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宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する  作者: すずの木くろ


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後日談7話:永住に向けて

「あー、なるほど。タワーマンションなら、確かに安心だね」


 もぐもぐと舞茸の天ぷらを食べながら、桜が頷く。

 昨日契約した、日本での新居についての話題が出ているのだ。


「タワマンって、家賃いくらくらいするの?」


「俺たちの借りた部屋は80万ですね」


「「たっか!?」」


 桜とエリシスの声がハモる。

 ちなみに、2人ともここから徒歩圏内の戸建て住みだ。

 彼女たちの夫は今日は来ないとのことで、それぞれ家で子供の面倒を見ているらしい。

 子供を連れてきてしまうと、万が一例の扉の話を聞かれてしまっては困るからとのことだ。

 扉の件については、子供たちが成人した後で、どこまで教えるかを検討する予定らしい。


「さすがは億万長者だねぇ。今度遊びに行ってもいい?」


「私も行きたい!」


「もちろんいいですよ。落ち着いたら、連絡しますね」


 笑顔で返す一良に、2人が「よろしく!」と微笑む。


「あ、そうだ。一良、嫁さんたちの証明写真って撮ったのか?」


 真治の言葉に、一良が、「あっ!」と声を漏らす。


「忘れてた」


「別に急がなくてもいいけど、撮っておいたほうがいいんじゃないか? パスポートとか取りたいだろ?」


「うん。戸籍はもう作ってくれた?」


「ああ。叔父さんから連絡がきて、5日前にできたってさ。これ、全員分の出生設定が書いてあるから」


 そう言って、真治が分厚い封筒を3つ差し出す。


「カズラ、出生設定って何?」


 リーゼが一良に聞く。


「リーゼたちが、どこ産まれのどこ育ちっていうことが書いてある設定資料集だよ」


 一良が「リーゼさん」と書かれている封筒を、彼女に渡す。

 リーゼが中身を取り出すと、数枚の紙に彼女の経歴が書かれていた。

 すべて、架空のものだ。


「誰かに何か聞かれてもボロが出ないように、暗記しておいてくれ」


「う、うん。分かった」


「それじゃ、証明写真を撮りに行こうか」


 そう言って立ち上がる一良に、リーゼたちも席を立つのだった。




 暗くなった住宅街を、ぞろぞろと最寄りのスーパーに向かって歩く。

 桜たちは付いて来ておらず、家で後片付けをしてくれている。


「カズラさん、戸籍って、そんなに簡単に作れるものなんですか?」


 一良と手を繋いで歩きながら、ジルコニアが質問する。


「普通は無理ですけど、親戚が政府関連の超重役らしくて。大昔から、移住してきたお嫁さんたちの戸籍を融通してるらしいんですよ」


「そ、そうですか。すごい話ですね……」


「アルカディアでいうところの、王家のようなところに取り入ってるってことですか?」


 後ろから口を挟むエイラに、一良が頷く。


「そうそう、そんな感じです。誰だかが不治の病で死にかけてたのを、ご先祖様が治してあげて、それの交換条件らしいんですよ。詳しくは知らないですけど」


「ふふ。何だか、私がカズラさんと初めて会った日のことを思い出します」


 後ろを歩いていたバレッタが、空いている一良の隣に来て腕を組む。


「あの時は、本当に神様が来てくれたって思いました」


「ああ、あの時はびっくりしたなぁ。村の人たちが大勢死にかけてましたもんね」


「はい。もしあの時、カズラさんが来てくれなかったらって、考えるだけでも怖いです」


「ねえ、さっきお義父さんがパスポートって言ってたけど、海外旅行に行けるの?」


 リーゼが期待を込めた声色で言う。


「うん、行けるよ。どこでも好きなところに遊びに行ける」


「やった! 私、コモド島に行ってみたい! コモドドラゴンを見てみたいの!」


「いいねぇ。俺も見たいって思ってたんだ」


 そんな話をしながら少し歩き、スーパーにやって来た。

 まだ夜の8時過ぎということもあり、駐車場にはたくさんの車が停まっている。


「あったあった。それじゃ、ジルコニアさんから撮影しますか」


 入り口脇にあった証明写真機のカーテンを一良が開け、ジルコニアをうながす。


「へえ、専用の機械があるんですね」


 ジルコニアが物珍しそうにしながら、イスに座る。

 液晶画面に表示された撮影モードを見て、小首を傾げた。


「何ですかこれ? レギュラー、美肌……男前?」


「映りかたに補正をかけてくれるんですよ。レギュラーでいいと思います」


「これですね」


 ジルコニアが画面をタップし、一良が小銭を入れた。


「『パスポート・その他証明』ってやつです」


「はーい」


「それじゃ、後は画面の指示に従って撮影してください」


「カズラさん、私、トイレに行ってきますね」


 カーテンを閉める一良に、バレッタが言う。


「あ、俺も行きます。リーゼとエイラさんも、続けて撮影しておいて。財布渡しておくから」


「わかったー」


「あの、そこの自動販売機でお汁粉を買ってもいいですか?」


「どうぞどうぞ。皆にも財布を買ってお金を持たせないとですね」


 というわけで、一良とバレッタはトイレを借りにスーパーに入った。




「あ。カズラさん、食器コーナーができてますよ」


 中に入ってすぐ、新設されていた食器コーナーを見つけて、バレッタが歩み寄る。

 このスーパーには何度か来ているのだが、前回来た時はこの場所は寝具コーナーだった。


「ほんとだ。皆の撮影が終わったら、いくつか見繕いますか?」


「はい。村の皆にも、いいのがあったらお土産にしたいです」


「そういえば、食器を持って行ったことってなかったですもんね」


 そうして食器を流し見し、それぞれトイレに向かう。

 一良は手早く小用を済ませ、手を洗ってトイレから出た。

 当然ながら、バレッタはまだ出て来ていない。

 先に外に出るのも気が引けるので、先ほどの食器コーナーで皿を眺める。


「むむ。けっこう種類があるな……何だこれ。金色の招き猫があるぞ」


 少しの間商品を見ていると、バレッタが戻って来た。


「お待たせしました。女子トイレ、便器が新しくなってましたよ。最新型みたいです」


「そうなんですか」


 そう言って少し頬を緩ませる一良に、バレッタが小首を傾げる。


「どうかしましたか?」


「いや、バレッタさんが初めてウォシュレットを使った時のことを思い出して」


 以前、草津旅行に行った折、部屋のトイレでバレッタがウォシュレットを初体験した時のことを思い出す。

 一良が使い方を教えて居間で待っていると、トイレから「ひゃああ!?」とバレッタの悲鳴が響いたのだ。

 どういう反応をするかな、と少し期待していた一良は、その声を聞いて「だよねぇ」と笑った記憶がある。


「だ、誰でもびっくりしますよ。あんな勢いでお尻にお湯が当たるなんて、身構えててもびっくりします」


「あはは。ジルコニアさんなんて、『ほああ!?』って変な声上げてたって言ってましたもんね」


「ショッピングモールのトイレでしたから、他のお客さんが心配して集まって来ちゃって大変でした……」


 そんな話をしながら店を出て、写真撮影機のところへと戻る。

 ジルコニアとリーゼはすでに撮影を終えているようで、手に写真を持っていた。


「おかえり! エイラも、もうすぐ撮り終わるよ」


「うん。上手に撮れたか?」


「ばっちり。ほら!」


 リーゼが写真を一良に差し出す。


「どれど……ぶほっ!」


 写真を見るなり噴き出す一良。

 バレッタも写真を覗き込んで、同じように「ぶっ!?」と噴き出した。


「えっ!? な、何で笑うの!?」


「何で超笑顔で撮ってるんだよ! アイドルのスナップ写真じゃないんだから……だ、ダメだ、ツボに入った」


「り、りっちゃん。証明写真なんですから、少し微笑むくらいでいいんですよ……ふ、ふふ」


「はあ!? それならそうと、先に言ってよ!」


 必死に笑いを堪えているバレッタと爆笑している一良に、リーゼが憤慨する。

 ジルコニアも、頬を引くつかせて自身の写真に目を落としている。


「ジ、ジルコニアさんもですか? ちょっと見せて――」


「嫌です! 見せません!」


 ジルコニアが、さっと写真を背後に隠す。


「いいじゃないですか。減るもんじゃないし」


「嫌だっていったら嫌なんですっ!」


「見せて! 絶対面白い!」


「やーだー!」


「あ、あの、終わりましたけど……」


 写真を奪おうとする一良にジルコニアが抵抗していると、エイラがカーテンを開けて出てきた。


「ほ、ほら! エイラのを見ればいいじゃないですか! エイラ、見せなさい!」


 ジルコニアがエイラから写真をひったくる。


「エイラだって笑顔で……何ですまし顔なの!?」


 ごく自然な表情のエイラの写真に、ジルコニアが驚愕する。

 皆、最初に撮ったジルコニアの写真を参考にして、表情を作っていたはずなのだ。


「み、皆さんが大騒ぎしていたから、撮り直したんです」


「自分だけ助かって! この裏切り者!」


「え、ええ……?」


 そうして、ジルコニアとリーゼは再度撮影し直した。

 結局ジルコニアの最初の写真を一良たちは見ることができなかったのだが、その写真は「写真集でも出すんですか?」と聞かれそうなほどの完璧な笑顔だった。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございました!
待ってました!
続きを、待ってました!!。 そりゃ、ウォッシュレット・トイレには、驚くでしょうね(笑) 証明写真で、笑顔全開って、それはそれでも面白いかも。(見てみたい) 追加3人分の戸籍は、もう出来て居たんですね。…
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