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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
102・婿修行だ!

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103・船、出港す 第315話 アゲパンハウス

 せっかくなので、うちで夕食を摂っていけという話になり、さらに話が進んでダイフク氏は一泊していくことになった。

 いいぞいいぞ。

 積もる話もある。

 今宵は語り明かそう。


 ではどこで寝てもらうか?


 今建築途中であるアゲパンハウスがちょうどよかろう。

 ポーターの世話を担当している人の家も、うちの敷地内にはある。

 だが、そこはその人の家だからな。


「アゲパーン」


「あっ、おとうさん!!」


「うむ。半分くらい完成しているアゲパンハウスだが、今夜は僕とこちらのダイフク氏が宿泊する。星を見ながら語り明かす予定なのだ」


「なるほど、おとうさんのごゆうじん。とおくへと、さられるのですね。ではわがやはちょうどいいでしょう。てんじょうとかべがかろうじてあるだけなので、よぞらはすごくみえますし」


「うんうん。近所の大工のじいさんが一人で作ってくれてるからな。完成までは日は掛かるが……まずは雨風だけ最低限しのげるようにしてくれたのは良かった」


 外見は、木造の柱の周りに板を打ち付け、ざっと漆喰を塗りつけて隙間風を防いだ作りだ。

 この鎧戸はアゲパンの手製。

 じいさんの横でコツコツ作ったらしい。


 つまり、この作りかけの小さい家は、たった二人で建造しているのである。


「これはなんとも趣のある家ですな! ようがす。ここでお喋りをしましょう。春が近いから、寒さもかなり和らいでて本当に良かったですぞ」


「やっぱりダイフク氏は寒さに弱い?」


「何気にアビサルワンズは恒温動物なのですが、それはそれとして暖かいほうが嬉しいですな」


 人間と同じということらしい。

 夕刻となり、ダイフク氏を交えての夕食となった。

 今回は喉越しを重視し、うどんである。


 海藻から丹念に取った出汁を使うが、僕やリップルはここにゆで卵とか薬味を加えても良い。

 コボルド用にちくわみたいなものも用意してある。


「コゲタ、うどんすき!」


「われも、このうどんなるものはすきです! たべやすい!」


 コゲタとアゲパンが、うどんをお皿に取り分けてからパクパク食べている。

 コボルドは口の構造的に、ずるずるすするのは難しいのでこういうスタイルなのだ。


 で、僕とリップルとお手伝いさんは慣れたもので、つるつるうどんを食べる。

 美味い美味い。

 そしてダイフク氏。


 ほどよくうどんが冷めたところで、カパッと開けた口の中に一期に流し込んだ!

 つるんと飲み込む。


「おお~」


 感嘆の声が漏れた。


「素晴らしい喉越しでしたぞ」


「流石に一口だった。前々から思ってたんだけど、アビサルワンズはそれで食事が楽しかったりするの?」


「楽しいですぞ。良いですかな? コボルドは香りを楽しみ、噛み応えを楽しみます。人間は風味と食感、喉越しを多重に楽しみ、これを長く継続します。では我らアビサルワンズはどうか? これはですな、食事の全てを濃縮して一気に楽しむのですぞ!」


 どうやら食の全てを、喉越しの一瞬に詰め込んで堪能し尽くすスタイルだったようだ。

 まさに異文化だなあ……。

 人間には真似できないスタイルなので、その良さは分からない。


 だが、事ある毎に喉越し喉越し、と言うくらいには楽しい食事なんだそうだ。

 ということで、うどんを使って夕食を終えた。


 あとはアゲパンハウスに向かい、床に藁を敷いてこれをクッションとする。

 この家の広さはおよそ6畳間ほど。

 扉があり、土落としがあり、奥は板の間ですぐにベッドだ。


 ベッドの大きさはシングルの大きめなやつ。

 アゲパンが一人で寝るには広いが……。


 コゲタと一緒に寝ることを想定しているな。

 それに6畳間というのは、コボルドからすると人間にとっての十二畳くらいの感覚である。

 この世界では十分な広さじゃないだろうか?


 鎧戸をいっぱいに開くと、夜空が見える。

 夜半ともなれば、アーランの街は静まり返るのだ。


 貴族街は、舞踏会が行われるお屋敷でもない限りは、灯りがもったいないからすぐに寝てしまうからね。


「星がきれいだなあ」


「ですなあ。船の上でも眺めるものですが、こうして家の窓から見上げるというのは新鮮ですぞ」


「そっか、船で夜勤しているとずっと星を見ることになるもんな」


「ですぞー。ですが、あれは常に緊迫感に満ちた星見。一つ間違えれば航路をそれ、目的地につける可能性が減じますからな」


「そうだよなあ。船は航路を知るには星見くらいしか無いもんなあ。星と海図を見ながら航行するんでしょ?」


「ですぞ。方位磁針もありますが、水底の磁力を帯びた岩によって容易に方向は狂いますからな。最も正確なのは星の位置です」


 カズテスの島に行った時も、帰る時も、星見を担当する船員たちが夜を徹して船を導き続けた。

 海上の星とは命綱であり、ロマンではなくリアルなのだ。


 だからこそ、何の責任も負わずに眺めることができる地上の星は、ダイフク氏にとって特別なのだろう。


「ただ美しいだけの星というものはいいものですなあ……!」


「サウザンド大陸に戻ったら好きなだけ星を見られるだろ? 無事に帰りなよー」


「そうありたいものです! カエルは海の泳ぎは苦手なものですからな! 塩で浮いちゃう」


 カパッと口を開けるダイフク氏なのだった。

 カエルジョーク!

 これで聞き納めだなあ。



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― 新着の感想 ―
と、いうことは、入婿の感じで迎えて、神殿やダンジョンに出勤という形かな?
更新ありがとうございます >「あっ、おとうさん!!」 もう許しちゃっているんですねΣ(゜Д゜)
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