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短編小説

全力疾走ゾンビ

作者: うわの空

 私は今、全速力で走っている。

 そんな私の後ろを、ゾンビが全速力で走っている。


 どういうことなのか知らないけれど、通学途中、ゾンビにばったりと出くわした。いや、ゾンビらしきものに出くわした。…本物のゾンビを見たことがないからゾンビかどうかは分からないけど、腐った皮膚とか、露出した内臓とか、そういうのを見たら『ゾンビだ』ってきっと誰でも思うよね?とにかく、私はゾンビだと思ったわけだよ。


 で、武器も何も持ってない私は叫びながら走った。とりあえず交番に向かって走った。おまわりさんならどうにかしてくれるだろうと思ったからだ。

 

 ところがこのゾンビ、私の後ろを全力疾走で追いかけてきやがった。



 普通ゾンビと言えば、走らないよね?ていうか、走れないよね?歩くよね?いやむしろ、歩くよりも遅いスピードで移動するよね?私はそうだと思ってたわけだよ。


 なのにこのゾンビったら、私の後ろを全速力で走ってきたのよ。ちなみに私の運動神経は、学年で真ん中くらい。要するに、普通。

 ゾンビとの距離は離れないし、縮まらない。要するに私と同じスピードで、このゾンビは走っている。たまに、肉片を飛ばしながら。そして、


「うひょおおおおおおおおお!!!!」


 こんな風に叫びながら。



 普通ゾンビと言ったら、呻いてるよね?「ううう…」とか「あああ…」とか言ってるイメージだよね?なのにこのゾンビは全速力で走りながら「うひょおおおおおお!!」と言っている。

 ゾンビじゃないのかもしれない。もうそこら辺はどうでもいいから、とりあえず私を追いかけるのはやめてほしい。



 やっとの思いで、交番にたどりつく。

「おまわりさあああああん!!!」

 私は全力で走りながら、大声で叫んだ。書類に何かを書きこんでいたおまわりさんはこちらを見て、それから青ざめた。そして、拳銃を取り出した。

 早くあのゾンビを撃ってくれ。私の脚はもう限界だよ。


 全速力で走ってくるゾンビ。おまわりさんは悲鳴を上げながら、拳銃の引き金を引いた。


 

 その弾は、私の肩に、当たった。



「え?」

 誤射だ、と思った矢先にもう一発撃たれた。さらにもう一発。私は自分の体を見降ろして、やっと理解した。


 腐った皮膚。露出した筋肉。

 


 自分も、ゾンビだった。




 そっか。ゾンビって、走れるのか…。


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[一言] いいね。長めのもお願い
[良い点] 良いです。 文字運び、アイデア共に面白い。 [気になる点] 悪い程ではないし、書くか多少迷ったが、作者にセンスを感じるので伝えたいという意味で書き記す。 アイデアやプロセスの面白さに比べ…
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