おっさん、青春 第3章 第6話 〜カラス、カラスも来やがった〜
白猫・白丸に
半ば強制的に“使い魔”にされた翌日。
俺は市役所の玄関前で、
いつもの桜SNSの会議を聞いていた。
『議題:白丸に撫でられたい木の順番』
『議題:熊との協働について』
『議題:吉田への苦情(歩き方・声量・存在感)』
「俺の扱い、どんどん雑になってないか?」
佐伯(スマホ越し)
「吉田さん、本日の“空中生物遭遇率”は94%です」
「空中生物ってなんなんだ!?」
「あっ!カラス? 白いのが言ってた。」
佐伯
「自然界はあなたに頼っていますから」
「なるほど、であれば俺の給料上げてくれ!佐伯!!」
⸻
その時だった。(「その時」の相手の登場多いわ 笑)
ヒュッ――
空気が、急に“切れた”。
上空から黒い線がスパッと落ちてきて、
俺の目の前を横切り、正面の木ににビシッと着地した。
「ひぃっ!?!?」
羽の色は黒……
だがただの黒じゃない。
濡れたように青く光る“アオガラス”。
ツヤツヤで、凛として、
どこか軍人みたいな雰囲気がある。
白丸がふわっと現れた。
『来たか。空の監視者・青羽。』
カラス
『我が名は 、あおば。
自然界・三界監視群の“空担当”だ。』
俺
「自然界、組織になってるの!?」
白丸が、傍らで話す。(知らないうちに隣にいた。)
『あおばは“天”。熊は”地”。人は”ヨシダ”。
自然を守る三柱……彼らは、みんな家来だ』
あおば
『……勝手に家来にされているし…
格好良いのは、上杉謙信だろ、『天地人』知らんのか?』
白丸
『気にするな。お前も家来だ』
あおば
『家来扱いをされる覚えはない!』
白丸
『では部下でよい』
あおば
『どっちも嫌だ!』
ややこしいタイプが2匹……
相手は勘弁してくれって思っていると、
あおばは鋭い目で俺を見据えた。
『人間・吉田。
貴様が“自然界の交渉人”か?』
「そんな肩書きやめてくれ!!
勝手に交渉人にするな!!」
あおばは羽をばさっと広げる。
『では試す。』
「試すって何を!?」
次の瞬間。
ヒュバッ!
あおばが俺の頭の寸前を狙って風圧を飛ばした。
「うおおおおおお! 危ねぇ!!!」
白丸
『やめろ、あおば!吉田が倒れる』
あおば
『測っているだけだ。
“記憶”が、まだ吉田の中に残っているかどうかを』
「……え?」
白丸
『あおばは知っている。サチコの残した“記憶”を。
天を経由した信号の分析は、こいつの役目だ』
静かにあおばは言った。
『吉田。貴様は……まだ彼女の記憶に触れている。』
ひゅっと心を締め付けられた。
あおば
『自然界を揺らす“異常な周波”が
ここ数日、貴様の周辺から発生している。
それは――』
白丸
『自然のナノの中に散らばったサチコの微弱信号だ』
俺
「……幸子が……まだ……?」
あおばは、俺の肩にそっと降り立った。
カラスなのに、驚くほど軽い。
『大丈夫だ、彼女は、俺たちの近くにいる』
白丸が続ける。
『自然界の異変の解決の糸口は、
すべて彼女の残した“研究”の延長線にある。
そして吉田、お前こそがその要だ」
俺
「俺が……?」
あおば
『だから貴様を監視する。
空、天からみて、一秒たりとも目を離さん』
白丸
『心強いぞ、あおば!』
俺
「前もあったような…監視対象…」
あおばは薄く笑った(ように見えた)。
『安心しろ。人間からは不吉と思われがちなカラスだが……
我は“青”を帯びる。
吉兆の象徴と古来から言われている』
「ほんとに?」
白丸
『嘘だ。そんな話聞いたこともない』
あおば
『黙れ白いの!威厳を保たせろ!』
二匹がまたケンカを始める。
(なんだこの2匹、まぁ猫とカラスって!どうよ!
考えても絶対おかしい……)
あおばが空を見上げた。
『吉田。
次は“風”が呼んでいる。
こころしておけ。』
白丸
『さぁ行くぞ。あおば、ヨシダ!
桃太郎の旅は、ここからだ!』
「だから猫もカラスも桃太郎にいないだろ!!」
『今の時代の桃太郎に常識はいらん』
『天地人じゃないけど、まぁいいか!
次は“風の神社”だ。付いてこい、人間』
「誰が主人公で、誰が家来なんだ~ !!!」
こうして――
猫、カラスがそろった。
熊はどこか合流するのだろう。
お供とか戦士というかは別にして、なんだか桃太郎に似てきたわ。
いや西遊記ってのもあるな。
まあ、話しが、ぜんぜん違うし、主役は誰か分からんし…
なるようにしかならんか…
青く光るカラスを見たのは、
進む道が間違っていないという暗示吉兆なのか、
なんだか懐かしい光のように見えてきたのは気のせいかもしれない。




