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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
102・婿修行だ!

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335/337

110・かくして、油使いは伝説に 第335話 影から感じる視線!

「これがうなぎのひつまぶしだ!! ギルボウが考えつく前に作ってやったぞ! 一見するとアレンジしただけの料理だが、この海苔と細切り卵焼き……錦糸卵とでも呼ぼう。これの組み合わせと、タレをまぶしたご飯がキモだ。うなぎそのものは少なくても良い……」


「やるな……!! ふんわりと俺がアレンジメニューを考えていた所に、ドンピシャなものを作り出すとは……!」


「美食伯、やっぱりオーナーシェフのライバルはあの人しかいねえ……!!」


 なんてやり取りをやっていたら、視線を感じるのだ。

 ハッとしてそちらを見ると、物陰からエリオットが僕を凝視しながらメモを取っている!


「お、お前~!」


「うわっ、お前どうやって侵入したんだ!?」


 僕もギルボウもびっくり。

 ギルボウの店の守りは鉄壁なはずなのに、このハーフエルフがいつの間にか一番奥のオーナールームまで来ていたのである!


「くっ、見つかったか!」


 サッと立ち去ろうとするエリオット。


「まあ待てエリオット。せっかくだから君もひつまぶしを食べていけ」


「くっ……。ご馳走になってしまっては、中立的な立場で伝記を書けなくなる」


「別に食べたからって恩に着なくていいんだぞ。悪いこともバンバン書け。そしてひつまぶしを食え」


「くっ……」


 席につくエリオット。

 そしてみんなでひつまぶしを食べた。


「いやあ、しみじみ美味い」


「さすがに美味いな……。うなぎを米に混ぜ込みつつ、タレで味付けしたものだが、想像した通りの美味さがガツンと来る」


 ギルボウのところのシェフたちも、美味い美味いと食べている。

 さて、伝記作家エリオットはと言うと……。


 既に空になった皿を前にして、ぶるぶると震えていた。

 美味かったんだな?

 一瞬で食べきるくらい美味かったんだな?


「こんな美味いものを食べたことがない……。なんということだ……!! 私は今、賄賂を受け取ってしまった……! 伝記作家失格だ! 今日はもう、ひつまぶしの事しか考えられない! おかわりいいですか」


「いいぞ! たんと食え!」


 こうしてエリオットは二回ひつまぶしをおかわりし、風のように去っていったのだった。

 愉快な男かもしれない。


 翌日。


「牡蠣は国の管理になりましたが、他の貝類や蟹は獲り放題ですからね」


「漁業権は?」


「この辺りはギリギリで、漁師たちの縄張りと王家のプライベートビーチの隙間にあるのです。ですからフリーです。獲ったものがちです」


 一見して無表情なこのリザードマンは、至高神の司祭サルシュ。

 だが、最近はカエルとかリザードマンの表情を読めるようになってきた僕だ。

 彼が不敵な笑みを浮かべているのが分かる。


「気に入った。じゃあ獲りまくって焼いて食べよう」


「いいですね。これもきっと神の思し召しです」


 美食伯と至高神の司祭が、密猟めいたことをしているのだ。

 法の隙間を突いたので、結果的にホワイト。

 だがゾクゾクするスリルを味わえるな。


 僕らが、網にミッチミチに海産物を詰めていると……また視線を感じた。


 ハッとして周囲を見回す。

 岩場の隙間に……エリオットが!!

 またメモしている!


「まずい! この状況を伝記に書かれたら、この場所がホワイトではなくなってしまう!」


「ええ。見られてしまいました。これはどうにかしてしまうしかありません」


 僕とサルシュがエリオット目掛けて詰めかける。

 だが、このハーフエルフは謎の動きで岩場の隙間を、直立姿勢のままスーッと上まで上がっていくではないか。

 魔法か!?


 僕は油を放ち、サルシュは衝撃の魔法で岩場を揺るがそうとする。

 だが、エリオットは仰臥した姿勢になり、僕を凝視してメモしながら高速でジグザク移動していく。

 キモい! なんだあの移動は!

 速すぎて油が当たらない!


 とうとう逃げられてしまった。

 なんなんだあの伝記作家……!!


 僕とサルシュの追撃を完全に躱すとは……。

 なお、この密猟っぽいことができる場所の事は、翌日になっても誰にも伝わらなかった。


 もしかして、伝記が完成するまでは外に出すつもりがない……?


 そしてまた翌日。

 我が家にサルシュを呼び、一日掛けて砂抜きなどをした海産物でバーベキューをすることになる。


「お招きいただきありがとうございます。では焼き加減は不詳、このサルシュが太陽を司る至高神の名において取り仕切りましょう」


「いいぞーサルシュー!」


「上手に焼いてくれー」


「たのしみー! おいしそー!」


「なんと! サルシュしさいがじきじきに!」


 ワーッと盛り上がる僕らなのだった。

 なお、この場の隅っこでやっぱり例のハーフエルフがいて、この様子を観察しながらメモをしている。


 恐るべき取材力……!!

 常に僕の動きを調べ、日々のイベントを記録しているのだ。

 さらに、冒険者ギルドにもエリオットが出現していると聞いた。


 彼はまさしく、僕の足跡を追って、ナザルという人物の全てを詳らかにしようとしているのである!


「それはそうと、バーベキューは量があるんだから君も来い」


「賄賂は……」


「一日や二日美味いもの食わせてもらったからなんだと言うんだ。僕はな! なるべくその場にいる人間全員が腹一杯になることが優先なんだ!!」


「くっ……なんという人間の大きさ!! ではいただきましょう」


 こうして、伝記作家は僕らの中に加わり、大いに海産物バーベキューを堪能して行くのだった。



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― 新着の感想 ―
ナザルの油をもってしても尻移動は封じ得なかった!
潜在的にジャパニーズは飢えてる人をそのまま放置出来ない、と信じていますw
まさか… この人のご先祖は…
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