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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
60・北の国へ

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第177話 探れ、冷凍魔法

 まずは旅の疲れを癒やすべくサウナに向かう。

 コゲタとかはサウナはダメなので、お湯を用意してもらって後でゴシゴシ洗ってやろう。

 コゲタ、お風呂嫌がるんだよなー。毛皮が濡れるのが嫌らしい。


 いつもは宿で、おかみさんのパワーでごしごし洗われているのだ。


「では俺たちはサウナに行ってくる……」


「いってらっしゃーい!」


 コゲタが元気に送り出してくれた。

 彼はポーターのところに行って一緒に遊ぶらしい。

 すっかり荷馬と友達になってしまった。


「では行くか、サウナ」


「うむ!」


 僕とシズマでサウナに入る。

 と言っても小さなサウナだ。

 二人で入るといっぱいいっぱい。


 そしてむわーっとすばらしい熱気と蒸気に煽られ、僕たちは「ウワーッ」と久方ぶりに思いっきり蒸された。


「前に来たときは仲間がサウナに入ってくれなくてな……」


「シズマは前の彼女を説き伏せて入ってもらえばいいじゃないか」


「蒸し暑い場所からようやく涼しいアーランに来たのに、どうしてまた蒸し暑いところに入らなくちゃなんないのーって断られた。普通の風呂だったら良かったらしい……」


「まあまあアツアツじゃないか」


「古い言い方をなさる」


 中の人間が古めなんでね。

 しかしシズマよ。

 ファンタジー世界ギャルのアーシェと、それなりにいい仲なのではないか。


 僕は、二人のゴールインもまあまあ近いのではないかと睨んでいる。

 アーシェは結構世話焼きみたいだし、シズマみたいなのに母性本能をくすぐられるんだろう。


「何を俺を見てニヤニヤしているんだ。あれか? 俺の胸板に見とれていたのか」


「薄いじゃないか」


「そりゃあ俺は後衛だからな! ナザルだって……いや、お前は案外筋肉付いてるな」


「農作業するからね……」


「よくやるよなあ……」


 そんな話をしていたら、汗がだらーりだらーりとたくさん出てきた。

 いやあ、サウナって本当にいいものですねえ。


 暑い暑い、といよいよ我慢ができず、僕らは外に飛び出した。

 すると、ローブ姿のお姉さんが待ち構えている。


「あっ」


「これはいかん」


 僕らはタオル一枚で股間を覆っただけの姿である。

 妙齢のお姉さんに見せられるものではない。


 だが、お姉さんは冷静である。


「はーい、ちょっと冷ましますねー。凍れる吐息を束ね、あまねく世界に吹き付ける。たおやかに……コールドウインド」


 スーッとほどよい涼しさの風が吹いてきた。

 ひゃーっ。

 気持ちいいー!


 その後、お姉さんが入れてくれたよく冷えたお茶を飲む僕らなのだ。

 いやあ、お茶の美味いこと!!


「やっぱサウナはいいねえ」


「ああ、まさか異世界で整うとは思わなかったぜ……。ソフト整いだ」


 僕らがそんな話をしていたら、お姉さんが「じゃあ私はこれでー」と去っていったのだった。

 きっと宿のサービスだったんだろう。

 金払いは良くしておくものだ。


 しばらく二人で茶を飲んで、ボーっとする。

 そして、ふと気付いた。


「あれ? あの人、冷やす魔法を使ってた?」


「使ってたなあ……」


「目的の魔法を使える人じゃないか!! 何を僕らは呆けてたんだ! いや、サウナで副交感神経が優位になってたから、なーんも考えられなかったんだけど……」


「しゃあない。どうせあの人もワンダバーにいるんだろう。汗が引いたら街に繰り出そうぜ」


 そういうことになったのだった。

 コゲタを覗いてみたら、寝藁の上で、ポーターと一緒にぐうぐう寝ている。

 そっとしておいてあげよう。


 さて、僕らは街へ繰り出すのだ。

 そろそろ日が傾いてくる頃合い。

 夏とは言っても、ワンダバーの夕暮れ時はちょっと肌寒くなってくる。


 上着を羽織っておいて正解だった。


「宿の主人に聞いた話だと、若い魔法使いがサウナの後の冷風係としてバイトするんだそうだ」


「ほおー、そんなニッチなバイトが……」


「この国の主な風呂はサウナ……蒸気浴だからなあ。夏場は冷風が必要なんじゃないか」


「なるほど、そういうことか」


 なお、こうやって整う習慣があるためか、ワンダバーは極端に老人が少ない都市だ。

 不思議と良いお年になる前に、神様のもとへ召されてしまう人が多いらしい。

 うんうん、整うのは心臓に悪いからね……。


 僕らは徐々に暗くなる街中を練り歩き、とある場所を探す。

 それは呑兵衛横丁みたいな場所だ。


 たくさんの漁師がいるという国ならば、彼らは一日の疲れやストレスを癒すべく、ガブガブ酒を飲むに違いない。

 そういう酒を提供する場所が大々的に存在しているはずだ。


 さらに、そこではニッチなニーズにも応えるため、魔法使いたちがまあまあ静かに飲める店だってあるだろう。

 狙いは後者だ。


「ナザルはなかなかマニアックなところを狙っていくな」


「自然な感じで話しかけられるだろ? それにアルコールで向こうの判断力も落ちてる」


「なるほどずる賢い!」


 ちょうどそれらしい地区を発見!

 煮物の香りが漂ってくるではないか。


「あ、これな、魚や海獣の内臓の煮込みなんだ。美味いぞー」


「えっ、美味しそう……」


 ふらふらと肉体労働者向けの店に立ち寄りそうになりながらも、任務を思い出す僕なのだ!

 鋼の意志で、今はちょっとオシャレな魔法使い向けの店に行くぞ……!


 飲み屋街を歩くと、その一角から空気が変わる。

 明らかに、何件かのバーが連なる物静かな場所になっているのだ。


 ここが恐らく、魔法使い向けの店舗が並ぶ場所。

 一番それっぽいところを狙い、仕事を果たし……。さっさとモツの煮込みを食べに行こう。



お読みいただきありがとうございます。

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