表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

おっさん、青春はじめます。 第11話 〜スーパー公務員〜

体育館での集会が終わり、

俺は幸子と二人、外のベンチに腰を下ろした。

風が肌を撫で、夕暮れの光が地面に長い影を作る。


「ここからが本題よ」 

幸子は、少し声を潜めて俺に話しかける。


「さっき話した国家計画。あれ、単なる計画じゃないの。

実際に働いている人たちがいるの」


「働いている人…?」

俺は眉をひそめる。


廃校体育館の集会が、どう世の中につながるのかまだ想像できなかった。


「聞いたことあるでしょ。『スーパー公務員』って言葉」

幸子は俺を見つめ、真剣な目で言った。


「彼ら、単なる優秀な職員じゃないの。市民のために汗を流し、地域活性化や国のプロジェクトを実際に動かしている人たち。

そうね、地区の活性化のために、コシヒカリをローマ教皇に献上した公務員の話し有名よね、そのことがブランドや売り上げを伸ばしたって。」


俺は、

「知ってる、知ってる。」と答えて


(……あれ、有名な話しじゃん、街おこしとか、ブランド化とか。

その後世間は、能力の高い、できる職員をスーパー公務員って言い出して…)



幸子は小さく頷いた。


「そう。あなたも含めて、そういう人たちはほとんどが逆コナン計画の対象になってる」

「……え?」

俺は、返事にならない返事をした。


「ほら、考えてみて。

スーパー公務員は単に頭がいいだけじゃなくて、

現場力とコミュニケーション能力を兼ね備えている。

若返った体を手に入れれば、過疎地に飛ばしても、その地域を活性化できるわ」


幸子の声には、淡々とした説明の中に熱が含まれている。


「つまり……あのニュースで報じられていた、過疎地の生産性が上がっている理由って……」


電車の中の、広告吊りの週刊誌のタイトルに

      「新たな事業で活性化!高齢化率50%の村!」


「そう。表向きは地方創生、

実際は若返った“スーパー公務員”たちが影で支えているの」


幸子は鞄から資料を取り出し、俺に見せる。

写真には、見た目が若々しい男女の集合写真。


「この人たちも、逆コナン計画の対象。若返った姿で、地域に貢献しているの」


俺は資料を見ながら、息を飲む。

(……俺と同じ。見た目若い、でも中身は経験豊富な大人。 


ページをめくると経歴がある。

元内閣府、元東京都、元山形市、元生駒市、元豊田市…凄い奴らじゃん!

ましてや、

国家計画の道具にされているわけじゃない、貢献のために体が若返る…)


「面白いでしょ? でも、本人たちはあまり目立ちたくないけど、

どうしても世間から見ると、スーパーなのよ」


幸子は微笑む。

「目の前の仕事、地域の人たちの笑顔、それだけで十分って言う人も多いけど」


俺は心の中でつぶやく。

(なるほど…俺が青春ごっこと思っていた港湾バイトやジム通いも、この計画の小さな縮図かもしれない…)


「じゃあ、俺は…?」


「あなたも同志よ。見た目は若者、中身は経験豊富な大人。ここで仲間と会うことも、国家計画の一端に触れることになる」


幸子の声には、挑戦的な響きがあった。


「全員公務員じゃないでしょ?」

俺は資料を見つめながら訊いた。


幸子は笑う。

「もちろん。行政経験がなくても、地域に貢献したことがなくても、計画に選ばれる可能性はあるの。だって国は、未来の可能性を試しているんだから」


俺の頭の中で、これまでの自分の経験と目の前の幸子の説明が重なる。


(……俺も計画に選ばれたのか。……

退職前の仕事、若返りの後の港湾バイト、ジム、そして街での生活…全部…)


「でも、逆コナン化するって…結局、普通の人間とは違う感覚を持つってことだよね?」


俺は恐る恐る訊く。


幸子は真剣な目で頷く。

「ええ。体は若い。でも経験や知識はそのまま。だから地域の問題も、簡単に判断できる。


そして、過疎地域へ行っても住民票上年齢は変わらないので、データでは高齢化率はほぼ変わらない。

普通の若者にはできないことができるのよ」


俺は考え込む。

(普通の若者の体になった俺は、確かに港湾バイトやジムでは有利だった。でも、中身はそのまま65歳…この組み合わせが、国家計画で最大限に活かされるのか…)


幸子が身を乗り出して言う。

「だから、これから過疎地での活動が待っているの。

あなたもそれを体験することで、計画を肌で知ることになる」


俺は息を深く吸った。

(見た目は若者、中身はおっさん――それでも、この先の未来は楽しみだ)


廃校のベンチに沈む夕暮れの光。

風が木々を揺らし、体育館の笑い声がまだ微かに耳に残る。

俺は心の中で、静かに決意した。


(俺も…逆コナン計画の一員として、今の過疎地を変える、そして支える。そして、青春を全力で楽しみながら…)


幸子は俺を見て、微笑んだ。

「さあ、次は現地よ。準備はいい?」


俺は小さく頷き、胸の奥に高鳴る期待を感じる。

(これから始まるのは、国家計画に巻き込まれた青春、でも俺は本物の青春を生きる――)


見た目若い!見た目が若くて動ける!これが良い!


夜風に背中を押され、俺たちは廃校を後にした。

見た目は若者、中身は大人たちの知恵。

巻き込まれて動き出した国家の策略


昔映画で見た「プラン75」は高齢者を制度に組み込む形として、姥捨山を連想させた。


この逆コナン計画は、

高齢者を若者化することで

高齢化問題を解決する、日本に必要な計画、高齢者の社会貢献...すべてクリアだな。


俺は、そう思いながら、折角の青春!を謳歌したいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ