表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/46

第30話



 ——ゴォッ



 突風が吹く。


 フィールドの中心点からはやや外側にずれた風香の場所に、強烈な風が吹いた。前髪がバタバタとゆらめく。ストレートの水色の髪が無造作に持ち上がり、凛々しい眉毛が顕になった。風香は微動だにしていなかった。じっと前を見据え、ただ、静かに息を殺す。


 「防御」への比重。頭の中に縦列する意識の流れは、さっきよりもずっと“硬い”。緊張感が、ドッと空間の内側に染み込んでいた。一点に集中する意識を刃物のように尖らせ、頭の中を回転させる。



 ズッ



 風香の視線よりもさらに低い位置。その「振動」があったのは、風香のすぐ近くだった。靄のような線の”ブレ”が立ち込めながら、空気が膨張した。



 「…チッ」



 地面からほど近いところに、風香の「視線」はあった。相手がどこにいるかを把握しきれていない状況下で、視線を動かすのは危険だった。できるだけ早く、視点を固定させる。風香が足と手を地面につけたのは、姿勢を安定させるためだった。わずかな空気の乱れも視界の中に捉えようと、重心を下に落としていた。


 その下。


 空気の“揺らぎ”があったのは、低く構えた体勢の下だ。地面の中から飛び出してくるように、風香の顎の下を狙った拳が持ち上がる。角度はほぼ垂直だった。風香は相当低く構えていた。にも関わらず、空いた空間を抉り取るように腕が伸びてくる。風香は視線を動かすよりも先に、直観的に上体を捻った。



 ブシッ



 頬に掠める拳。かろうじて避けたが、わずかに触れてしまった。下から来ることは予期していなかったのだろう。左手を支点にして、四つん這いだった体の半身を浮き上がらせた。が、動きとしてはほとんど反射的だった。


 浮いた体を立て直すのに必要な時間は、数秒もない。しかし動きは連続している。受け身を取るには、十分な姿勢ではなかった。そこへ狙い澄ましたような強烈な一撃が、風香の正面を捉えた。



 ガッ



 重い音。左半身が浮いた反動で右側のスペースがおざなりになっていた。右手は地面に接触したままだったが、体全体を支えるには不安定な“まま”だった。次の動作への準備ができていない中で、敵の左足が直線的な軌道を描く。空気が、——千切れる。



 ズザザァァァッ



 フリーになっていた左手で咄嗟にガードしたが、攻撃を殺しきれはしなかった。相手の繰り出した「蹴り」は風香の軽い体を吹っ飛ばすには十分な威力を持っており、重い衝撃音の後に風香はバランスを崩してしまう。後ろへと飛ばされた距離は数メートル。唇が切れたのか、口元から血が滴っていた。「有効打」の判定はされなかったものの、最初の攻撃よりもダメージは深かった。急いで体勢を持ち直そうとするが、その表情は険しい。



 「おいおい、やばくね!?」



 圧倒的不利。そう言っても差し支えなかった。どこから攻撃が来るかもわからない状況だった。敵の位置さえわかりさえすれば対処のしようもあるが、相手の姿は見えない。


 透明人間と戦っている。


 形容するとそんな感じで、これじゃ目を瞑って戦うのと同じだ。せめて攻撃の出どころさえわかれば…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ