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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
102・婿修行だ!

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109・先王よ、うちの子を抱っこせよ 第333話 先王陛下、うちの子を抱っこする

 カルが完璧なイケてる赤ちゃんになった。

 これはもう行くしかないだろう。


 カルをベビーカーに乗せ、僕とリップルとコゲタとアゲパンとポーター……つまり、ボルドスキー美食伯一家総出で王宮に押しかけた。

 話は通してあったのだが、荷馬とコボルド二人、そしてベビーカーを連れた家族がやって来るというのは、門番から見てもすごい光景だったらしい。


「び、美食伯ですよね!?」


「そうだよそうだよ」


「私もいるからね」


「リップル様まで!! 話には伺っておりましたが、凄い……なんていうか凄い面子ですね……」「普通、護衛の兵士を連れて歩くもんだと思うんですが」


「僕とリップルが揃うと護衛がいらない」


「なるほどぉ」


 完全に納得された。

 こうして門をくぐり、城へと向かう道のりをゆく。


「美食伯だ!」「美食伯とリップル様だ!」「すげえ、王宮にコボルドと荷馬を連れてこれる人なんて、美食伯しかいないぜ……」


 不思議な感心のされ方をしているな。

 だが、ポーターはお城に入れないのは確か。


 ここで、彼は王宮の厩舎に預けることにした。


「あとで迎えに来るからな!」


「ぶるるー」


 ポーターは大変賢く、物わかりがいい。

 僕から人参めいた野菜を受け取り、もりもり食べながらご機嫌で見送ってくれるのだった。


「またねポーター! あとでねー!」


 コゲタがぴょんぴょん跳ねながら手を振っている。

 多分一時間くらいの別れで、すぐに再会だぞ。


 さて、お城の中をベビーカーを押しながら練り歩く。

 こんなところでベビーカーを見る機会はなかなか無いらしく、主に女官たちが集まってカルに声を掛けていく。


 カルはニコニコしながら応じた。


 そして通り過ぎる騎士たちも、カルを見るとちょっと相好を崩す。

 赤ちゃんがいるとちょっと優しい気持ちになるもんな。


 ということで、大人気のままにカルは王宮を縦断。

 先王の待つ奥の間へと通されたのである。


「先王陛下がお待ちです。どうぞ」


 コボルドも通してくれるようだ。

 アーランの王室も変わったなあ。


 かつてはコボルドは下等な種族扱いをされており、言うなればペット同然だった。

 だが今は違う。

 僕の地道なコボルドの地位向上活動のお陰で、コボルドたちは人間の相棒としての地位を得た。


 しっかりとマナーを学んだコボルドは、公の場にも出られるようになったのである。

 最初はこの事に眉をひそめていた者たちも、実際にコボルドがその場にやってくると、物わかりがよく礼儀正しく、そしてもふもふしていて可愛いのですぐに態度を一変させた。


 皆、可愛いものには弱い。


 そして先王の御前である。

 彼は厳しい表情を作ったまま、豪華な椅子に腰掛けて僕らを迎えた。

 この奥まった部屋、崖の中にあるらしく、窓がくり抜かれていてそこから日差しが差し込んでくる。


 ほう、くり抜かれた窓の周囲が、盆栽みたいなのが置かれて極小の庭園みたいになってるじゃないか。

 趣味がいいなあ。


 僕がそんな事を考えてよそ見している間に、リップルが「やあやあ先王陛下。お加減はどうですか? 少し見ない間に、随分老けてしまったねえ」とか不敬極まりないことを言いながらとことこ近づいていたのだった。


「あ、ああ。余はすっかり老いぼれてしまった。至高神の元に召される日も近いだろう」


「気弱だね! 私に求婚してきた時のガツガツした感じはどこに行ってしまったんだい?」


「いや、あれは余が若かっただけで……」


 先王がたじたじだぞ。

 だが、ちょっと嬉しそうなのだ。


 自分が老人になっても、何も変わらずに接してくれる憧れの女性がいるんだもんな。

 そりゃあ嬉しいに決まってる。


 先王がまるで、リップルに恋する青年のように見えるのだった。

 それはそうと、カルを抱っこしてもらわねばならい。


「陛下。カルです。どうぞ」


「うわっ、そなた、余韻というものを味わわせる気がないな!? おっとっと、危ない危ない! おお、随分めかしこんできたな。お? なんだ? 余のようなおじいちゃんが珍しいか」


「あばーうー」


 カルが手を伸ばして、先王の顔をペタペタする。

 なんでも興味を持ってペタペタするんだよな。


 先王はニコニコしながらこれを受け止めている。

 ふーむ、本当におじいちゃんみたいだな!


 先王としては、憧れの女性が産んだ子どもなのだ。

 彼がまだ若ければ複雑な気持ちであっただろうが、孫までいる本物のおじいちゃんだからな。

 目を細めて、カルを高い高いしている。


 カルはキャッキャッと喜ぶ。

 うちの息子は、動きがある状況を何よりも愛しているのだ。

 コゲタやアゲパンに運ばれていると、ずっとご機嫌だぞ。


「そうかー。そなたがリップルの息子か! 母に似て、大きな事をやってくれそうだ! 期待しておるぞ。アーランのみらいはそなたに任せたぞ、カルボナル! おお、楽しいか? 楽しいか! ははははは!」


「きゃーっきゃっきゃっ!」


 なお、すぐに先王陛下は息切れしてきたので、そこをアゲパンが引き継ぐ。

 パワーに満ち満ちているコボルドが、二人でカルの相手をするのだ。

 このために二人を連れてきた。


「どうです陛下。うちの子でした」


「ああ、元気をもらってしまったな……! リップルも、そなたのそんな楽しそうな顔は、ついぞ見たことがない」


「そうかい?」


 心外だなと言いたげなリップル。


「何年そなたを見てきたと思っておるのだ! ナザル! 美食伯ナザルよ!」


「はっ」


「リップルを大切にせよ。これは命令であるぞ! いいな?」


「あっはい!」


 僕は適当な感じの返事をしたのだが、これで陛下は安心したようだった。


「ああ、これで余は満足したわい」


 なんか遺言みたいになってませんかね。

 死ぬなよ、陛下!



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やっぱりおじいちゃんと化したか!
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