108・王宮にうなぎを収める 第329話 王宮の人がまとめて出てきたぞ
うなぎである。
大変な効力を発揮した、精のつく料理。
特にパルメディアにおいては、即効性まであることを自ら確認した。
危険だ。
我が家が子沢山になってしまう。
リップルは子どもがまたできるかも知れないことについて、
「私は一向に構わないが?」
と心強いことを言っていたのでまあいいんじゃないか。
今回は、この凄い力を発揮したうなぎを、王家に収めようということになった。
なんと、ソロス陛下と王妃様と第二王妃様まで来るらしい。
いたんだな、第二王妃!
噂では、武門の出らしくてとても頑丈な御婦人らしい。
編み物、縫い物のプロフェッショナルである第一王妃様とは大きく違う。
ウノ王子だが、ポチャッとしたバカ王子風だったのが、ちょっと鍛え直したようだ。
次の王様だからな。
見栄えを鍛え上げて欲しい。
さて、ギルボウを連れ、いつものようにシャザクもいて、この三人で王宮にやって来る。
流石にギルボウも緊張しなくなってきたようだ。
「俺も地位というものを得たし、貴族も食いにくるからな……。いや、陛下の前は流石に緊張はするが」
「僕がいるから安心してくれ」
「お前の図太い所に救われる……。で、どうだったんだシャザク? ナザルのところではうなぎの効果が出たらしいが」
シャザクは満足げに頷いた。
「大変ヒートアップした。明け方まで頑張ってしまって、お互いぶっ倒れて翌日は昼まで寝ていた。さらに次の夜も大いに盛り上がった」
「凄いなあ……!! 僕はせいぜい、一晩だけうなぎに当てられてカッとなったくらいだ」
「ハーフエルフは子どもができづらいんだろう? 一回くらいでは意味がないんじゃないか?」
「カルは一発で作った」
「すげえ!!」
「すごい!!」
男たちが僕を称賛してくる。
「そんなすごい?」
「恐らく人類史上誰も成し遂げたことのない偉業だな。しかも相手はあの英雄リップルだろう? 魔天の美姫ともかつては呼ばれ、多くの男達が彼女に憧れた……。多くの男達から誘いがあっただろうが、彼女は誰にもなびかなかったのだ……」
詳しいなギルボウ!!
「そもそも、エルフが滅びたのは子どもが出来づらかったからだろう? それで、人間の中にエルフの血が受け継がれて稀にハーフエルフが生まれてくる。だけど、ハーフエルフもそもそも子どもを作りづらく、その血は薄れて消えていくと思われているんだ」
詳しいなシャザク!!
二人ともハーフエルフファンだったのか。
いや、幼い頃からリップルの伝説を聞いて育ったわけだから、いうなればアーラン生まれの男たちは皆、リップルの夢男子なのだ。
それを僕が横からかっさらった?
いや、そうではない……。
夜這いとかをしようとしてくる女子たちを避けるため、ついた嘘が僕を追い詰めたのだ!
まあ、リップルは僕としても特別な相手ではあるので不満は全く無い……。
そして僕らの相性は極めて良かったようで、大変子どもができやすい気がしている。
今後は注意して行きたいな。
子どもが増えても、僕が子どもに残せるものは特に無いからな。
だが……そのためにうなぎを我慢する……!?
ありえない。
仕方ない、サッカーチームができるくらいまでは許容してもらおう。
僕は割り切ることにしたのだった。
さて、今回はデュオス殿下……いや、デュオス公爵のお屋敷ではない。
王城にて会食が行われる。
この国の城は、石造りの無骨な城ではない。
崖の半ばを構造材として活用しながら、生活のことを考えた作りになっている。
なので、崖を削って作られた眺望の素晴らしい、テラス付きの食堂があったりするのだ。
今回の会場はそこだ。
途中でデュオス公爵と会った。
とてもいい笑顔で、
「うなぎが恐ろしく美味いそうだな。期待しているぞ! 頼むぞナザル!」
「あっはい、ご期待を」
凄いテンションだなー。
最近は子育てが忙しくて、あまり彼に構ってあげられなかったので、久々すぎてウキウキしてるんだろう。
だが、待たせた甲斐はあるぞ。
厨房まで来たら、なんかでかい女性がいた。
僕よりでかいぞ。
誰だろうなーと思っていたら、シャザクが教えてくれた。
「第二王妃様だ」
「あー、あのお方が! なるほど強そう」
第二王妃様は、「楽しみにしています!! 精がつくとのことですからね!」と大変大きな声で仰ったのだった。
ちなみに、ソロス陛下と第一王妃の間にはウノ王子一人だけ。
第二王妃との間には、お姫様ばかり四人できたらしい。
凄い。
体が強い。
そして陛下も頑張ったんだな。
さらに、第二王妃の子どものお姫様が四人ともやって来ていて、目をキラキラさせながら厨房の僕らを見つめている。
「とても美味しいお料理だと聞いています!」「とっても楽しみです!」「お腹いっぱいにしてくださいね!」「あったかいおりょうりさいこう!」
一番ちっちゃいお姫様がジャンプしながらそういう事を言ったので、第二王妃と三人の姫で「はしたないですよ!」とたしなめたりしているのだった。
仲良しだなー!
で、そこにさらに、僕が一番馴染みのあるお姫様である公爵令嬢がやって来た。
彼女は僕の姿を見ると、笑顔で手を振った。
そして四人の姫に向かって、
「王妃様、お姫様がた! 美食伯の紹介なさる料理は全て大当たりです! 大いにご期待なさって!!」
おおーっとどよめく、第二王妃と四人の姫。
とても元気なのだ。
そして、なんだかんだで公爵令嬢と仲良しなんだな。
ご令嬢が最年長で、ミドルティーンくらい。
四人の姫が、やっと中学生くらいから小学校入学くらいまで、年齢も段々。
最近、公爵令嬢は乗馬を始めたそうで、背筋もすらっとしてきてるので憧れているらしい。
美食で太らないために、体を鍛え始めたんだろうな……。
さて、そんな期待を背負いながら料理なのだ!




