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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
85・カレーライス誕生?

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第261話 丼飯の力を見よ

 ホカホカご飯にビネガーを混ぜると、なんとも言えぬ素晴らしい香りがしてくる。

 酢と米のマリアージュ……。

 昔は防腐のためにやったんだと聞いたことがあるが、今はもう、酢飯は美味しいという僕の感覚を信じて作る。


「不思議な香りがしてきた」


「ビネガーだと思うが、なんと言えばいいのか……」


「なるほど、なるほどな。いきなりビネガーをぶち込んだのはなぜだと思ったがそういう料理なのか。ふむふむ。具材はシンプルだが……本体の方に工夫を? しかしまあ、きれいなもんだ。白い粒がだんだんビネガーの色を纏っていくな」


 さすがギルボウ、いい目をしている。

 そしてついに酢飯は完成した。


 扇ぎながら混ぜていただけなんだが。

 そしてこのやり方は夢枕で知識神から学んだ!


 これを皿に盛り付ける。

 丼、丼が欲しい。

 絶対に作ってもらうぞ。


 そして酢飯の上に、漬けになった刺し身を並べていくのだ。

 おお、色とりどりの刺し身よ。


「さあ召し上がれ」


「ほう……、これはシンプルな料理に見えますが……」


 神官氏が唸った。


「知識神より賜った私の知恵が言っています。未知なるものを先入観で判断することなかれ、と……!」


「偉い」


「どれどれ、俺は早速」


 もりもりと食べ始めるギルボウ。

 全く先入観なく食べる辺りが彼の凄いところである。


「ほうほう!! ほほう!! タレに漬けた刺し身とビネガーのマリアージュは多少分かっていたところがある。だが、この米というのはとんでもないな……! なるほど、そのものが極めて淡白な味だからこそ、ビネガーとタレに漬け込まれた刺し身の味を受け止められるのか。しかも……噛むほどに甘くなる……! なんなら粥にしてさらさらと飲んでもいいな、これは」


 鋭い!

 ギルボウは、麦と比べて米が柔らかく、食べやすいことに気づいたのだ。

 だからこそこれは、加工せずそのまま炊いて食べられる。


 さらにそのものが水分を多く含むため、スープにつけて食べたりなどをしなくてもいいのだ。

 慣れないとちょっと癖があると思うが、これこそが我が魂の主食。


 飼い主氏と騎士ボータブル、神官氏も食べ始めた。


「あ、なるほど……。柔らかい。そして濃い味の食材と合うね」


「ふむふむ!! これは未知の食感ですな! だが、悪くない……!! パスタともまた違う。これはそのものを食べると言うよりは、色々なものと合わせていくための穀物……!」


「完全に理解しました。米とは料理の器であり、より料理を引き立たせることができる最高の脇役……!! 未知の穀物です。しかも食べやすい……!! ちょっと粘り気が強いのが好き嫌いが分かれるでしょうが」


 みんな食レポが上達しているなあ。

 知識神は謹慎を言いつけられていても、きちんと己の権能を果たしているらしい。


 なお、コボルド軍団は酢抜き、タレ抜きのお刺身ご飯だ。

 ちょっと塩を振ってある!


 大好評なのだ!


「おいしー!!」


「おいしーね!」


「うんままー!! みじかいおこめうんまー!」


 米を食べ慣れているハムソンは、インディカ米ばっかりだったわけだからな!

 船の中でもたくさん食べたと思うが、常に美味しさに感動できるのはいいところだと思う。


 さて、僕も漬け丼を。

 うん、美味い!


 王道の美味さだ。

 パクパクと食べて、あっという間に平らげてしまった。

 箸と丼を作る。

 これが次の課題だな。


 そして、カレーライスも作らねばならない。


「おいナザルよ。こんなもんじゃないんだろう?」


 ギルボウが分かってるぞ、という顔でニヤリと笑う。


「その通り。この米をカレーと合わせるんだ」


「ほう、カレーと米か! そいつはまた……奇想天外な組み合わせだ。だが、お前はずっとカレーにひと味足りないようなことを言っていたよな。つまりお前はずっと完成形を追い求めていたってわけか」


「全部言ってくれるじゃん! つまりはそういうことだよ。今日はみんな流石に腹いっぱいだろう。それに米の量も限られてる。カレーライスは僕らと、あとは殿下のご一家に献上するぶんだけにしておこう」


「なるほど、こいつは罪深いな。お前が執着するくらいだから、カレーライスとやらは恐ろしく美味いんだろう。だが、そいつをまだ、ほんの一握りのやつしか食うことはできない! 米が収穫できるのを待つしかないってわけか……!」


 一を言えば十くらい理解してくれる男だなあ。

 美食方面では最大の理解者と言って過言ではないだろう。


「それで、集めるメンツはどうする? 俺とお前と」


「カレーは流石にコボルドには大変だから、もっと五感が鈍い種族で固めよう。つまりドロテアさんを呼ぶ」


「お前、あの奥さん好きだよな」


「ギルボウだって好きだろ」


「当たり前だろ! 男だったらあんなおっとりした美人好きにならないわけがない」


 わあわあ僕らが騒いでいるうちに、他のメンバーも食事を終えたようだった。

 皆満足げだ。


「いや、実に興味深かったです。よし、帰るぞハムソンくん! 知識神に今回我々が知ったことを祈りによってお伝えするのだ!」


「おいのり!? おいのりおいのり! おなかいっぱいだからとちゅうでねちゃうかも!」


「祈りながら寝るなら結構!」


 なんか意外と気が合うのかもな、という神官氏とハムソンが出ていき、その神官氏の監視役である騎士ボータブルも出立した。

 で、飼い主氏は「今回も美味しいものをありがとう。また期待しているよ」と告げてアララちゃんと一緒に帰途へつく。


「ご主人! これからどうするの?」


「そうだな。遺跡でお米を育てる必要もあるし……苗を地下四階に運んじゃうか!」


 僕の長い一日は、まだ終わりそうにないのである。



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― 新着の感想 ―
これで神々の食卓も豊かになりましょう。
あれ?箸ってそばの時に作ってあったような
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