337話:酔っ払い
「ただいまー」
「おかえりなさい、カズラさん」
一良たちが引き戸を開けて屋敷に入ると、バレッタが笑顔で迎えた。
囲炉裏の前にはたくさんの料理が並んでおり、リーゼはバレッタの膝を枕にして、スヤスヤと寝息を立てていた。
「ジルコニア様たちも一緒だったんですね」
「ええ。帰りに偶然会って。リーゼは寝ちゃってるんですね」
「はい。すごく疲れていたみたいで。『もう無理』って言って寝ちゃいました」
バレッタがリーゼの肩を揺する。
「リーゼ様、起きてください」
「んう……」
リーゼが目を覚まし、身を起こす。
バレッタは囲炉裏の火にかけられている鍋から、熱々の汁物をお椀によそう。
エイラも居間に上がり、真新しいおひつからご飯をよそい始めた。
ご飯は炊き込みご飯で、村に常備されている「鶏五目ご飯の素」を混ぜて炊いたものだ。
他にも、川魚の串焼き、木の実と野菜の炒め物、缶詰のみかんだ。
「あ、カズラ。おかえり。ふわあ」
リーゼが目を擦り、あくびをする。
「ただいま。だいぶお疲れみたいだな」
一良とジルコニアも居間へと上がり、それぞれ座る。
「朝からずっと運転しっぱなしだったんだもん。そりゃ疲れるよ」
「酒を飲んだせいもあるんじゃないか? ジルコニアさんと、一杯ひっかけたんだろ?」
「うん。お母様が珍しく『一緒に飲もう』って言ったから。村の人から分けてもらっちゃった。カズラも飲む?」
傍らに置いてある陶器の酒瓶を、リーゼが手に取る。
「飲む飲む。んで、ぱっぱと食べてちゃっちゃと寝よう」
「ふふ、お付き合いしますわ。エイラとバレッタも飲む?」
「はい、いただきます」
「このお酒は私には強すぎるので、お茶にしておきます」
「夕食食べたら、お風呂で背中流してあげるね」
「だからそれはいいって……」
そうして、皆で遅い夕食をとったのだった。
数十分後。
食事を終えた一良は、のんびりと湯舟に浸かっていた。
皆に勧められ、一番風呂をもらっている。
外ではバレッタが火を見てくれており、窓越しに話しているところだ。
「カズラさん、今日はあんまり長湯しないほうがいいですよ。お酒、たくさん飲んでましたし」
「ですね。つい盛り上がっちゃって……もう少ししたら出ようかな」
ジルコニアがやたらと酒を勧めてきたため、一良はついつい飲みすぎてしまっていた。
食事中のジルコニアはかなり酔っぱらっていて、どれだけ自分たちが一良のおかげで救われたか、この国の人たちの未来を拓いたかをひたすら語り、これでもかと一良を褒め称えていた。
そのたびに一良にへばりつこうとするので、エイラとバレッタに押さえつけられていた。
リーゼは運転の疲れのせいか猛烈な眠気に襲われたようで、食事を終えると「ごめん、背中を流すのは明日にして」と言って早々に就寝してしまった。
「やっぱり、グリセア村はいいなぁ。お酒もいつもより美味しく感じましたよ」
一良が格子窓から空を見上げる。
ほかほかと湯気が立ち上る空には、楕円形の月が美しく輝いていた。
「ふふ、よかったです。村に帰ってきたら、お酒作りに挑戦してみようかな」
「おっ、いいですねぇ。バレッタさん器用だし、すごく美味しいお酒を作ってくれそうだ。ビールとかも作れちゃうんじゃないですか?」
「ビールですか。まずは大麦を栽培しないとですね。日本の醸造所、見学してみたいなぁ」
「あー。一度見学に行ったことがありますけど、すごく面白かったですよ。『こんなに大きな設備なのか』って、驚きました。バレッタさんにも見せてあげたいです」
「えっ、見学したことあるんですか!? もっと詳しく教えてください!」
バレッタの弾む声に、一良が当時を思い出しながら話して聞かせる。
そんな話をしているうちに、話題が食べ物へと移った。
「お野菜は何とかなりそうですけど、ニワトリとか豚をこちらに持って来ることはできないでしょうか?」
「どうかなぁ。そういえば、生き物は今まで試したことがなかったですね。今度試してみますか」
「はい。もし持ってこれるなら、栄養面での心配はいらなくなりますから」
バレッタが村での食料生産計画を、あれこれと話す。
ハーブは隔離することで育てることはできたので、他の野菜もどうにかなるだろう。
しかし、それだと動物性たんぱく質が摂取できないので、できれば畜産も行いたい。
「まあ、もし無理だったとしても、時々あっちに行って買い出ししてくればいいですし。できたらいいなぁ、程度で考えておけばいいかと」
「でも、それだとカズラさんは毎回山道を運転することになりますよね? もし事故とかに遭ったらと思うと……」
バレッタの声が暗くなる。
一良以外は日本に行けない現状、日本で一良の身に何かあっても、バレッタにはどうすることもできない。
以前、イステリアで吟遊詩人が語っていた物語のようになってしまったらと考えると、心配で仕方がないのだ。
「なら、できるだけネットで注文して、屋敷に配達してもらうようにしますよ。それなら安心でしょ?」
「はい。そうしてもらえると……それと、村に住むようになると、国の偉い人たちがカズラさんを訪ねてくるようになると思うんです。それも手を打っておかないと」
「確かに……あれこれ頼みに来る人が出てきそうですね」
「はい。たくさんの人がカズラさんのことを知ってしまいましたし、いろいろと便宜を計ってもらおうと寄ってくると思います」
ナルソンやルグロはともかく、軍部の重鎮たちはどうにかして「天国行き」になろうと腐心しているはずだ。
一良に他の神への口添えをしてもらえるよう、接触してくる可能性は高い。
マリーにも同様のことが起こりえるので、後で「リブラシオールが憑依している」という設定は解除されたと周知させる必要もあるだろう。
「なので、村への直接の訪問は禁止にして、ナルソン様に取り次いでいただくようにしたほうがいいかなと思うんですけど、どうでしょう?」
「ああ、それいいですね。ナルソンさんには迷惑かけちゃいますけど」
「ふふ、それくらいは我慢してもらわないと。村で暮らせるようになるのは、いつ頃になるでしょうか?」
「んー……部族との講和が上手くいけば、俺の役目はほとんど終わったようなものですし、そしたらすぐ村に――」
「ヒック! おじゃましまーす!」
「お、おじゃまします……うう、恥ずかしい……」
「うへあ!?」
「え? どうし……なああ!?」
突然、タオル一枚を巻いただけの姿のジルコニアとエイラが風呂場に入って来て、一良が素っ頓狂な声を上げる。
驚いて格子窓から顔を出したバレッタも仰天した。
ジルコニアは顔が真っ赤で完全に酔っぱらっており、よたよたと千鳥足だ。
無理矢理連れて来たのか、エイラの手首を掴んで引っ張っている。
エイラのプロポーションにはタオルが少し小さいようで、見た目が少々けしからんことになっていた。
エイラは酒ではなく羞恥のせいで顔が真っ赤で、一良の顔を直視できないでいた。
バレッタが慌てて風呂場の入口へと走る。
「2人とも何やってるんですか!?」
「リーゼが寝ちゃったから、代わりにお背中を流しに来たんです! ヒック!」
「そういうのはいいですから! 酔っ払いすぎですよ!」
「そういうの? あ、タオルのことですか。取りますね」
慌てふためく一良に、真っ赤な顔のジルコニアがニヤニヤしながらタオルの端をつまむ。
「ちょ、ちょっとジルコニア様! 何をおっしゃってるんですかっ!?」
「取らなくていいって! 何でそうなるんですかっ!」
エイラと一良が慌てふためく。
「まあまあ。私、スタイルには結構自信があるんです。エイラもすごいんですよ? ほら!」
「きゃあああ!?」
「おぶっ!?」
あからさまに悪ノリしたジルコニアが自分とエイラのタオルを取り去った瞬間。
その背後から別のタオルが一良の顔に飛来して叩きつけられた。
全裸になったジルコニアたちが振り返ると、修羅の形相で肩で息をしているバレッタがいた。
「……2人とも、今すぐ出て行きなさい。カズラさんは、そのまま動いちゃダメです」
「「「は、はい」」」
その気迫に押され、ジルコニアたちは風呂場を出て行く。
引き戸が閉まる音を聞いてから、一良は顔に張り付いているタオルを取った。
――2人とも、モデル並みのスタイルなんだなぁ……。
一瞬だけだったが、一良の網膜にはしっかりとジルコニアとエイラの裸が映っていた。
翌朝。
朝の9時近くになってから起床した一良は、日本へと戻って街へとやって来ていた。
現在時刻は11時だ。
本当ならばもっと早く起きるつもりだったのだが、「あまりにもよく寝ていたから」、とバレッタたちは一良を起こせなかったらしい。
ちなみに、最初に起床したエイラは、ジルコニアが一良の布団に潜り込んで一良に引っ付いて爆睡しているのを見つけ、すぐさま彼女を引き剥がして床に転がしておいた。
その後、バレッタが起床すると、どういうわけかジルコニアの顔に黒のマジックで泥棒髭が描かれていた。
エイラは「誰が描いたのか分かりませんが、似合ってるから本人が気付くまでこのままにしておきましょう」と凄みの利いた笑顔で言っていたのが、一良はちょっと怖かった。
結局、一良が出発するまで、ジルコニアは寝息を立てていた。
「やっぱり、山道の運転は疲れるな。昨日無理しないでよかった」
いつも通っている、大きな漢方薬局店へと車を走らせる。
そうして店の前までやって来たのだが、入口には工事業者が出入りしていて、どうやら改装工事中のようだ。
比較的新しい店だと思ったのだが、改装工事とはよほど儲かっているのかもしれない。
「ありゃ。やってないのか。他のお店は……」
カーナビを操作し、地図上に『葵薬局』と表示された場所を目指す。
ものの1分ほどで小さな薬局店を発見し、小さな駐車場に車を停めて店へと入った。
中では、白衣を着た若い女性が、イスに腰掛けて老婆と談笑していた。
小さな店内には、壁際の棚にさまざまな種類の漢方薬が並んでいる。
いかにも、地域密着型、といった感じのお店だ。
「あ、いらっしゃいませ」
「あら、お客さんね。それじゃ、そろそろ帰るわね。お会計お願い」
「ええ。あの、ちょっと待っててくださいね。ええと、救心清丸とレバンゴールドで――」
数千円の会計を済ませ、老婆が礼を言って財布をしまう。
「大変だろうけど、頑張ってね。お店、閉めるなんて言っちゃ嫌よ?」
老婆の言葉に、白衣の女性が曖昧な笑みを浮かべる。
「あはは……でも、大きなお店ができちゃうと、やっぱりつらいですよ」
「ほんとよね。でも、ここみたいな親身になって相談してくれる薬局がないと、私みたいなのには寂しいのよ。どうにか頑張って!」
老婆はそう言うと、一良に目を向けた。
「お兄さん、もしよかったら、たくさん買ってあげてね。お母さんから引き継いだお店、閉めないといけなくなりそうなんだって」
「ちょ、ちょっと! 恥ずかしいこと言わないください!」
「あはは。ごめんなさいね」
ケラケラと笑う老婆に、白衣の女性がため息をつく。
「あの、お店の経営、そんなに大変なんですか?」
一良は不躾だとは思いながらも、ついいつものノリで聞いてしまう。
「えっと……はい」
白衣の女性が、暗い顔で頷く。
「すぐそこに改装工事中の大きな薬局があるじゃないですか? あれができちゃってから、もうダメですね」
やれやれと言った様子で、白衣の女性が苦笑する。
「昔からある商店街もそうですけど、薬局も同じです。大きなお店ができちゃうと、小さなところは簡単に吹き飛んじゃうんです。まあ、仕方のないことなんでしょうけどね」
「もう! そんな弱気でどうするのよ! もっと頑張らないと!」
不満そうに老婆が言うが、白衣の女性は「そうですね」と力なく笑うばかりだ。
「あ、ごめんなさい。お薬が入用ですか? それとも、体の相談でしょうか? もしよければ、お話を聞かせてもらってカルテを作らせていただきますが」
「あ、いえ。俺の体のことじゃなくて、いくらか薬が欲しくて」
「もう決まってるんですね。どのお薬でしょうか?」
「んー……せっかくなので、お勧めのものがあればそれにしようかと。切り傷とか、火傷に効くものが欲しいです。あと、呼吸器が弱い人向けの薬ってあります? 体質改善的な」
「はい、ありますよ。まずは切り傷と火傷用のものですが――」
白衣の女性が棚から小箱を取り出し、説明を始める。
いつも一良が使っている、チューブタイプの赤色の軟膏だ。
帰ると言っていた老婆は買い物を見届けるつもりなのか、ニコニコしながらやり取りを見つめている。
「切り傷は赤だけで大丈夫です。火傷は初期はこれでいいですけど、ジュクジュクしてくるようだったらこっちの黄色に変えてください。ちゃんと塗り続ければ、びっくりするくらい綺麗に痕がなくなりますよ」
「あ、やっぱりこれですか。親に勧められて、普段から使ってますよ。効きますよね」
「そうなんですね! あと、呼吸器ですけど。どういった症状でしょうか?」
「えっと、知人が呼吸器が弱くて、時々ゼコゼコした咳をするんです。あと、体が弱くてすぐに熱が――」
フィレクシアの症状を思い起こしながら説明し、それなら、と3つの薬を提案された。
本当なら店に来てもらって直接話を聞きたいと言ってくれたのだが、それは無理な話だ。
そのほかにも、食中毒やら老後の視力低下に効くものやら、あれこれ聞いていく。
1万円を超える価格の薬もあり、なかなかに高額だ。
彼女の説明はとても分かりやすく、一良の質問に1つ1つ丁寧に答えてくれた。
一良と同い年くらいに見えるのだが、若いながらにとてもしっかりしている。
「なるほど。すみません、いろいろ聞いちゃって」
「いえいえ。これがお仕事ですからね。あ、立ちっぱなしにさせてごめんなさい! 今、お茶を出しますから」
「あ、いえ、ちょっと急いでいるので、すぐに買って帰ります。今お勧めしてもらったもの、全部いただきたいんですけど」
一良が言うと、白衣の女性は少し驚いた顔になった。
「えっ、全部?」
「ええ、全部お願いします」
「その、結構な額になっちゃいますよ?」
「手持ちはあるので、大丈夫です。これらの在庫、お店にある分全部いただけますか?」
「「えっ」」
白衣の女性と、やり取りを見ていた老婆の声が重なる。
「それと、これらの薬をもっと大量に買いたいんです。お金は今日払っていきますから、後日取りに来るまで取り置きしてもらえますか?」
「あ、あの、在庫全部って、あるにはありますけど、数十万円になっちゃうかと……それに、もっと大量にって」
白衣の女性が怪訝な顔で言う。
さすがに冗談だろう、思っているのだ。
「大丈夫です。今からお金を下ろしに行ってくるので、待っててもらえます?」
「ちょっと、よかったじゃない! お兄さん、やるわね! どこのお金持ちなの!?」
老婆が一良に歩み寄り、バンバンと肩を叩く。
すると、白衣の女性が真剣な目で一良を見た。
「あの、さっきの話を聞いて助けてくれようとしているのかもしれませんけど、無茶なことしちゃダメですよ。お金は大切なものなのだから、無駄遣いしないで自分のために使わないと」
「いえ、本当に全部使うんです。このお店にあるものだけじゃ足りないくらいに」
一良が真面目な顔で、白衣の女性に言う。
「詳しくは言えないんですけど、怪我や病気で苦しんでる人が大勢いて。その人たちに、使ってもらうんです」
「ええと……海外支援とか、ですか? 法律で持ち出せる量には制限があるのは、ご存知ですか?」
「はい、分かってます。大丈夫ですから」
「……そうですか。分かりました」
「あっ、分かった! お兄さん、この娘に気があるんでしょ?」
「ちょ、ちょっと! 何を失礼なこと言ってるんですか!」
老婆の言葉に、白衣の女性が慌てる。
「だって、そうなんでしょ? この娘、昔っからずーっと勉強ばっかりで、男っ気がまったくなかったのよ。でもね、真面目ですごくいい娘なの。今度、お茶でもしてみたらどうかしら?」
「あああ! もう、本当にやめてくださいよ! 怒りますよ!?」
白衣の女性が顔を真っ赤にして怒る。
「え、ええと、それじゃあ俺はお金下ろしてきちゃうんで。会計はその時にまとめて払いますね」
そうして、一良は店を出ると銀行へと向かうのだった。
数十分後。
銀行から戻った一良は、支払いを済ませて薬を車に運んでいた。
白衣の女性と老婆も手伝ってくれている状況だ。
「あの……こんなにたくさん、本当にありがとうございます。何てお礼を言ったらいいか」
白衣の女性が手伝いながら、恐縮した様子で一良を見る。
「いえいえ。いつもは、あの改装工事中のお店で買ってたんですけど、やってなくて困っていたところだったんで。ただの成り行きですよ」
「そ、そうでしたか。でも、この何倍も追加で注文していただいて……しかも、全額前払いですし。もしかして、志野さんってNPOとかのかただったりするんですか?」
「いや、個人でやってます。そういった団体からの連絡とかはないんで、気にしないでください」
「個人で医療支援を、こんなに大規模にやってるなんて……本当、すごいです」
「葵ちゃん、よかったわねえ。お店、しばらくは大丈夫なんじゃない?」
老婆が白衣の女性――葵――に嬉しそうに言う。
領収書を書いている時に聞いたのだが、店名は亡き母が彼女の名前を取って付けたそうだ。
橘葵、というのが彼女の名だ。
「はい。もうダメかなって思ってましたけど、もう少し頑張ってみます」
「その意気よ! お兄さん、これからも贔屓にしてあげてね? もう、あっちのお店で買っちゃダメよ?」
「もちろんです。またちょくちょく来ますから、その時はよろしくお願いしますね」
そうして薬をすべて積み、一良は車に乗り込むと薬局を後にした。
深々と頭を下げて見送る葵の隣で、老婆が小首を傾げる。
「あら。本当に葵ちゃんを誘わずに行っちゃったわね。通りすがりの福の神だったのかしら」
「だから、そういう失礼なことは言わないでくださいよ。もう……」
葵はそう言って、一良の車が走り去って行った道路に目を向ける。
車はすでに交差点を曲がってしまったようで、姿は見えなくなっていた。
――志野さんのおかげでしばらく余裕ができたし、在宅医療での参入をもう一度考えてみよう。絶対に生き残らないと。
「次に彼が来たら、食事でも誘ってみなさいよ。きっとすごいお金持ちよ! 玉の輿狙えるって! ……ねえ、聞いてる?」
軽口を叩く老婆の言葉を聞き流しながら、葵は自分の店を守り抜く決意を固めたのだった。