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第42話



 その日の帰り道、爽介とサヤは並んで歩いていた。



 「コンビニのアイスって、種類多すぎて悩むよな」



 爽介がそう言いながら袋の中を覗き込むと、サヤは少し笑った。



 「結局、前と同じのを買ってるんだよ」


 「え?」


 「ううん、こっちの話」



 サヤはごまかすようにアイスを開ける。溶けかけたクリームが指に垂れたのを舐めながら、ふと空を見上げた。


 ——この風景、知ってる。


 1年前、爽介と同じように並んで帰ったあの日。私は、彼の隣でまったく同じことを思っていた。



 「ねぇ、爽介」


 「ん?」


 「こうしてると、なんだかデジャヴみたいじゃない?」



 爽介は少し考えるように目を細め、それからアイスをひとくち齧った。



 「……たしかに、そんな気がする」


 「懐かしい?」


 「んー……そうだな」



 爽介ははっきりとした答えを出さずに、夕焼けを見つめた。それが、サヤの心を少しだけ締めつける。彼の中には「懐かしさ」はあっても、それが「私との思い出」だとは気づいていない。それでもいい。こうして、彼と過ごせるだけでいい——。


 そう思っていたのに。



 「サヤ」


 「ん?」


 「俺、最近変なんだ」


 「……なにが?」



 爽介は困ったように笑い、足を止めた。



 「わからない記憶が、時々ぼんやり浮かぶんだよ。たとえば、今日みたいにお前と歩いてるときとか」


 「……」


 「もしかして、俺たちって、前もこんなふうに一緒にいたのか?」



 サヤは心臓が跳ねるのを感じた。けれど、その気持ちを悟られないように、ゆっくりとアイスを口に運ぶ。



 「……どうだろうね?」



 爽介はじっとサヤを見つめた。その瞳には、ほんのわずかに混乱と、わずかな確信が滲んでいた。



 「サヤは、俺に何か隠してない?」



 サヤは一瞬、息を呑みそうになった。けれど、次の瞬間にはいつものように笑ってみせる。


 

 「秘密があったほうが、ドキドキするでしょ?」



 爽介は苦笑し、首をかしげる。



 「秘密って、何か変なことでも…?」


 「さぁ? 」



 2人は、そのまま並んで歩き出した。沈む夕日が、ふたりの影を長く引き伸ばしていた。


 ——ねぇ、爽介。


 もしも、君が私のことを思い出してくれたら。私は、どんな顔をすればいいんだろう?


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