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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
59・ツーテイカーぐらし

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第172話 どんよりとした朝が来た

 ツーテイカーの宿で目を覚ます。

 いい宿を用意すると言われて、地下に案内されたんだが。

 僕はある程度外の光が差し込まないと気分がよろしくないのだ!


 ということで、ちょっと無理を言って地上にある宿にしてもらった。

 ほら、身を守るのは得意だから。


 僕のベッドの横には小さいベッドもあり、誰もいない。

 コゲタが先に目を覚まして、宿の中を探検しているのではないだろうか。

 昨日は帰ってくるなり、すぐにぐうぐう寝てしまったからね。


 それと、今夜はお風呂に入れねばな。


「あ、ちょっとだけ晴れてる」


 部屋は二階。

 窓から外を見ると、鉄格子越しに青空が見えた。

 そう!

 鉄格子だ!


 これは外からの侵入を防ぎ、客が逃げるのを防ぐためなのだ。

 いやあ、治安が悪いですねえ。


 しばらくすると、「ただいまー! ご主人おきてるー?」とコゲタが戻ってきた。

 宿屋の中だけなら安全ということで、特別にお散歩を許してもらっているのだ。

 他の宿だと危ないからね。


 だがここは違う。


「おかえりー。そしておはよう。おやコゲタ、何かもらったの?」


「もらった! おいもにパンくずつけたやつ!」


 ニコニコしながら、もらった朝のおやつをもぐもぐするコゲタ。

 ご満悦だ。

 この国の食事は基本的に質素なものだ。


 主食は芋とパン。

 パンも麦ではなく、ライ麦に似た何か不思議な植物から作られる。

 蕎麦に近いかもな。


 で、蕎麦もまたガレットにして食べる。

 コゲタにちょっと分けてもらって、僕も食べてみた。


 おお、素朴なお味……。

 味付けは塩だけだな。

 昨夜の夕食も、芋とガレットともやしみたいな植物の漬物、そしてメインは燻製肉だった。


 あの肉は多分豚かなあ……。

 不味くはない。

 だが、豊かな食生活に慣れると、とても質素に感じるのだ……。


 この国の食生活を……救いたい!


 だが、それはそれとして朝飯だ。

 意外なことに、この国は水が豊かだ。

 湿気が多いので、この湿気を水に変える仕組みが発達してるんだそうだ。


 その他、湿気が溜まって地下に流れ込み、地下水になっている。

 これを組み上げる井戸もあちこちにある。


 顔を洗う水を用意してもらって、口を濯いだりする。


 ああ、そうそう。

 この国、ベッドが面白い。

 じめっとしているけど、ベッドは大きな藁を編んだみたいな作りをしており、その上にシーツを被せてある。

 通気性が素晴らしいんだこれ。


「人はじめじめした場所でも、快適に暮らす方法を考えるものなんだなあ」


 ちょっと感動したりなどするのだった。

 コゲタは水に顔を付けて、ぶくぶくしている。

 そしてパッと水から離れて、顔をブルブルさせた。


 うおー、水気が飛び散る!


 こうして準備を終えて部屋の外に出る。

 一階の食堂では、シズマが朝っぱらからビールを飲んでいた。


「朝からいい身分じゃないか」


「おうナザル! さっきからコゲタがちょろちょろ走り回ってたぞ。ま、この宿は俺たちの貸し切りだから問題ないけどよ」


 宿はベンクマンの口利きで、僕ら専用に借り上げられている。

 それなりにいいお金が出るらしい上に、僕らはお行儀のいいお客さんということで、宿の従業員たちはニコニコしながら仕事をしているのだ。


 まあ、この従業員というのがみんな屈強な男女なんだが。


「しかしまあ、驚いた。この国のビールはさ、エールじゃないんだよ。井戸水で瓶を冷やしてあるから、冷たくて美味いんだ」


 ぐっとやって、プハーッとするシズマ。

 なお、アルコール度数は低そうなのでそこまで酔わないとのことだった。


 さて……僕も朝食をいただくとしよう。

 朝飯は、芋だ。

 蒸して塩を振った芋にベーコンがついてて、キノコのソテーがどっさり。

 あとは漬物。


 この漬物でビタミンを摂るんだろうな……。

 いや、ちょっと酸っぱくて味のアクセントになるから、嫌いじゃない。


 酒を作る過程で生まれる酢を使って漬け込んでるんだろう。


「すっぱーい」


 コゲタが顔をしかめた。


「ちょっぴりづつでいいから食べなさい。体にいいから」


「うぇー」


 そして蒸した芋を食う僕。

 じゃがいもに似た芋だ。

 普通に美味しい。


 ベーコンは塩気強めでこれも美味いな。

 コゲタ用はちょっと塩抜きしてあるスペシャル品だ。

 さすがは借り上げた宿。


「ビール飲みます?」


 ウエイターのいかつい兄ちゃんに聞かれたので、ちょっと考える。


「いや、僕は舌を鋭い状態にしておきたいんで、お茶で」


「了解です」


 颯爽と去っていく。

 ちょっと待っていると、ジョッキに注がれたお茶が出てきた。

 これをふうふうやりながら飲むのだ。


 塩や獣脂を溶かしてスープみたいにして飲むのもいいらしい。

 土地が変わればお茶の飲み方も変わるものだ。


 ああ、しかしこのベーコンはいいな!

 カリカリに焼いてある。

 朝からエネルギーを貰えるベーコンだ。


「ナザル、ずっとぶつぶつ食レポしながら食ってるなあ。職業病じゃないか。さっすが。俺なんか一人暮らしが長すぎて、ひとり飯はずっと無言で無表情で食うよ」


「僕もそんなもんだよ。だけどほら、うちには食べ盛りの子がいるからねえ」


 コゲタがむしゃむしゃーっと芋を食べている。

 顔の周りが芋だらけになったので、拭いてあげた。


「誰かと食べていると、ちょこちょこ喋りながらの食事も楽しくなるんだ」


「そんなもんかね? だが、お前さんの顔は幸福度高そうだし、そんなもんなんだろうなあ……」


 でも俺はしばらくは一人でいいや、とまたジョッキを傾けるシズマなのだった。

 さて、これを食べ終わったら本日の仕事が始まるぞ。



お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
食レポのうまいヤツに囲まれてるとねえ。
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