3 失態
「こいつはユーシェンってんだ。どうしてもルーカスに会わせてくれって頼まれてよぉ。」
買い出しに行ったレニーが、鉄の馬に乗る青年を船に連れて帰ってきた。
俺は内心とても焦っている。
恐らく計画が頓挫したからだ。
「頼まれたからってほいほい知らない奴連れて来るなんて何やってんだい!」
「ユーシェンには借りがあんだよ…。」
ナターシャに叱られたレニーはいつになく罰が悪そうだ。
「レニーが盗人に間違われて追われてたところを我が助けたのさ!」
ユーシェンと名乗る青年はニィと笑う。
「盗人ってあんた何やってんのさ!」
ナターシャにぐいぐいと耳を引っ張られるレニーは泣きごとをいう。
「冤罪なんだよぉ!身元証明しろっていうからハンカチ出したのにあのおっさんがいちゃもんつけやがったからぁ!」
やっぱりそうか。ユーシェンはレニーが紋章入りのハンカチを出すのを見ている。
レニーが俺の使用人だとわかって恩を売り、ここまで連れて来させたんだろう。
猫のように笑顔を浮かべるユーシェンは、油断のならない男だ。
とはいえレニーはつけ込まれてしまっただけで、元は俺がまねいた失態だ。
「ナターシャ、そんなに叱らないでやってくれ。」
俺はレニーからナターシャを引き離した。
「ユーシェン、お前はどうして俺に会いたかったんだ?」
ユーシェンは「へへへへっ!」と声を立てて笑った。
「貴方面白いこと言うね!我に会いたかったのは貴方の方でしょ。騎馬の王を探し回ってるのは貴方ね!」
冷や汗が背を伝う。
俺は失敗した。
暗殺対象に気づかれた上、船に乗り込まれてしまった。




