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この愛らしい妖精を食べれば強くなれますか?(キリアム②第二原稿)  作者: 酒とゾンビ/蒸留ロメロ


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第1話 入学式の不法侵入者

「平民が入れる訳ねえだろう!」


 僕は怒鳴り付けられ、警備員に蹴飛ばされた。


 自分のような者は、この学び舎の門すら潜れないらしい。

 頭にきた僕は、歯茎を見せ睨みをきかせた。

 だが警備員は鼻で笑うだけだ。

 片手間にあしらうと持ち場に戻った。

 平民根性が染みついているのか、僕は怒るよりも先に諦めていた。


 ウォールハーデン騎士学校は貴族御用達の名門校だ。

 一介の平民には学内へ踏み込む余地すらない。

 騎士は僕にとって幼少の頃からの夢であり「いつか必ず」とそう思ってきたが、どうも無理だと薄々は気づいていた。


 旧市街の(かわ)いた区域に(たたず)む薬屋。

 それが僕の家だ。

 玄関を開けるなりミーナが顔を出す。

 ミーナは長い茶髪が綺麗な一つ下の妹だ。


 どうも口元の血が拭いきれてなかったらしく、僕の顔を見るなりミーナは心配そうな顔をして悲しんだ。


「なんでもない」


 何か言われる前に僕はそう言った。


「また行っていたのですか」

「…………話だけでも聞いてもらおうと、そう思っただけだ」


 僕がそう言うと、ミーナは同情の視線を向けた。


「でも魔力がないんじゃそもそも無理か」


 騎士には魔力が必要だ。

 だけど僕の体には、生まれつき魔力という概念がない。

 それさえあれば、あるいは平民でも入れたかもしれない。

 中には貴族のコネを使って入る奴もいると聞くし。


「レアーナは何と?」

「まだ何も言ってない」


 レアーナ・ゴールドバーグ。

 それは僕らの幼馴染だ。

 金色の髪をなびかせて歩くその姿は、僕らが嫌う貴族の風靡だが、レアーナは特別だ。


「明日からレアーナは騎士生だ。僕はただの……平民校の生徒」

「ですがもう、どうしようも――」

「ないな。分かってるさ」


 だけど……。


 それ以上は言わなかった。

 ミーナの横を通り過ぎ、その日はもう自室へ籠ることにした。


 明日は入学式だ。朝なら門が開いてる。

 上手くいけば校長に会えるかもしれない。

 いや無謀か。

 でも諦めきれない。


 〇


 翌朝、僕は騎士学校の門の前に来ていた。

 長者の列が門の中へと続いている。


 薬屋を営む我が家では、年に一度感謝祭を開き回復薬を安く売ったりする。

 その際、この少しばかり上等なローブを身に着けて接客する。

 これで列に混ざれば誰も僕が平民だとは気づかないだろう。

 同じ人間なんだ。

 上手くいくはずだ。


 上手く校内へ侵入した後、ひとまず参列者の群れに紛れ込んだ。

 校門は常時解放されており、警備員などは参列者の列を管理しなければならず、今日ばかりは昨日の警備員も見当たらない。

 この期に及んで、何か襲撃を企む者などいないだろう。

 テロなどありえない。

 入学式は一大イベントであり、敷地内には上級貴族や凄腕の騎士生、今まさに現役で騎士として公職に勤めている者たちも集うらしい。

 そんな中、無断侵入を図る者などいるわけがないだろう。

 いや、一人ここにいたか――。

 僕だ。


 さらに新入生に紛れ込み、屋外の式場へと辿り着いた。

 平静を装えば、僕だって真っ当な一般市民だ。


 そこで、遠くにレアーナの姿を見つけた。

 壇上の上だ。

 一体どういうことなのか。


「新入生代表、レアーナ・ゴールドバーグ」

「はい!」


 どこからか司会者の声が聞こた。

 え、新入生代表?

 どういうことだ。

 僕は何も聞いていない。


 レアーナは高らかに返事をすると、(ふところ)から紙を取り出し謝辞を述べ始めた。

 上品な嬉々とした態度で、注目する皆へ視線を向ける。

 練習したのだろうかか。いつからだ。


「――お前、ここで何をしている!」


 背後から突然、怒鳴り声が聞こえた。

 一瞬で式場の雰囲気が一片し、騒然とする。

 参列者が一斉に後ろへ振り返った。

 焦りを隠し、恐る恐る振り返ると、それは昨日の警備員だった。

 門にいなかったから今日は非番かと思っていたが、どうやら衛兵に回されていたらしい。

 甲冑を身に着けている。


 さらに騒ぎを聞きつけてか、追加で2人、衛兵の走って来る姿が見えた。


「え、何って参列ですよ、見たら分かるでしょ。新入生ですよ、新入生」

「嘘をつけ。お前、昨日の小僧だろ」


 すっかり、バレてしまっていた。


 ウォールハーデン騎士学校は未来の銀騎士を育成する機関だ。

 銀騎士とはこいつが手にしている銀剣と、リトルバースという特殊な技を扱う国家騎士のことである。


「ぼ、僕は校長先生に会いたいだけです」

「ふざけたことを抜かすな、学内への不法侵入は大罪だぞ。足を切り落として通えなくしてやる」


 (さげす)む目つきと怒号。

 銀剣が容赦なく振り下ろされた。


 僕は剣の動きに集中し素早く避けて見せた。

 このくらいなら見切れる。

 森での散策で鍛えた反射神経と身体能力のおかげだ。

 クリーチャーに比べれば、こんなものどうってことないはずだ。

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