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狡猾なる勇者  作者: H2O
終章
63/68

7 逃避行

船は激しく揺れながら進む。

船内は定員を超える人数の兵士たちが詰め込まれ、息をするのもやっとだ。


上官は撤退を命じた。

潜水艦ごと敵艦に衝突した俺たちの部隊の多くは、潜水艦が大破している。

生き残った兵士たちはこのポンコツな船に押し込まれたのだ。


「もうおれは助からないかもしれない。」


ジョーが青い顔でつぶやく。


「五体満足で生き残ったくせに何言ってんだよ。」


ジンに励まされてもジョーは「これから死ぬかもしれないだろ。」と怯える。


「あの虫がいるんじゃねぇかと思うと怖くて仕方ねぇ。」


「出陣前に全員検査を受けて虫は取り除かれただろ。」


「検査じゃ見落とされてるかもしれない。いや、さっきの戦闘中につけられてるかも。」


頭を抱えるジョーに耐えかねて俺は「そこまでにしろよ。」と口を出す。


「憶測で周りの不安を煽るようなことを言うな。」


ジョーは俺に大声で言い返す。


「この中の誰に虫がつけられているかわからないんだぞ。脳みそを乗っ取られて襲ってくる奴が紛れてるかもしれねぇのにこんなところにいれるか!」


「いい加減にしろよ。」と低い声を出したのはジンだった。

ジンは一気に距離を詰めジョーの胸ぐらを掴んだ。


「仲間を疑うのはやめろ。俺は仲間が憎しみ合うところなんか見たくねぇ。憎むべきは戦争だろ。」


ジョーの胸ぐらを掴むジンの手にさらに力が込められる。

ジョーはジンを睨み返す。


「戦争を憎めだと?そんなことできるわけない!おれたちは国のために戦うことが使命だろうが!」


「その使命に従うことを選んだのはお前だ。

自分の選択には責任を持てよ。」


「従わずにすむならそうするさ。けどおれたちみたいな下っ端の兵士は戦争から逃げることは許されない。ジン、お前だってそうだろう。」


ジンは舌打ちして、「俺は今日までの自分を心底恥じている。」と吐き捨てた。

ジョーから手を離すと、ジンは「アリ、俺は決めたぞ。」と真剣な顔を向ける。


「俺は今この瞬間から俺のために生きる。

俺は戦争をやめてやる。」


「本気なのか、ジン。」


ジンは力強く頷いた。

俺はジンの手を取った。

その手を強くひいて駆け出す。


「いってぇ!なにすんだよアリ!」


押されて悲鳴をあげる兵士たちを無視して船内を無理やり突き進む。

非常扉を思い切り蹴飛ばした。


「アリ、一緒に逃げてくれるのか?」


「死んでもついていくって言っただろう。」


俺はジンと共に海へ飛び込んだ。


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