表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狡猾なる勇者  作者: H2O
終章
62/68

6 激突

挿絵(By みてみん)


兵士たちは列をなし、ひとつの生物であるかのように足並みを揃えて行進する。

ざっざっと足音を鳴らし地下宮殿へと続く階段を降りる。

斜め前に少し青いジンの顔が見えた。


大型のボートへ詰め込まれた兵士たちは狂いのない速度でオールを動かし、地下宮殿の最深部と進んでゆく。

俺たちの部隊が乗るボートは小型潜水艦の列へと到達する。

俺が乗り込むのはこの2人乗りの小さな潜水艦だ。

細長い潜水艦の先端は海獣のツノのように尖っている。

潜水艦ごと敵の船底にぶつけて攻撃するのが俺たちに与えられた任務だ。

俺はジンと共に潜水艦に乗り込んだ。


ジンはいつになく黙りこくっていた。


「ジン、お前怖いのか。」


あの気味の悪い虫がつけられた兵士は俺たちの部隊の中に10人はいた。

虫を取り除き異常がないことが確認されると部隊に戻された。

しかし得体の知れぬ敵を前に怖気付いている兵士は多い。



「心配しなくとも改造されたりしないさ。」


ジンは「あの虫が怖いんじゃない。」と首を振った。



「なぁアリ、人を殺すのが怖いと言ったらお前は笑うか。」


「笑わないさ。」


号令が地下宮殿にこだまする。

潜水艦は一斉に深く水の中へ沈んでゆく。

向かう先は戦場だ。

暗い水の中を進んでゆく狭い潜水艦のなかは、世界から隔離されたように感じさせる。

俺の心情を察したかのように、ジンは「本当に世界に俺たちだけならいいのにな。」とつぶやいた。




やがて潜水艦は敵地の孤島へと辿り着く。

敵の戦艦が我が軍を返り討ちにせんと並んでいる。

俺はジンの肩を拳で叩く。


「ジン、生き残ることだけ考えよう。」


ジンはこくりと頷いた。




緊迫して見つめ合う両軍の間に響いたひとつの銃声。

どちらのものかはわからない。

それを合図に戦闘が始まった。


空からは飛行機から銃弾が降り注ぎ、海上では戦艦が火花を散らす。

水中では魚雷が爆発し、潜水艦が大きく揺れる。



「前方に敵軍の戦艦を確認!」


「ジン、照準を合わせろ!」


ジンはすぐさま敵艦隊に狙いを定める。


「用意完了。いつでもいいぞ。」


俺は深く息を吸い込んだ。


「ブランデーはいるか?」


ジンは「いらねぇよ。」と笑う。


「正気で十分だ。」


「そうか。」


心臓がばくばくとうるさい。

潜水艦の速度が上がる。


「なぁ、アリ!」


ジンは笑顔で言った。


「絶対2人で生き残るぞ。」


俺は頷いた。



「全速前進。」


歯車が大きな音を立てて回り、さらに速度が上がる。

最高速度で水中を駆け抜ける。

潜水艦の尖った先端部が敵の戦艦に矛先を向ける。



大きな衝撃とともに、俺たちを乗せた潜水艦は敵の戦艦に激突した。







ごぽごぽと水の流れる音がする。

ゆっくりと視界が明るくなる。

俺を呼ぶ声がする。


「アリ!起きろ!」


ジンの声だ。

俺は目を開けた。


「アリ!」


目の前には、ジンの笑顔があった。



「ジン、お前が潜水艦から脱出させてくれたのか。」


「2人で生き残るっていっただろう。」




孤島での戦いは両軍にほとんど同数の被害をもたらす結果に終わった。我が軍は島を攻め落とすことには失敗したが、戦争ははじまったばかりだ。再び両軍はまみえることとなるだろう。

けれどもそんなこと、生き残れたことに比べればどうだっていいことだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ