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第21話



 …でも、待てよ。仮にその話が本当だとすれば、その生徒に襲われる可能性があるってことか…?だとしたらめちゃくちゃ怖いんだが。



 「大丈夫じゃない?あんたから行かなければ」


 「俺から“行く”ってどういうことだよ」


 「先に仕掛けたのはあんたでしょ」


 「俺!?」


 「なんかあったっぽいけどね。詳しくは知らないけど」



 一体何があったんだ…?俺は今まで誰かと喧嘩したことはないし、トラブルに巻き込まれたこともない。孤児院に入って、いくつかの施設を転々としてた。東京に来たのは3年前だ。正確に言えば4年前だが、東京に引っ越す前は、しばらく研究施設にいた。ペルソナに襲われ、1ヶ月以上意識を失っていたが、ケガが回復した後“政府の関係者”とやらに連れられ、病院を後にした。それから約1年間、長野にある孤児院に預けられ、日本でも有数の研究者が集う『ペルソナ国際研究所』でリハビリの生活が始まった。話すと長くなるが、あんまりいい思い出はないんだ。当時の俺は社会復帰できるかも怪しかった。精神的にも、——肉体的にも。



 「おー、いるいる」



 海岸沿いにある訓練場、『シーサイドパーク』。学生寮の最寄りのバス停から、約15分。朝が早いせいか、道はそんなに混んでなかった。臨港道路の片側3車線を進んでいった先に、大きな建物が見える。歩道沿いに敷かれた長いフェンスが、広い敷地を囲うように続いていた。すり鉢の形状になった巨大なスタジアム。開閉式の屋根が天井にあり、それが宇宙船のような独特なフォルムになって外壁の周りを繋いでいた。壁の上部には均一な間隔で取り付けられた窓が、無数に並んでいる。無骨なコンクリートの質感に、重量感のあるどっしりとした面構え。スタジアムといっても、ここはスポーツイベントが開催される場所じゃない。アンダーテイカーの修練場といえば、「バトルドーム」と呼ばれるこの場所だ。都内にいくつかあるこの施設は、対ペルソナ用のデータ解析システムや実践用のカリキュラムが機械的に組み込まれており、【対ペルソナ戦術】という分野を研究する施設でもあった。


 集合時間の8時になって、ぞろぞろと授業に参加する生徒が入り口奥のコンコースに集まってきた。特進コースのクラスは合計で13組存在し、今日はそのうちの3組。1クラス約30名の生徒が通路にひしめき合い、話し声がザワザワと響き渡っていた。チャイムが鳴って、授業が行われるフィールドへと歩く。メインコンコースは広く、天井が高い。鉄製の柱が何本も屋根に向かって伸びていた。「研究所」という側面もあるせいか、空間全体に清潔感があり、機械的なロジックが随所に散りばめられていた。



 「学生証忘れてないよね?」


 「おう」


 「げ、今日4組と一緒じゃん」


 「4組?」


 「相性が悪いヤツがいるんだよ…。私の「能力」と」


 「どんなヤツ?」


 「ドレッドヘアーのアイツ。見えない?」


 「ああ、あの子?」



 ピンクの髪に、口に開いたピアス。いかにもヤンチャそうな見た目は、4組の生徒の中でも目立っていた。タンクトップの下にはスマートな二の腕が見える。カジュアルなストリート系ズボンに、首についたネックレス。自由な服装で来ていいとはいえ、さすがに…って感じだった。どんな能力持ちなのか知らないが、オーソドックス型と言える風香が嫌がるということは、相当癖のある能力なのか、それとも、単に相性が悪いだけなのか。

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