第194話 見つけた! 南国の表記!
どうやらここは、遺跡が機能していた時代にこの第四層から上を管理するための部屋だったらしい。
どういう用途だったんだ……?
四層まではモンスターに満ちており、あのクァールもこの四層から出現したよな。
遺跡はそもそも、古代魔法王国時代に作られた代物で、上層は当時の魔法を使えない民……蛮族……つまり今主流になっている僕らが入り込めないよう、障壁として作られたものだというところまでは調べがついている。
だが、この遺跡そのものの役割は未だに不明なのだった。
「魔法王国時代そのものは、どこかの大陸で出現した魔法王が、全世界の魔法力を吸い上げて何か大きな事をしようとしたら……何者かによって倒されて魔力は雲散霧消。強制的に魔法王国時代が終焉したらしいね」
「ははあー。魔法王ってリップルみたいな?」
「私とは次元が違う存在だよ。伝説に謳われる魔法王は、それこそ神みたいな力を持っていたそうだからね」
リップル以上!?
で、そいつをぶっ倒したやつがいる?
一体どんな化け物なのだろうなあ……。
そんな事を考えつつ、書庫の本を漁るのだ。
ほうほう、図鑑が出てきた。
あっ、これ、第一層から第四層までで出現するモンスターの区分が描かれてるじゃないか。
「リップル、これこれ」
「大発見だね。だけど私達の目的はそれじゃないだろう?」
「そうだった。例え、第四層の攻略を即座に終わらせられる本が発見されたとは言っても、それでは南国に行くことはできない……」
道は険しいぞ。
「あーっ、西の大陸の存在を示唆する本……。世界の外から降り立ったオーバーロードによって隔離されており、人間たちを駒として邪悪なゲームが千年の間続けられている……。魔法王はこれを征服するつもりだったらしい……? でも南国とは関係ないなあ」
「すごい本ばかり見つかるな。だけど、それは流石に創作だろ……」
「だろうねえ」
世界的には大発見なのだろうが、どうせこれらは僕らが来てないことにし、後から来る攻略チームの手柄に残しておくのだ。
僕らはただ一冊、南国について書かれた本が欲しい。
「遥か南方のサウザンド大陸には神々が降臨したと言う本があったよ!」
「遥か南方……。ダイフク氏の故郷だなそれ。そこかなあ……。南国で、耳の垂れたコボルドの記述とかある?」
「無いなあ」
「じゃあスカだ」
南に行き過ぎた!
もうちょっと北……。
だが、地理について書かれた本はこの辺りというのが分かったぞ。
西、南と来たら……ここか!
スパッと抜いた本は、割と綺麗だった。
あまり手に取られない本だったのかも知れない。
だが、僕はこの本を手にした瞬間に勝利を確信した。
何故なら……表紙には鼻眼鏡のおじさんと、ぺたんとした耳の直立した犬たちが描かれていたからだ。
もう、垂れ耳コボルドの本確定じゃないか!!
「見つかったぞリップル! これだこれ!」
「ほんと? うわー! あからさまにそれだ! どれどれ?」
二人で本を開くと……。
そこには、分かりやすい絵と短い文章で解説が書いてあった。
っていうか、これ絵本だ!!
信憑性が急に薄くなってきたぞ……。
「いやナザル。これはかつて南方を訪れた大魔道士カズテスが、おとものゴーレムに自分とコボルドを描かせた本だ。絵の情報量が高いため、文章は先入観を抱かせないよう最小限の補足に留めているみたいだね」
「そんな本があったのか! ははあ、確かに背景はとても緻密に描かれてて、植物の一本一本がよく分かる。だが、こんなにマンガみたいな顔の人いる?」
「君の言うマンガというのがよく分からないが、カズテスはこういう顔だったんだろう。あるいは、ゴーレムがアレンジを加えたか」
「アレンジを!?」
「それくらいの性能があるゴーレムは珍しくない……のかも知れない」
「ほんとぉ……?」
だけど、まあある程度信頼に足る書籍であることは確かなようだ。
最後のページに、海図が描かれていた。
なるほど、サウザンド大陸とうちの大陸……ノーザンス大陸って言うの?
その間……いや、ちょっとノーザンス寄りにあるんだな、垂れ耳コボルドの島。
さらにちょっと南に割と広い島がない?
この海図見てると、ノーザンス大陸ちっさ!
サウザンド大陸の半分もないじゃないか。
で、西のオーバーロードによって隔離された大陸はウエステレン大陸。
かなりでかい。
サウザンド大陸よりでかい。
この世界パルメディアには、まだまだ知らない土地が広がっているんだなあ。
「よし、帰ろうかリップル。こいつを船主に見せることにするよ」
「ああ、それがいいね。そして私も船に乗せてもらうので、一緒に会いに行くとしよう……」
これから面白くなるぞー、とウキウキしながら部屋を出る僕ら。
ちょっと行ったところで、今まさにフラッグを立てている冒険者たちと鉢合わせ……。
「あっ!!」
「うわーっ!!」
「マインドショック!!」
リップルの魔法で短期記憶をぶっ飛ばし、失神した彼らの脇を慌てて駆け抜けるのだった。
いやあ、危なかった危なかった!!
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