リンダール大作戦
勇者は無事にお酒を届けられるのだろうか!(違
シノブと名乗る黒髪女性の姿が完全に見えなくなる。
僕の左側に山脈が現れる。
「エイト様、念の為に尾行をつけました」
「ありがとうソネッタさん。尾行といえば、妖精の国から去った馬車の行方はどうなりました?」
「それが…」
途中立ち寄った村で何台かの馬車に荷物が積み替えられ、蜘蛛の子を散らすように走り去ったという。
「途中で検査を装って馬車を止めさせ確認しましたが、載っていたのは小麦の詰まった箱だったそうです」
荷物を運んでいたのは村で雇われた人間のようで、何も知らない様子だったと言う。
僕はさっき受け取った地図をソネッタさんに渡す。僕が見ても地図の場所にはたどり着けそうも無いからだ。
ランサーさんにも情報提供をしなければ。
シノブは魔族を魔人族と呼んでいたけれど、地域によって呼び方が異なるのだろうか。
「そういえば、国王さまのお酒!」
「エイト様、こちらに」
ソネッタさんの手にはそれらしきお酒があった。
「持っていかれてもたぶん…」
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「お取り込み中すいません。ゴーレム犯の妹を名乗る人物が接触をしてきたのですが」
旦那の小ざかしい企みなど奥様には筒抜けである。
僕が持っていった高そうなお酒は一度は国王さまが手にしたのだが、オパール王妃に没収された。
「お酒はもう少し控えてください。舵取り役が酩酊していたら国という船がどこに行ってしまうか…」
オパール王妃の隣でシルフィールも同じポーズをとって立っている。本当にそっくりだ。胸を除いて。
国王さまが小さく見える。シルフィールと結婚したら僕も(ry
お酒の件は棚上げとなった。ちなみにお酒も棚の上に安置された。
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地図は三箇所に印があるだけで、これといった情報は書かれてはいない。
「罠ですかね?」
「罠でしょう」
ゴーレムの製造拠点らしいと聞いてシルフィール姫の表情が暗くなる。
騙されてゴーレムを操っていたアルマも同様だ。
ランサーさんはハイランダー国王に伝言を送ったようだ。伝書コウモリと言うらしい。
印の一つがついた村、どうも引っかかる感じがする。
リンダール村。
今から赤竜王で飛べばあっという間に着くだろうが、何の準備もなしで飛び込むのも危険だ。
「エイト様、出発は明日の昼にしましょう」
ソネッタさんの提案に一同が頷く。
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目がさえて眠れない。枕元に置いた個人線量計付の腕時計を見ると午前三時を少し回っていた。
「勇者さま、またゴーレムと戦うのですか?」
僕の右腕に巻きついて寝ていたシルフィール姫が目を覚まし、心配そうな顔をしている。
「前のように生身でゴーレムに立ち向かったりはしないから」
金髪コアラをもしゃもしゃとなでる。
足にしがみついたシースとレーネが寝返りを打つ。もえは僕の足の間に挟まっている。
ちなみに左にはテスラがいる。しがみついてはいないが寝ぼけてしっぽが出ている。絶対触らないよ!
まぁ、これでは「もう寝なさい」というほうが無理である。
「うgy」
寝ぼけ妖精が落ちてきて僕のみぞおちに当たり255のダメージ。勇者は眠ってしまった!
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朝、珍しいお客様がやってきた。
いつもはピンと伸びた狐耳がしょんもりとしている。
「おはようございます、ルナール先生」
「おはようございます…」
ふっと顔を上げたルナール先生の眼鏡越しに涙が見えた。
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「昨日城に着くはずだった子供たちが来ないのです」
ルナール先生の村から親類の子供たちが遊びに来る予定だったが、まだ顔を見せないという。
「子供たちが乗る予定だった馬車の御者に聞いたところ、村に誰も居なかったのでそのまま素通りしたと」
村人が離れた場所で農作業をしていて、村が空っぽというのは当たり前ということもあるらしい。
急に来られなくなったのであればいつもは知らせを寄越すというのだが、今回はそれも無いという。
「ちなみに村はどの辺りに?」
先生が場所を記した紙を取り出す。
「「リンダール村!」」
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僕たちはリンダール村に向かうことにした。
残りの二箇所にはハイランダー国王の部下が向かっているという。
ランサーさんは多くを語らなかったが、どうやら魔族の人質が居る場所についてはある程度の絞込みができていたらしい。
赤竜王の準備をしていると、シルフィール姫が来た。いつものドレス姿ではなく、動きやすいハーフパンツにブラウスという格好だ。ちなみにねこみみ帽子も着用している。
「勇者さま!私にもお手伝いをさせてください!」
僕はすこしだけ考える。一瞬置いていこうと思ったが、考えを改める。僕がいつ帰ってくるかずっと待っているのは酷だろう。
「人質の中には怪我人も居るかもしれない。その時は治療を任せる」
「はい!勇者さま!」
狭いコクピット内は満員御礼の札が出ている気がする。
僕のほかにもえとシルフィール姫、ソネッタさん、テスラとランサーさん。
もえはソネッタさんが抱っこして、シルフィール姫はテスラのひざの上にいる。
「「マスターしゅっぱつしんこうなの!」です!」
赤竜王に同化した双子から発進の号令がかかる。
「まって!」
サフランが飛び出してきた。
「私も連れて行ってください!」
言っても聞かないだろうなぁ…。あのハイランダー国王の娘さんだもの。
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サフランはランサーさんのひざの上だ。
これだけ乗っても赤竜王は飛べるのだろうか。
魔導圧縮機が起動し、エキゾーストサウンドが高まる。
「あれ?エンジンが一機増えてる?」
この前まで一本だったコンソール上の圧縮機インジケータが二本になっていた。単位はわからないが両方とも八割辺りにまで針が伸びている。
「「ないしょなの!」です!」
双子の声とともに赤竜王は力強く上昇を開始した。
次回「第一村人を保護したら顔見知りだった件について!」
仮題です。
10/24
typo修正しましま
リーンダル村。→リンダール村。




