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第15話



 新世紀へと突入した2000年代、世界は混沌に包まれていた。


 “複合国家”と呼ばれる国際連合組織が発足したのは、西暦2011年のことだった。国、人種、言語を問わず、人々はペルソナの侵攻から生き延びるための方法を探し、国境という「壁」を取り払った。“大陸分断期”というのは、ペルソナの侵攻によって「国」という主権が失われ、自由に歩ける土地が失われたことに由来する言葉である。21世紀も半世紀を迎え、人間が暮らしていける領土は年々減少傾向にあった。反面、国境がなくなったことによる影響で、国際政治としての地盤は“政治社会”という垣根を越えて統制能力が強化され、よりグローバルな「政治的共同体」が確立されていった。


 現在、東京では「世界政府」が主導する“対ペルソナ兵士養成機関”が発足し、今年で25年目を迎える。俺たちは24期生だった。東京都第3支部高等学校は、東京に設立された6つの「軍事学校」のうちの1つであり、複合国家“アジア連盟“のインターナショナル・スクールとして、数多くの兵士を輩出してきた公的施設だった。



 「…その子の、名前は?」


 「ハハッ。気になるのか?人に聞くより、自分で調べてみたらどうだ?」



 調べるって言ったって、どうやって…?単純に気になったんだ。どういう被害に遭ったのか知らないが、無事なわけがない。先生は「商業科の生徒」ということだけ教えてくれた。何があったのか思い出すきっかけになるかもしれないのに、どこか素っ気なくて。もくもくと立ち込めるタバコの煙が、ほろ苦いコーヒーの香りの中に膨らんでいく。ビターな香りが鼻を突く。「仕事の匂い」って感じがした。灰皿に詰まったタバコの吸い殻や、カチカチッというクリック音。デスクの椅子に腰掛け、先生はパソコンのモニターを見てた。長い足を組み、時折、手元にある資料を見たりしながら。



 体調が優れるまで保健室にいていいと言われたが、今すぐ外に出てみたい気持ちの方が強かった。だから保健室を出て、学校の中を散策する事にした。城ヶ崎さんが案内してくれるみたいで、俺は彼女の後をついて歩いた。「その呼び方やめてくれない?」って、彼女は言う。そんなこと言われても、初対面の人を呼び捨てになんてできないし、逆になんて呼べばいいんだって聞いたんだ。そしたら、“呼び捨て”でいいって。



 「さすがにそれは…」


 「なんで?」


 「なんでって、嫌じゃないか?初めて会った人に下の名前で呼ばれるの」


 「初対面じゃないじゃん」


 「…まあ、そうなんだろうけど」



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