幸せでいてよ
タイトルの由来になった最終話です!よろしくお願いします!
未明の言葉が、私がしたことの残酷さを嫌と言うほど描写していた。高校生の時の仄暗い後悔が波のように押し寄せる。それなのに高校生の私は、いや、今までの私はずっと、自分の罪は棚に上げて、なんで私がこんな思いをしなきゃいけないのって思っていた。
未明たちの台詞だったのにね。
ごめんね、私、未明のお母さんのこと、憎いと思ったことがあるの。お父さんにだらしのない顔で抱き着いていたから。私たち家族を壊したって思ったから。
ごめんね、私、父親が、あいつが未明に刺された時、ざまあみろ、って思った。駅のホームで偶然あいつを目にした時、心の底に澱のようにたまっていた殺意を思い出した。私、悲鳴上げなかったでしょ?怖くなかったんだ、あいつが死ぬの。
ごめんね、未明。私、ありがとうって思った。あいつが死ねば、あいつが全部悪いから、私はもう関係ないってどこかで思っていたんだと思う。
あのさ、未明。“未明”って夜がまだ明けきらない時間帯って意味なんだよ。
―これからが、朝なんだよ。
ごめんね、私が全部持っていくから。
逃げてよ。
ただ優しく日の光が差すリビングで、たまにベランダで、桜の花が咲くのを見て笑ってよ。
誰か大好きな人とトランプで大富豪をして、勝ったら自慢げな顔でピースしてみせてよ。
今度食べるホットケーキは、ちゃんとしたのがいいね。綺麗に焼けたら大口で頬張って、もう一枚ちょうだいなんておねだりしたりしてよ。
ほんとは散歩が好きなんでしょ?川沿いも、畑に囲まれたあぜ道も、ピクニック向きの巨木の下も、歩いてよ。家の中でも未明は綺麗だったけど、きっと屋根のないところでお日様の光を浴びたら、もっと綺麗だよ。たぶん、その金髪が光の粒を集めた糸みたいに見えるから。
―あのさ、幸せでいてよ。
「こちらに」
やっととりあえずの処遇が決まったらしく、警察官の後を追う形で足を進める。乗せられたパトカーから見えた桜の木は、確かに膨らんできた蕾を枝先に付けている。
昨日スーパーで買ったホットケーキミックスを思い出す。そのホットケーキミックスで作ってあげたホットケーキを頬張る未明を思い浮かべた。
―ああ、あれだけ焼いてから出てくれば、よかったなあ。
強い風が吹いて、パトカーの窓をカタカタと揺らす。もう一度見た窓から見える桜の木はもう遠く。
渡る橋の下を流れる川を泳ぐ水鳥が、寒そうに羽を震わせるのが見えた。
最後までお読みいただきありがとうございました!
まだまだ拙いですが、今後も精進して参ります!
またどこかでお会いできると嬉しいです!




