【第五十九話】魔源体の核心へ
広間を後にした三人は、淡い魔素に導かれるように遺跡の奥へと足を進めた。
細い通路にはひび割れた彫刻が連なり、その隙間から微かに冷たい風が吹き込んでくる。
どこか深い地中から響いているような、低い水音だけが絶え間なく耳に届いた。
「リク……気をつけて」
メイが小さな声で言った。その不安げな響きに、リクは笑みを浮かべて答えた。
「大丈夫だよ、メイ。僕がちゃんと前を歩くからさ」
その言葉にメイはほっと息をつき、ミナは黙って二人の後に続いた。
やがて通路が広がり、小さな円形の空間に出る。
その中心には古びた台座があり、そこから薄青い光が静かに立ち上っていた。
台座に近づくにつれ、リクは手に微かな痺れを感じる。
「これは……?」
リクが呟き、ゆっくりと膝をついて台座に触れると、再び視界に幻影が広がった。
そこには封じられる前の魔源体と、必死に抵抗する術者たちの姿。
そして一瞬、魔源体から切り離され、輝きながら地中深く沈み込むひとつの結晶が見えた。
リクは息を呑み、視線をゆっくりと上げる。
「……見えたよ。魔源体の“核”はこの奥、さらに深い層に眠ってる」
「じゃあ、それを見つければ……?」
ミナが問いかけると、リクは力強く頷いた。
「封じることができる。きっとそれで、あの影がこれ以上広がらないようにできるはずだ」
メイが拳をぎゅっと握り締める。
「行こう……リク、ミナ」
三人は再び顔を見合わせると、誰からともなく一歩を踏み出した。
台座の輝きが徐々に薄れていき、闇が再び静けさを取り戻す。
その奥に潜む気配は、まだ消え去ってはいない。けれど今の三人には恐れ以上に確かな目的があった。
魔源体の核心へと――その奥深くに隠された答えへと向かって。




