表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

危険な二人

「よしっ! これで契約は完了したぞっ」


「結構あっさりしてるんだな」


「まぁの。というかお主、従者じゃから知っておるじゃろ。ではセンナよ──ちゃんと契約できておるか試してみるか?」


シュトレンツィムは気にする事なく流したようだったが、ウィルモルツは契約の仕方を知らなかったので、内心焦った。

視線は向けられていなかったが、さも知っているをつらぬく。


センナは頷いて言葉にする。


「憑依っ!」


ウィルモルツとシュトレンツィムが、センナの中に吸い込まれる。


「では、そこに鏡があるから確認してみるといい」


頭の中から言われ、センナは「なぜ鏡?」と思ったが、映った自分を見た。

鏡に映った自分の髪が、左半分はやや黒っぽく、右半分が少しベージュが混じったように薄くなっていた。


「──なっ、なにこれ?!」


「なんか髪の色が、俺たちを混ぜたような色になってるな」


ウィルモルツも驚いた感じで頭から言う。


「何を驚いておるのじゃ、お主ら? まさか、憑依した自分たちの姿を見たことなかったのか? 色々と変な奴らじゃな。まあ説明すると、従者がこうして憑依すると、このように変化が起きるのじゃ。特に髪や目は、理由はわからぬが反映されやすいようじゃの」


言われたように髪色が変化していた。

これまで自分たちが気づいていなかっただけで、憑依する度に変わっていたようだ。

他の箇所も調べてみたが、変化はなかった。


「ではセンナよ、解除してもらってよいか?」


センナが憑依を解除し、ウィルモルツとシュトレンツィムが背後から出てくる。


センナとウィルモルツは顔を見合わせ、センナが自分の髪を触り、お互い同じ感情を抱いたことを共有し合う。


「センナよ、従者との契約をやめる場合は、こう言うのじゃ。『主として従者シュトレンツィムとの契約を破棄する』──試してみるか?」


言われたセンナは断った。

その方法をちゃんと教えてくれたし、直感でシュトレンツィムが悪い人間とは思わなかったからだ。


「さて、では次じゃが……、外におる影が二つになっておるが、どうする?」


二人が窓から外を覗くと、影が二つに増えていた。


「本当だ、増えてるな。といってもアレ、噴水の前にいる奴の監視魔術なんだろ。問題がないか、ただチェックしてるんじゃないのか?」


「たしかにあやつは、あの場所で宿の管理をしながら町を監視しておるようじゃが、あの影があやつの魔術と決まったわけではないからのう。管理、監視をしとるという情報から、儂が勝手にした推測に過ぎぬ」


「──あっ?! じゃあ、まったく別の奴が俺たちを監視してる可能性もあるってことか?!」


「そういうことじゃな。あの影が他の家を覗いとるのも見たことはあるが、だからといって、それがあやつが使った魔術とは限らんからの」


シュトレンツィムは優雅に何かを飲む。

気品ある香りが漂い、センナが嗅ぐ。


「センナ、どうする?」


目を閉じ匂いを堪能していたセンナが、驚くように目を開ける。


「え? えーっと、しゅ…すとれんてぃむは……──」


センナは、シュトレンツィムの呼び方を言いにくそうにしていた。

ウィルモルツは「だろうな」と思いながらセンナを見ていた。


「センナ──思っていることはちゃんと伝えておけ」


言われたセンナは、名前が長いと思っていることを素直に伝えた。


「『シエラ・シュトレンツィム』じゃ」


「じゃあ私、『シエラ』って呼んでいいかな?」


「別に好きに呼んでもらって構わぬぞ」


そうは言ってもシュトレンツィムの中では、きっと「オバサン」よりマシだろう。


「じゃあ俺は、そのままシュトレンツィムと呼ばせてもらおう。ちなみに俺はウィルモルツだ」


こうして三人の一通りの自己紹介が終わった。


「シエラはここで、何かする予定だったの?」


「いや、たまたまここにおっただけじゃが、移動するというのなら儂は別に構わぬぞ」


「この家はいいのか?」


「この家は宿として借りておるだけじゃ。別に儂の家というわけではないから構わぬ」


シュトレンツィムは一緒に旅をすることになり、荷物をまとめ支度を整えた。



三人が家から出ると、移動に合わせて、二つの影がこちらをずっと見てきている。


「ねえウィル……従者って契約を解除できるんだって……」


センナは影より、シュトレンツィムの言葉を気にしていたようだ。

雰囲気的に、ウィルモルツの解除を気にかけているのだろう。


「センナがそうしたいと思ったら、そうしろ。解除するか選べるのは、お前のほうだからな。まあ、俺にはその気はない。だがたぶん、俺の場合は解除できないんじゃないか? ほら、特別だろ」


センナはウィルモルツの言葉に、安心したように笑顔になった。


「ねえ……あれって、斬ったりしたら消えたりするのかな?」


「そうじゃな。〝見る〟という以外の役割を持ってなさそうじゃし、斬ればそうなるかもしれん」


ウィルモルツはシュトレンツィムの言葉に「こいつ結構、憶測でモノを言うな」と感じていた。「おそらく」だとかが、やたら多い。


それを聞いたセンナは、「つまり攻撃してこない」と思い剣を抜くと、すぐに影との距離を詰め、横薙ぎで二つの影を斬ってみた。


影はロウソクの火が消えるように、ゆらりと消失する。

それを見ていたウィルモルツは、この二人を相手する未来の大変さを痛感し、頭を押さえた。


二人のところへセンナが戻ると、「じゃあ、行こ!」と言い、町の噴水がある中央のほうへ向かって走り出した。

急な行動に二人も慌ててセンナを追いかけ始めるが、シュトレンツィムが明らかに遅い……。

ウィルモルツは、たまらずシュトレンツィムを持ち上げ、速度を上げて追いかけ追いついた。


「待てっセンナ! どこへ行くつもりだ!?」


「だって、今消えてるから、新しいのが出てくるかもしれないから、とりあえず走った!」


「はー、わかった。まあ、とりあえず一旦いったんとまってくれ!」


センナたちが走るのをやめると、噴水がある広場まで走ってきていた。

噴水の前に、あの少年が居る。

走っていたのが目立ったのか、こちらを見ている。


お互い目が合っていたが、少年はこちらを見ているだけで、その場を動こうとする気配は感じられなかった。

ウィルモルツの腕の上に乗っていたシュトレンツィムが尋ねる。


「お主らはどこから来たのじゃ?」


二人は合わせたように、入ってきた方角に顔を向ける。


「フーレティアか。ならば、あちらに行けば『アムストランダ』の方へとなるが、どうするのじゃ?」


二人の旅は「とりあえず一度、世界を回ってみよう」である。

なので、もう一つの出入り口を提案した。


そうと決まると、センナとシュトレンツィムを抱えたウィルモルツは、また走り出した。

石橋を渡り、出入り口へと向かう。


そのかん、追手や怪しい影がいないか背後を確認したがおらず、そのまま駆け抜けてピエルトの町を去った。

ピエルトを出てからも、警戒をおこたらずにしばらく走り続ける。


「よしセンナ……一度、止まろう」


全力でそれなりに走ってきて、息を荒げながらウィルモルツが言い止まった。

ウィルモルツは持っていたシュトレンツィムを地面に置く。


シュトレンツィムは何食わぬ顔で、センナとウィルモルツは息を整えながら、少しでも距離が稼げるよう砂利道を歩く。

こちら側もフーレティア近辺と同じで、右手には岩壁のような山脈がそびえ、左手には森とも林ともつかない風景が広がっていた。


三人が歩き呼吸が落ち着いてくると、進む先に、それなりに大きな生き物の影が見えた。

その生き物は、人間と比較すると一回りほど大きく、いかにも力が強そうな見た目をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ