おっさん、青春 正月編
正月の朝。
目が覚めた瞬間、俺は思った。
(……生きてるな)
これは、若い頃は考えもしなかった確認事項だ。
ベッドから起き上がる時に、腰が痛っ。
「……青春って、腰に来るんだな」
身体若くても、役所勤務はほとんどデスクワークだからか……運動不足は否めない。
たまに騙されて、山なんかに行くけど…
と思いつつ居間へ行くと
白丸が、既にこたつのど真ん中を占拠している。
俺をジロっとみて、一言、
『起きたかヨシダ、正月は、序列確定の日だ』
「…意味不明…」
白丸はそれを言ったきり、動かない。
ほとんど動かない。
――猫は正月、無敵?いつも眠そうである。
雑煮を作った。
餅は二つ。
お餅を3個に出して、
いやいや満腹になりあそうだと思い直して、1個戻した。
「……攻めすぎる年でもない」
白丸が眠そうにこちらを見ている。
『………』
お屠蘇を注ぐ。
小さな盃に、ちょっとだけ。
「くぅっ!!少しピリッとするな。無病息災・長いきでピリッ」
白丸
『………』
窓の外で、
あおばが電線に止まっている。
羽を膨らませ、寒いけど来たって顔だ。
「来たのはいいけど、挨拶くらいしろ」
あおばは鳴かない。
その代わり、
電線を一歩だけ移動した。
(……一応礼か)
テレビでは、駅伝。
若い走者が、歯を食いしばって走っている。
「若いっていいなぁ……」
白丸
『………』
昼前。
山の方角を見る。
熊のやまは、冬眠中。
「やま、起きてたら雑煮食わせろって来るよな」
白丸
『………』
あおばが、短く鳴いた。
――ククッ。
「あおば、笑った?」
風が少しだけ吹いた。
冷たいけど、悪くない。
午後。
何も起きない。
事件も、災害も、神の怒りもない。
テレビは、様々なところの正月風景を映している。
「……正月っていいな……」
白丸
『………』
夕方。
再びお屠蘇、
いや日本酒にした。呑むのが楽しみ。
「十四代よりも旨い柏倉門傳、山形の友人からの贈り物~」
「青春ってさ……」
「失敗しても勢いで誤魔化せたよな」
誰にいうでもなく言う。
白丸が顔をあげて、
『誤魔化せなくなったら、大人だ』
「……それ慰め?」
『事実だ』
俺は盃を置いた。
窓の外で、あおばが一歩だけ電線を移動する。
山は静かだ。
やまは、まだ眠っている。
(酒が旨い……悪くない正月だ)




