12 終焉
赤毛の少年から買った薬は本物だった。痛みに苦しんでいた兵士たちは、薬を投与すると何事もなかったかのように動けるようになった。しかし所詮は痛み止めであって、怪我が治るわけではなかった。薬が切れると、兵士たちは前以上に苦しむようになった。一度楽になった分、痛みをより激しく感じるのだ。私がやったことは、正しかったのだろうか。
思考にふけっていると、突然誰かがドアを激しく叩いた。
「隊長!開けてください!お願いします!」
「どうした?」
ただごとでない部下の様子に私はろくに確認もせずドアを開けた。
「早く薬をください!お願いします!」
必死の形相で薬をねだる兵士は、ほおがこけ落ち窪んだ目だけがギラギラと光っている。
「君、様子がおかしいぞ。大丈夫か?」
語りかけてもろくに耳を傾けず、「薬をください!」と繰り返す。
「まだ持っているんでしょう?お願いします!」
「しかし…」
あまりの腱膜に戸惑う私に、兵士は痺れを切らした。
「やっぱり、隊長は薬を独占したいんでしょう?そうに違いない!あの人の言うとおりだ!」
「落ち着きたまえ!なんの話だ。私は薬を独占なんかしてないぞ。」
けれど兵士はパニックに陥り暴れ出す。
「誤魔化さないで!俺には薬がないと!」
まずいと思った時には遅かった。
グサリと腹をさされた。
「あの人が言ってたんだ。こうしなきゃ薬は手に入らないって!仕方なかったんだ!」
叫ぶ部下の声がだんだんと遠くなる。
不思議と意識とともに後悔も薄れてゆく。
最期の時には、私は海の街の民のため、部下のため、誰かのために、身を粉にした生き方を選んでよかったと考えていた。




