表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
63・帰るぞ帰るぞ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/337

第188話 寄り道は続く、魚の南蛮風

 フォーゼフの美味しい野菜に舌鼓を打ち、それはそれとしてスムージー酒は美味くなかったよなあ、体には明らかに良かったけど……。

 なんて思い出を得た僕ら。

 農業の国を後にする。


 そしてしばらく旅をすると、周囲が大変ポカポカと暖かくなってくるのだ。

 大陸で一番温暖な場所といえば……。


「ご主人ー!! うーみー!」


 先をトテトテ走っていったコゲタが、視界がひらけた場所でぴょんぴょん飛び跳ねた。

 森とか茂みとか草原だったのが、いきなり右手側が岩礁になったねえ。

 海がどこまでも広がっている。


 この大陸の南方には、お米があるという島と巨大な大陸が存在しているらしいが。

 西方には何があるんだろうな。


 案外、未知の大陸があったりして。

 夢が広がるなあ。


 そんな感じで一日旅をしたら、眼の前が巨大な砂浜になった。

 程々の距離の海の向こうに、島がある。


「一年ぶりだなあ、ファイブショーナン! そろそろ秋のはずだけど、ここは本当に常夏だな!」


「入国審査が厳しいと聞くが、入れるのか?」


 飼い主氏が心配しているが、大丈夫大丈夫。

 僕がいるから顔パスだ。


 しばらくすると潮が引いていき、島までの道が浮かび上がってきた。

 トコトコと渡っていく僕らなのだ。


 島の入口にはムキムキのお兄ちゃんが立っていて、僕らを止めた。


「入国審査をする。お前はうちの国の人間っぽいからいいよ」


「相変わらずザルだ!!」


 僕だけファイブショーナン人に特徴が近いので、スルーされるのだ。


「僕は女王陛下の友人である油使いなのだが。ほら、油をだらだらーっと」


「あーっ、陛下のお知り合いでしたか。あの噂のナザルさん? グルメの巨人ナザル?」


「妙な称号がついてるな……」


 結局僕の仲間だということで、シズマも飼い主氏も通してもらえた。

 飼い主氏はツーテイカーの工作員なんだが、誰の連れかという信頼はとても大事なのだ!


 なお、コボルドはスルーだぞ。


「コボルドが何か企むことなんかありえませんからね」


「全くその通り」


「あったかーい!」


「ぽかぽかー!」


 コゲタとアララちゃんがはしゃぎながらファイブショーナンに駆け込んでいく。

 うんうん、南国らしい植生と、土でできた道。

 ログハウスっぽい家ばっかりある町並みとか、テンション上がるよな。


 どう見ても南国の島なんだもんな。

 日差しが常に強い。

 だが、日陰がたくさんあるし、そこに入れば全く暑くなくなる。


 海風が吹き抜けて大変気持ちいい。

 これぞファイブショーナン。


「おお……!! なんというところなんだ! ただこうして立っているだけで心地良い……。この世の楽園……」


「まさにな。そのかわり、文化的にも技術的にも未熟なままだ。なぜかっていうと、人間、満たされていると成長する必要がないからだ」


「なるほど、深い……」


「今度アーシェを連れてきてやりてえなあ」


 おっ、シズマが彼女持ちらしい事を言ってるじゃないか。

 その彼女を二ヶ月ほったらかしなわけだが!


「せっかくなんで女王陛下に挨拶して行こう。こっちだ」


 僕は宮殿に向かうことにした。

 おっ、道行くおばちゃんに、コゲタとアララちゃんが果物をもらってるな。

 にこにこしながら「ありがとー!」とお礼を言っている二人。


 ありがとう言えて偉いぞ。

 ついでに僕らも果物をもらってしまった。

 あんまり甘くないマンゴーみたいなやつだ。


 喉の乾きが潤うー。


 五人でもりもり食べながら歩いていたら、宮殿が見えた。

 どでかいログハウスである。


 門番たちが座り込んでゲームみたいなことをしていたのだが、僕らに気付いてよっこらしょ、と立ち上がった。


「外の人間だな? 女王陛下はお会いにならんぞ」


「ナザルだよ。油使いのナザル」


 また油を出す様を見せると、門番たちがハッとした。


「あのスーパーグルメアドバイザーのナザルか!?」


「また変な二つ名が出てきたぞ……! ここの住人、暇つぶしに僕にあだ名つけて遊んでるじゃないだろうな……?」


 だが、通してくれることになった。

 飼い主氏が感心している。


「さすがはナザルさん、顔が広い……!」


「ファイブショーナンとアーランの国交を樹立したの、半分は僕の功績だからね……」


「なんという人だ……!!」


 顔が広いと、どこでも美味しいものが食べられるようになるからいいぞ。

 例えば……。


「おお、ナザルではないか! ちょうど魚の南蛮風を食べるところだったのじゃ! たくさん量を作ったからそなたらも来るがよい!!」


 ゴージャスなお姿の南国美女が現れた。

 女王陛下のバルバラ様である。


「やあお久しぶりです。近くに来たんで寄りました。最近どうです?」


「アーランからどんどん美味いものが入ってくるのでな、食べるのが実に楽しいぞ! まあ、この気候ゆえ日持ちがせんがな」


「あったかいですからねえ」


「なので国民の食生活は実は全然変わっておらぬ」


「うーん、ファイブショーナンの日常を維持する力が強い」


 国民は今の生活を変える面倒さよりも、現状維持の楽ちんさを選んでいるらしい。

 そしてそして、ご馳走になった魚の南蛮風は大変美味しかった。

 寒天のジュレソースが進化しているなあ。


「あっ、魚美味い……。こんな味付けがあるんだ……」


「あー、白飯が欲しい~」


「おいしー!」「おいしー!」


 僕ら、色々美食を体験しているが、なんだかんだ何を食っても美味いよな……。

 舌が肥えないというのはいいことだ。


 こうして、ファイブショーナンでも一泊するつもりでいる僕なのだった。



お読みいただきありがとうございます。

面白いと感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
地産地消が裏目に!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ