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夕食後ティータイム

あらためて預言書の件をおさらいする勇者エイト。すでに名前すら忘れ去られているかもしれません。

そしてサバンナさんにいきなりさしこんだりします。(全年齢対応)

姫さまがべったりする原因もなんとなく判明します。

途中で合流したマーガレットさんとお姫様抱っこのままの姫さまを連れて食堂に戻ると、メイドさんがお茶の準備中でした。


ぞろぞろと客間に移動してくつろぐ。


ソファーに身を沈めるとシルフィール姫が隣にぴったりとくっついている。一国の姫さまがこれでいいんだろうか。

シースとレーネの双子精霊も負けじとくっついている。


「お二人には負けませんわよ!」とシルフィール姫が宣言する。


さきほどの勇者を守る精霊の話が出て、対抗意識を燃やしているのだろうか。


僕は今のところ、この世界では姫さまの持つ精霊の加護なしではエーテルの毒に侵されてしまう。

しかし、おはようからおやすみまで姫さまと一緒というのはさすがにまずいと思う。


それにしてもシルフィール姫からこんなに好かれる理由がわからない。自分の命を取られたかもしれない相手だというのに。




シルビアさんに「預言書」の話を聞こうと思ったら、もっとくわしい者を呼ぶという流れになった。


それまではお茶を飲んで待つことに。

テーブルの上の色とりどりなお菓子の包み紙と格闘する双子。手先の器用さはあまりないようだ。

このお菓子はなんとなく見覚えがある気がするのは気のせいだろうか。

お菓子の包みをとって双子の口に投げ入れる作業が開始された。

隣にもう一人、お子様が便乗して増えたのでそっちにも投入する。

狙いがずれて、姫さまの大きく開いたドレスの胸元から人跡未踏の平地にむけてお菓子が吸い込まれてしまったのは割愛する。

ひっかかりがすくないからたぶん下まで一直線だろう。


あたためたミルクのようなものをごくごくのんでいた双子が股間を押さえておしっこーとうろうろし始めたので、メイドさんに頼んでお花摘みにいかせる。

その間に自分も。


男子トイレの朝顔がライオンのような猛獣の顔の形でびっくりしました。油断すると噛まれそう。


---


しばらくしてからローブ姿の女性がやってきた。


見た目年齢は15歳くらいだろうか、シルビアさんよりいろいろとちっさい。

「お初にお目にかかります。宮廷魔導士長のサバンナと申します。勇者殿の乗り物の件は私にも責任があります。勇者殿の手でどうか罰を(ry」


みんなどれだけ罰を受けたいんだ。

手元にあったお菓子の包みををすばやく解いて、サバンナさんの口に軽く差し込んでふさいだ。目を白黒させるサバンナさん。


「はい!罰を与えました!これはおこさまの刑といいます。」


よくわからない言い訳をしてみる。


サバンナさんはこういったことに耐性がなさそうだ。シルビアさんもそうだったけど魔導士というのはストイックなんだろうか。


そしてサバンナさんの唇の手触りはすごくやわらかかったことを記録しておく。


シルビアさんも追加の罰がほしそうだったけど、じらすのも罰と思いあえてやらない。


勇者の鬼畜レベルは次のステージに進化した!


---


メイドさんにお茶を入れなおしてもらい、サバンナさんの説明を聞くことにする。


シルフィール姫から「預言書」の事は大体は聞いていたけれど、たぶんあわてんぼうな姫さまのことなのでかなり間違っているんだろうなと思い、改めて説明を受けることにした。


さきほどのお菓子攻撃のダメージが続いているようですこし様子のおかしいサバンナさん。


この国のまつりごとを司る「預言書」と呼ばれる本が存在すること。

国の政策の重要な局面でその預言書に解決策が示され、それに従うのが習わしであること。

十数代前の国王が預言書をおろそかにしたところ、その国王は病に倒れあっけなく死んでしまったそうだ。

その怖い預言書に20年ほど前、漠然とした世界の危機が示され、それを救う異世界の勇者の記述が突然現れたこと。

今朝になって現れた「姫が勇者の糧となり世界は救われるであろう」という記述の説明もあった。

この現象は「突発的書き換え」と呼ばれ、書かれた内容は最優先で実行されるそうだ。

勇者の呼び出し方法については預言書の内容が複雑でつい最近わかったらしい。


ただ、勇者の糧以降の指示が「国王と勇者の会談は勇者到着の翌日!絶対守れよ!あと余計な調査はなるべく控えること」(原文ママ)という以外、今のところないとのこと。

世界の危機という項目もそのままのようだ。


しかしなぜ「勇者の糧」という誤解を招くような表現をしたのだろう。深く詮索するとあっけなく死んでしまいそうなので考えるのをやめた。


サバンナさんは預言書の「書き換え」に備えるための見張りがあるとのことで、説明が終わるとあわてて退席した。歩き方がぎくしゃくしてる。


ちなみに書き換えがあると「預言書」を保管している金庫室から鈴の音がするそうなので3交代で見張っているとサバンナさんが言っていた。


罰を与えるとはいったものの、シルビアさんをいつまでも拘束しているわけにはいかないと思い、また明日きてもらうということで一時解放した。

解放されてやや不服そうだったというのは何故なんだろう。



サバンナさんとシルビアさんが部屋を出る際、外をうろうろしている身なりのいいおじさんがちらちらと見えたので、シルフィール姫にそれとなく聞いてみた。


「お父様が勇者さまを心配してのぞきに来てるのですわ。勇者さまが倒れられてから何度も様子を見に来てるのよ。あと、勇者さまの乗り物の調査を命じたのがお父様だったので責任を感じているみたい。」


シルフィール姫が腰に手を当てて「もぅ!」と言う。しかしシルビアさんのようには揺れない。


「預言書により勇者様との会談は明日に決まりましたので、今は直接お会いになるのを避けられているようです。」


マーガレットさんが補足してくれた。


預言書は絶対らしい。


もしかして国王さまも罰を受けたいのか・・・考えるのはやめよう。


もうひとつ、気になることがあった。


ふと見ると客間の本棚にならぶ本。背表紙のタイトルが日本語に見えるのは何かの力で自動的に変換されているだけなんだろうか。

ほとんどが勇者にまつわるタイトル。

そしてその数、ぱっと見た感じでは数百冊くらい刺さってる。

何冊か手にとって見る。


勇者が魔族1万鬼を一息で吹き飛ばす、パチンと指を鳴らすだけで空から大量の溶岩を降らせ魔城を粉砕する、魔族の陰謀により落ちてきた月のかけらを山のように巨大なゴーレムに乗った勇者が受け止めて空にはじき返す。


すいません、こんなに強くないです。僕。というか勇者そのものが超常現象レベルなんですが。


シルフィール姫に聞いてみた。よくぞ聞いてくれましたという雰囲気でなんか目がうっとりしてるよ。シルフィール姫。


預言書に20年前に世界の危機と勇者の存在が示された際、そのことは国民に開示されたそうだ。

世界の危機を救うヒーローの存在を確実にするため勇者文学賞を創設し、国中の作家に競わせて架空の冒険童話や恋愛小説などを大量に書かせ、それを元に演劇なども上演、当然だが勇者せんべいに勇者まんじゅう、勇者なりきりセット、ほかには勇者エプロンに勇者なべなど、どう見ても便乗しすぎな感じの派生製品も大量につくられ、国が潤おうレベルで輸出されたという。


そして郊外につくられた体感型アスレチック施設ブレイブパーク(勇者公園)は今でも人気の観光スポットらしい。公園内にある温泉施設「ブレイブスパ(勇者の湯)」に入ると勇者のパワーがもらえるという触れ込みで国内外からの観光客が絶えないようだ。


やや脱線したので本に話を戻そう。


シルフィール姫は幼少(今でも幼いけれど)のころから創作された勇者童話シリーズを読んで育ち、年頃になってからは勇者と仲間(勇者以外全員女性)の恋愛小説もむさぼるように読んで、演劇を鑑賞し、いつの日か本物の勇者に会えるのを心待ちにしていたと言う。


「特にこの本が気に入っていますの。」


シルフィール姫が顔を真っ赤にして懐から出した本。俗に言う文庫本サイズで姫さまのドレスにはこの本が入るスペースが見当たらないのですが、内ポケットとかあるのだろうか。

人肌であたためられ、いいにおいがする本。

昔、マーガレットさんから読んでいたのを譲ってもらったという本を開くと、魔族に捕らえられた姫が助けに来た異世界の勇者となぜか駆け落ちをして異世界に飛ばされ以下略といった感じの。

ところどころ挿絵も入っていてくだけた感じの文章はすごく読みやすい。挿絵の勇者の顔は描かれず影になっている。ご想像にお任せしますという感じだろうか。


しかし、ほかの本に比べてくたびれ方が半端ない。消えかかった表紙のタイトルはペンで何度もなぞった跡があり、背表紙は紙と糊で何度も補強しなおされている。しかも特定の頁にしおりがはさまっていて、なぜかそこを開くのはためらわれる。


姫さまが勇者に入れ込むのは、ここの本棚に刺さっている本や勇者特需が原因。

そして一番の元凶はおそらくこのラノベっぽい本!




「お姫様だって異世界勇者とふぉーりんLOVE!」




姫さまの懐きっぷりは刷り込みに近いものがある。


夢で見たひどい結末よりもさらに重い現実がのしかかってくる。


知ってしまった以上、姫さまを落胆させるようなことはできない。こんなにも信用されているのに。


魔族よりも手ごわい姫さまの恋愛脳。




そして恋愛脳はこのあとさらに加速する。




---


ドアがノックされ、メイドさんが入ってきた。ドアを警護する目つきのするどいメイドさんとはまた別のメイドさんだ。

ほんわかした感じで見ているだけで癒される。


「失礼いたします。勇者殿、ご入浴の準備が整いました。」


「勇者さま、ごいっしょしますわ!マーガレットも行きましょう!」

姫さま、音速を通り越して光の速さで立ち上がったよ!あとマーガレットさん、顔がこわばってる。


ご一緒の部分は聞こえなかったことにして僕の世界から持ち込んだイリーガルアイテムの1つ、ドシメーター(個人用線量計)つきの腕時計を見るとすでに22時を回っていた。


イリーガルアイテムとか言うとかっこいいじゃないですか。


勇者関連の本を読んだせいか毒されたようだ。


次回はたぶんおふろですが、全年齢対応です。

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