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第1話



挿絵(By みてみん)







 ベットが軋む音がする。明かりの消えた部屋の中で、壁を叩くような激しい息遣いが、夜の帳の向こうに泳いでいた。俺はただ、夢中で手を伸ばしていた。無防備になった少女の上に覆い被さり、床に打ち付けるように何度も腰を落とした。



 ギシッ


 ギシッ



 少女は右手で顔を隠して、溢れそうになる声を抑えていた。


 上着は来たままだった。はだけたシャツの下に見える肌が、かすかな明かりの中に透けていく。俺は欲望のままに腰を動かしていた。そこに感情はなく、彼女に対する思いやりもない。



 「…ん、ふぅ…」



 右足にかかったままの下着と、床に転がったままのジーンズ。彼女は美しい女性だった。美しく、大人びた女性だった。それ以外のことは何も知らなかった。俺たちは今日の夜、知り合ったばかりだった。いや、“知り合ったばかり”と言うのは、少し語弊があるかもしれない。俺は彼女を以前から知っていたし、顔だって何度か目にしていたからだ。


 彼女は有名人だった。



 「ハァ…ハァ…」




 なんでこんな状況になってるかって?それは俺も知りたい。昨日のことだった。1年間付き合っていた子から、突然振られた。そこまではまあ、別に良かった。よかないけど、振られるには理由があるだろうし、そうなった原因は俺にあるだろうしさ?


 ショックだった。


 そう言われた直後は、どう整理すればいいかもわからないくらい。だけど、受け止めるしかなかった。理由はちゃんと聞いた。なんで?って、——ただ、それだけを。彼女は教えてくれなかった。俯いたままで、「別れよう」って、小さく頷くだけで。わけもわからないまま、学生寮の部屋に戻った後のことだった。立ち直れない俺の目に届いたのは、1学年上の先輩と寝ている動画だった。俺のスマホに突然送られてきた。響き渡る喘ぎ声に、脱ぎ散らかした服。



 嘘…だろ…?



 送り主は不明だった。なんで送られてきたのかも、何が目的だったのかも。ただ、映像の向こうにいたのは紛れもなく彼女だった。いつも隣にいた、——あの。



 「来て…」



 必死に腰を動かす俺とは反対に、淡く潤んだ瞳を向けてくる。SEXをするのは初めてじゃない。元カノ、——サヤとは何度かしていた。目の前にいる彼女は“初めて”だった。俺を誘ってきた割に、まだ誰とも経験したことがなかった。当然痛がっていた。“挿れた”時は。もう2時間以上もベットの上にいる。時間を忘れるように、俺は無我夢中で彼女の体を抱き続けていた。俺が俺じゃないみたいだった。まるで、理性の何もかもが持っていかれてるような。



 「中に…出すぞ」


 「うん」



 俺は何を言ってるんだ?強く抱きしめてほしいと訴えられた気がして、彼女の唇を押さえつけるようにかぶりつく。背中に回してきた彼女の足が絡みつき、がっちりと俺の体を掴む。中に出すなんて正気じゃない。彼女のことを考えるなら、ゴムをつけるべきだ。大体なんで俺は彼女と寝てる?知り合ったばかりで、まだどんな人なのかもよくわからない。彼女が有名人なことは知っていた。有名と言っても、ある“界隈”でだけど。俺のクラスは普通科特進コースで、商業科の奴らとはあまり絡みがなかった。彼女は“商業科のアイドル”と呼ばれてて、男子生徒の憧れの的だった。「学園一の美少女」だった。東京都第3支部高等学校の2年で、俺とは同い年で。



 「…ハッ、…あッ」



 キャンパス内にある学生専用のバーで、俺は飲んだくれてた。何もかも忘れてしまいたいと思ってた。サヤとは一年の時に知り合って、一緒にミッションとかをやっていくうち、互いに惹かれていくようになった。サヤは優等生だった。なんでも器用にこなして、俺とは正反対の几帳面な性格だった。決して垢抜けた子じゃなかったけど、真面目に勉強に取り組んでた。



 (…なんで、…あんなやつと)



 映像に映ってた先輩は、俺もよく知ってる先輩だ。同じ学科で、授業も一緒にすることがあった。合同演習では先導役をやってた。さぞモテるだろうなって感じの顔つきで、成績も優秀な人だった。でも、どうしても…



 「…少し、…ゆっくり…」



 俺は止まらなかった。彼女の指が、——足が、背中に食い込んでくる。中で締め付けてくるのがわかる。もうすぐイクんだろうなって思った。俺は何も考えられなかった。頭の中にあったのはサヤのことだ。忘れたかった。拭い去りたかった。あの映像を、目に焼きついたものを消したい一心で、目の前にいる彼女の体を求める。中に出した後、上着を脱がせた。何も付けないままの裸の彼女を撫でるように、中に出したものをかき混ぜる。ついさっきまで処女だったとは思えないほど、彼女は甘く鳴く。痙攣した足と、無防備になった膣。その根本から、愛液が糸を引いていた。四つん這いになった彼女の後ろから、俺は再度強く体を求める。

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