4 勅令
弟からの勅令が来たのはその午後のことだった。
投射機が歯車を低く唸らせて電報を写し出した。
彼の地の他にも 穢れし地 多々あり
すぐに 浄化を もたされたし
第一に 王国軍第13隊を 救済せよ
「僕の言ったとおりになったでしょ。」
ノアは気のない態度で言った。
浄化、救済なんてのは建前で実施には王国にとって都合の悪い者を消すことを命じられている。
子どもの寄せ集めでしかない俺たちにできる命令とは思えない。
「王国軍の部隊をひとつ消せなんて、できるわけないだろ!相手は手慣れた兵士たちだろ、殺せるはずがない。」
「13隊全員を殺せって命令ではないよ。」
慄く俺と違ってノアは冷めている。
「他殺だとわかる方法ならただの殺人だ。
13隊はこの街の民衆から信頼されているから、ただ隊長を殺すだけではだめだ。」
13隊隊長が外部のものに殺され、犯人が捕まらないとなれば民衆は王家への信用をなくすだろう。
最悪民衆が暴動を起こしかねない。
頭を抱える俺に、ノアは何でもないことのように続ける。
「13隊に自分たちで破滅させよう。
簡単だよ。皇太子になめられたのは幸運だったね。」
「簡単なわけあるか!どうやったらそんなことできるんだよ!」
「皇太子が13隊を狙うのは、彼らが力をつけて王国に逆らうのを恐れたからだ。実際に彼らに反乱を起こさせて、失敗させればいい。」
海の町に配属された13隊は王家に従順ではなかった。13隊が常在している海の街では、貿易にやってきた他国船による乱暴な行いが問題になっていた。しかし貿易相手である手前王国軍は動かなかった。13隊隊長は命じられていないにもかかわらず港の警護を強化し、悪さをするものは他国船だろうと攻撃し近隣住民を守った。
国家問題になりかねないため13隊隊長は罰せられたが、そのために近隣住民は王国の財政に不満と不信をつのらせた。
「反乱なんか起こせるのか?軍に潜り込むことだって難しいだろ。」
「そんなことしなくても、隊長に反乱を提案するぐらいできるでしょ?」
「ただの子供の提案を受け入れるわけないだろ。」
「ただの子供ならね。君は違うよね?」