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狡猾なる勇者  作者: H2O
第六章
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7 地下宮殿の怪人

挿絵(By みてみん)


惨劇の後の会場は焼けこげた匂いに包まれ不気味さを漂わせる。

美しかった白い大理石は黒い煤とガラスの破片が散らばっている。


「ルーカス、銃は使えるんだろうな。」


前を歩くエマが念を推してくる。


「俺だって銃の使い方ぐらい心得てる。」


「どうだか。戦えるのは私だけなんだから無茶しないでくれよ。」


「わかってるって。」


「まったく、なんでノアまで連れてるんだか。」とため息混じりに言うエマに、ノアが「僕だってそう思う。」と生意気を言った。


2人の声に混ざって、もうひとつ声が聞こえた。



「なぁ、ちょっと耳を澄ませてくれ。」


響いてくるその声は、のどが焼けたかのように掠れている。

歌をうたっているんだと気づく。

懐かしい歌だ。



「エドワードの好きだった歌だ。」



奥から響いてくるその歌はこちらを誘っているようだった。

俺たちは声を頼りに奥へと進んでいく。



「行き止まりだぞ。」


エマは背丈を超えるほど大きな鏡の前で止まる。

しかし歌声はその奥から響いてくる。

ノアが鏡の淵にふれた。


「ここ、すこし隙間がある。」


鏡は少しだけ奥に向かって傾いていた。

ノアがゆっくりと鏡を押すと、鏡は扉のように開き下へと続く階段が現れた。

歌声は、地下へと誘っている。


石畳の細い階段を下っていくと、広大な地下空間に辿り着いた。

白い大理石の柱が立ち並び、湖の如く水で満たされている。

小さなガス燈の明かりに照らされ、金でつくられた幾何学模様がちらちらと輝く。

そこは、地下に広がる水の宮殿であった。


階段の下段、一隻のボートがあった。

これに乗れ、追ってこい、というように。

俺は誘われるがままにボートに乗る。


「おい、どう考えても罠だろう。」


エマが俺の肩を掴む。


「わかってる。だけどどうしても確かめたいんだ。兄さんが生きているのか。」


エマはふんと鼻を鳴らして俺の肩を離し、ボートに乗った。


「ノア、お前もこいって。」


俺がノアの手を引くと、ノアは「仕方ないな。」と言いながらも口の端を吊り上げた。




ボートを漕ぎ、地下宮殿の中を進んでいく。

水で満たされた宮殿に、歌声が響いている。

やがてドーム型の天井が見えてきた。

そこは宮殿の中央部で、左右に水路が分かれておりそれぞれ奥に部屋があるようだった。

水路の中心に円形の陸地がある。

真っ黒な人影が立っているのが見えた。


地下宮殿の中心で、仮面の怪人は俺を待っていた。

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