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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
84・カズテスの遺跡

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第257話 かくしてカズテスの島に油が満ち

 カズテスの遺跡に油を収めたおかげで、どうやら島のあちこちから油が採れるようになったらしい。

 他の作物は上手く根付かなかったというが、油と肉と山菜があればごちそうが作れるだろう。


 僕らがエスカレーターとなった螺旋階段で降りていったら、長毛種コボルドたちはお祭り騒ぎだった。

 みんなで肉やコケや米をじゅうじゅう炒めている。


 あっちでは油が跳ねて「ウグワー!」とか手痛い教訓を得ている。

 賑やかだなあ!


「おお、御三方!」


 長老が進み出てくる。


「油を収めてくださったのですな。ありがとうございます。これで我らの村も豊かになります」


「食用油程度だけどね」


「十分です。我らは食料は足りておったのです。環境は厳しいですが、故に我らは協力して生き残ってきております。そこに油が加わったなら、今よりも少し生きやすくなることでしょう」


 無欲な人たちだなあ。

 足るということを知っている。


 雪山にて、カズテスの遺跡の番人を務める長毛種コボルドたち。

 彼らはこうして静かに、かつての主を守り続けていくのだ。


「あっ、なんか船のところでワイワイ騒いでる!」「出発するのかな!」


「なにっ!」


 水晶板を除いていたコボルドたちの声を聞いて、僕は飛び上がるほど驚いた。

 船に出ていかれては困る!

 ちょっとゆっくりしすぎたか!


 僕らは藁のコートを纏って、外に飛び出した。


「あーっ、吹雪が! 吹雪いてるからお気をつけて!」


「わほーい!」


 なんか背中にくっついてきた気がするぞ……。

 だが構ってはいられない。


「それじゃあみんな、元気で! 僕らは帰ります!」


「もふもふ堪能させてもらったよー!」


「じゃあねー!」


 僕らが手を振ると、コボルドたちもワーッと手を振って送ってくれた。

 ここでリップルが、浮遊の魔法を行使するのだ。


「ウインドバリア。フィールドレビテーション。ライトフライト」


 ライトフライトというのは、浮かんだものをほどほどの速度で飛ばす魔法らしい。

 吹雪を防ぎながら、僕らは丸ごと浮かび上がってのんびり進んでいく。


 おお、長毛種コボルドの小さい人たちは外に飛び出して見送ってくれるじゃないか。

 可愛いなあ。


 コゲタもずっと手を振り返していた。

 その隣でハムソンも元気に手を振っている。


「……んっ!? ハムソン!?」


「こんちわーっ!!」


 マルチーズのコボルド、ハムソンが振り返るなり、元気いっぱいに手を振ってきた。

 いかーん!

 なんかくっついてきたと思ったらハムソンだったのか!


「リップル! 戻るのは……」


「間に合わなくなるかも知れないよ」


「く、くっそー! 仕方ない!」


 ハムソン一人連れて船まで行くか!


「ハムソン、君は僕らと一緒に来るかい?」


「うほー! いっくぜー!」


 ぴょんぴょん飛び上がり、レビテーションのフィールド内を走り回るハムソン。


「はしったらめーよ!」


 後ろからコゲタが追い回す。

 狭いところをバタバタ動き回るもんだから、目で追いきれないな!


 そうこうしているうちに、棒術スケアクロウたちの里の上空だ。

 ここでも、僕らに気づいたスケアクロウが手を振ってくる。


「僕らは帰ります! お世話になりましたー!!」


 短い間だったが、濃厚な思い出になった。

 長粒種の米はゲットしたから、これをアーランで育てればいい。

 

 コゲタは棒術スケアクロウたちに思い入れがあるみたいで、ずっとフィールドの壁に張り付いて、見えなくなるまで手を振っていた。


「またこれるかなあ」


「どうだろうなあ……」


 多分、もう二度と来ることはあるまい。

 だが、未来は分からないからね。


 そして草原を抜けていく。

 肉食恐竜たちがフィールドを追いかけて、ドタドタ走っていく。

 そして熱帯雨林に突き当たり、ギャッと叫んで戻っていった。


 ここからはコボルド村の上空だ。

 みんなポカーンとしながら僕らを見上げていた。


 なんというか、呑気な人たちだなあ。

 そして彼らの村にも油が湧いたようで、早速炒め物が作られている。


 大いに活用し、美味しい食生活を楽しんでくれ!


 パグ村長が最後に我に返り、小さく手を振った。

 村長、元気でな!


 熱帯雨林の上空を抜けて……僕らはスケアクロウの里へ。

 そこでは、そろそろ懐かしくなってきた人物が水田に腰掛けて僕らを待っていた。


「おおー、来ましたな。なんとなく船で忙しそうにしていたら戻って来ると思っておったのです」


「ダイフク氏!」


 ここでレビテーションは終わり。

 僕らは田んぼの畦道に着地した。


 ハムソンが猛烈な勢いでキョロキョロしている。


「どこここここどこここどこどこここ!?」


「おちついて!」


 コゲタに額をペチッとされて、「うぐわー」と落ち着くハムソンなのだった。

 雪山と、棒術スケアクロウの里以外の世界を知らなかったんだもんなあ。

 これからお前さんの世界はグーンと広がるぞ。


 ちなみにハムソンはマキシフと顔見知りであり、再会したら「イヨー!」とか声を掛け合ってハイタッチしていたのだった。

 そして船員たちにもまとわりつき、色々聞いたり教えてもらったりしている。

 このマルチーズ、陽キャだぞ。


 なお、港がある辺りは暑かったようで、マルチーズはすぐにポテンと倒れてばてた。

 いかんいかん。

 僕は彼の毛をチョキチョキとトリミングしてやる。


 コゲタにやってあげているから、僕のトリミングの腕はなかなかなのだ。

 すぐにスッキリハムソンになった。


 また伸びるだろうが、その時はトリミングすればいい。


 こうして出港の準備が整っていき……。

 カズテスの島に別れを告げる時が近づくのだ。



お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
無欲な人たちってのは、必要なものが定期的に手に入れば、それ以上は求めないんだよねえ。
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