り、周りに無造作に置かれた木製のベンチに腰掛け、質素な木の皿に乗せられた料理をはふはふとむさぼる人たち。


ザ・屋台村!


双子は目を丸くしている。

姫さまは例のあやしい目つきには及ばないものの、表情がやばい。


串に刺さった肉っぽいもの、焼きそばっぽいものとお好み焼きっぽいもの、とうもろこしに似たものを買って、人ごみを避けてすこしはなれたベンチに向かう。飲み物はなにかの果物を絞ったジュースを買った。


メイドさんにお会計をお願いした。横で見ていてなんとなくは理解できる。


双子を座らせ、肉と焼きそばとお好み焼きを取り分けて食べさせる。姫さまはとうもろこしをげっ歯類のようにかじってうっとりしている。一国の姫さまがこれで(ry

メイドさんは双子の世話を焼きつつ、無表情で串焼き肉と格闘している。

僕は双子に取り分けた残りをちまちまと食べていた。1品をがっつりたべるよりいろんなものをすこしずつ味わう派である。


マーガレットさんは私服に着替えてすこし遅れてやってきた。手にはお好み焼き風のなにかが乗っている。飲み物は無いようだ。マーガレットさんの飲み物を買うためにベンチを離れる。

飲み物に支払った貨幣は覚えていたので問題は無いだろう。

いざとなったらメイドさんを呼ぶ。


質素な服に着替えさせても双子の容姿は目を引くようだ。中身が精霊だもの。銀髪が風にさらさらとながれ、きらきらとしている。無心にやきそばを頬張る姿を遠巻きに眺めている人が多い。

ちなみに姫さまは猫耳少女が高速切削機のように焼きとうもろこしをむさぼっているせいか、あまり気にされていない。一国の姫さまがこれで(ry


10歳から16歳くらいだろうか、女の子の集団が近づいてきた。

そのうちの一人が双子に話しかけている。


「こんにちは!お嬢さんたち!私はエテルナ。よろしくね!」


「しーすです!」

「れーねです!」


「かわいらしいお名前ね!あなたたちもお城で働いているの?」


城の中にいる子供は勉強するためになにかしら働いているのが普通なようだ。


「「ますたーにおつかえしています」です!」


双子のきらきらした目線の先にはだらしなくローブを着た冴えない男がいた。


「あの方は魔導士さんのようだけど、どんなお仕事をしているの?」


彼女たちには無職に見えたのだろうか・・・。


「ますたーはカイシャイン です。」

「ぷろぐらまーですくりぷたーといってました」


屋台村からすこし離れた建物から鐘の音が聞こえる。

かばんを抱えた子供たちがぞろぞろとそこに向かう。学校のようだ。


「すくりぷたー?マジックスクリプトの術者さんなのかしら・・・あっそろそろ授業が始まるからまた今度ね!」


「「またねー」ですー」


そんなやり取りを聞いていてこちらの世界にもプログラマーっているのかなと思った。

まぁ、あとでプログラマー魂に火がついてしまうわけです。めらめらと。


ベンチにもどって飲み物をマーガレットさんに渡す。お金を渡そうとするので断った。

双子のたべのこしをもしゃもしゃとかきこむ。

そして気になるワードが聞こえてくる。


「異世界の勇者」と「暴れん坊ローブ」

ジュースを噴き出しそうになり、シルフィール姫があわててハンカチで拭いてくれた。


勇者は竜の化身である自らの乗り物の暴走を素手で止めたという話。

ローブのほうは人目につかない場所だったにもかかわらず、尋常ならざる使い手としてうわさに尾ひれが付いてぶんぶんしていた。


真っ赤なあばれ竜を従え、世界に平和をもたらす聖人。

見たことも無い技を繰り出し、悪徳兵士を一瞬で叩きのめす黒ずくめの怪人。


城の中は昨日やってきたという勇者と今日現れた暴れん坊ローブの二大ニュースでもちきりのようだ。

すんません、渦中2トップの中の人です。目が白黒します。


聞き耳を立てているとおもしろい話が飛び込んでくる。

悪徳兵士の一派が仕返しとばかりに暴れん坊ローブを襲撃しようといううわさだ。


これを見逃す手は無い。脳内でシナリオが組みあがった。(謎)


ああ、そういえば国王さま忘れるところだった!

姫さまと双子の口の周りのべとべとをふき取ると、迎賓館に戻る。


シルフィール姫と双子に乱入されながらも寝室そなえつけの簡易シャワーで汗を流し、用意してもらった貴族風の服を着て国王に会うこととなった。


まったく似合ってないがアロハシャツでは(ry


---


国王は待てを命じられた犬のように目を輝かせていた。しっぽが生えていたら大変なことになっていたかもしれない。


非公式な会談ということで、城の控え室のような部屋に通された。


双子も連れていった。

双子は僕の前に現れたときに着ていたスモッグと赤いチェックのスカートだ。

スモッグの下は丸襟の白いブラウスである。

足元はニーソに赤い靴で固めている。

当然かぼぱんも装備している。かぼぱんである。カボチャ型のぱんつである。

よくわからないけれど、こちらの世界に来てからなぜかかぼぱんに反応するようになっている。

これで通園かばんをもたせ黄色い帽子をかぶせればたいへんな破壊兵器になるであろう。


今日は姫さまの精霊も顔を出している。顔というよりも玉である。

双子に会った後、あまり外に出てくることが無いのだが、今は双子のまわりを三色団子が漂う。

ちなみに外に出なくても意思の疎通はできるようだ。

さっきも双子があさっての方向を見ながら何かを話しているので気になって聞いてみたら、姫さまの精霊と話をしているそうだ。

知らずにいれば霊感の強い幼女二人みたいな感じである。


国王そっちのけであった。


「おお、あなたが勇者エイト様!おまちしておりました!申し遅れました。私が当国の王、ライスリッチフィールド25世です!」

もっと仰々しい感じでしゃべるのかと思ったらまるでふつうのおじさんだ。


ようやく名前を呼ばれた気がする。何話目!

「益田衛登と申します。よろしくお願いします。」


「こちらのお二人が勇者様が保護された精霊ですね!なんと愛らしいお姿!」

愛らしいといわれて、にやにやしながら僕の後ろに隠れる双子。

「しーすです」

「れーねです」

「「こくおうさまこんにちは!」です」

今朝、すこしだけ練習させておいたので一応挨拶はできた。付け焼刃万歳!



国王は昨日見かけた姿と寸分たがわず、いかにも王様という感じだ。

年齢は50歳以上と聞いたがその体は鋼のように鍛えぬかれ、まさによろいという雰囲気だ。


ソファーに座る。対面に国王と姫さま、双子は僕の隣に座らせた。三色団子は姫さまの中に戻った。

双子は空気を読んでいるのか、テーブルに置かれたお菓子には手を出さないでいた。

しかししせんはくぎづけだ!

マーガレットさんは部屋の隅に控えている。


「勇者様には大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」


国王さまが立って頭を下げる。姫さまもそれに習う。


何故かその件については割と気持ちが整理されている。

だれかに仕返し?もしたような気がする。おもらしというワードが出てくる。


「いえ、大丈夫です。異世界に来るなんて普通では体験できませんので。今のところは楽しんでおりますから。」


心にも無いセリフが出てくる。

自分がいなくなって家族が心配しているだろう。ここで言っても仕方ない。


シルフィール姫は僕がここに来てからトイレ以外は片時もそばを離れない。

(一度トイレに入ってきたことがありましたが、丁重にお断りを)

姫さまが僕から離れてしまえば精霊の加護を受けられなくなり、僕はエーテルの毒で死んでしまうだろう。

彼女にも彼女の生活がある。僕がいることでそれを犠牲にしているのだ。

いくら勇者にあこがれているとはいえ、年端も行かぬ娘が見ず知らずの男に身柄をずっと縛られるのはどうだろう。


彼女もまた被害者なのだ。


姫さまにすこしでも楽をさせてあげたい。はやく自分の精霊を見つけたい。双子の精霊はどうやらちがうようだから。


国王さまに頭を上げてもらい、話の続きをする。


湿っぽい話題は苦手だ。


「実は妻も勇者殿に会うのを楽しみにしていたのですが、所用で留守にしておりまして。数日のうちには戻ると思いますので、そのときには会っていただけますか?」


断る理由も無いので了承した。


「それはそうとシルフィールよ、勇者殿のお世話にぬかりはないだろうな?父は心配で心配で」


「お父様!」


「姫さまには大変お世話になっております。姫さまが現れなければ私は死んでいたかもしれません。」

お世辞ではない本当のことだ。


「それはよかったです。なにしろ娘はがさつゆえ、なにか粗相があったらと」

シルフィール姫が怒って国王に裏拳をいれる。

咳き込む国王。

がさつでした。


「預言書」に書かれた世界の危機について、内容は相変わらず抽象的なままだと聞かされ、すこしがっかりした。


国王は3日後に国民に向けて勇者のお披露目をするという。なにしろ世界の滅亡を阻止する人物だ。

なるべく早めに存在を示して国民を安心させたいという。

城のテラスから手を振る程度で言いというので了承した。

僕の車は「赤竜車」と呼ばれているらしい。当日は自分と姫を乗せて城の前を「ゆっくり」走ってほしいともお願いされた。国民へ勇者の力を示したいという。


ゆっくりを強調した。まぁあの暴走を聞けば当然。

そして国王は自分が乗りたいだけ(ry


本題に移ろう。


シルフィール姫に渡しておいたスマートフォンを国王に見せる。食い入るように映像を見る国王。例の兵士の暴力沙汰の動画だ。


僕の恥ずかしい口上の手前で動画を止める。必要な部分は見せた。

手が滑って暴れん坊ローブのあたりまで再生されたことはないしょだ。


「勇者殿、大変お恥ずかしい限りです。このようなことがまかり通っているとは今の今まで。」


屋台村で聞いた「暴れん坊ローブ」への襲撃計画についても話す。

これだけ大掛かりに動いて国王の耳に入らない。考えられるのはトップに近い人間が腐っている。


さきほどのシナリオを再考する。


マーガレットさんにお願いをする。

「すいません、夜中に多少大騒ぎしても大丈夫な広めの場所をお借りしたいのですが」


「それでしたら訓練場なら城内の住居から離れているので大丈夫かと。」


「それでは勇者のお披露目の日の夜中に暴れん坊ローブがそこに現れるかもしれないとうわさを流せませんか?」


マーガレットさんは不思議な顔をしているが了承してくれた。屋台村あたりでしゃべればあっという間だろう。


「勇者殿、いったい何をお考えで?」

国王が首をひねる。


「いわゆる世直し(おせっかい)です!」


プロジェクト名「らいすぼーる」の開幕だ。


---


会談は終わって、迎賓館の客室にもどった。

堅苦しい貴族服をパージしていつものアロハにもどる。


国王との会談はもっと緊張するかと思ったけれど、ふつうのおじさんでよかった。

なんというか姫さまの父親だ。やっぱり似ているなと思った。


だいぶ日が傾いてきた。転寝している双子のおなかが「「ぐーー」」とハモった。

シルフィール姫は自分のおなかが鳴ったとおもったのか手で押さえきょろきょろしている。


ドアがノックされ、ほんわかしたメイドさんが入ってきた。


夕食の時間だ。今日は気絶をしていないせいか一日が早い。

庶民の集まる場所での情報収集は不可欠です。

勇者は屋台で何か食べたいだけでしたが、いろいろなうわさを聞くことができました。


異世界に飛ばされた件についての「預言書」との会話の記憶は無いものの、気持ちの整理をつけたことは体が覚えていたようです。


夕飯には意外な人物が!そして双子がお風呂でおおはしゃぎの予定です。

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