表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
54・蕎麦に関する冒険

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

155/337

第155話 森の奥の職人に聞く

 その他、オウルベアともすれ違った。

 森の食べ物が潤沢にあるようで、彼らも人間に興味を示さない。

 というか僕を見たらスッと離れていって、目を合わそうともしなかった。


 なんだなんだ。


「ご主人、こわがられてる!」


「そんなばかな」


 僕のどこが恐ろしいというのだ。

 僕の何を知っていると言うんだ。

 だが戦いを避けられたことは良いことだ。


「もりのどうぶつ、ご主人さけてる!」


「そんなばかな。僕が何をやったというんだ。いや、やったな……大いにやった」


 森で大立ち回りというか、油の力を使って暴れること数回。

 きっと彼らはそれを見ていたのだろう……。


 悪いことはするべきではない。

 いや、悪いことじゃないんだが。


「ご主人どうするのー?」


「そうだなあ。蕎麦の香りが分からないようなら、森の奥にいる職人たちを訪ねてみようか。彼らは入口の職人たちと違ってグルメに浸ってはいないだろう……」


 一縷の望みをかけて、森の奥へ奥へと向かったのだった。

 ちなみに、森はそれなりに広大だ。

 只中で一泊することにする。


「夜に襲撃されないように備えなくちゃな」


「ご主人のによい、どうぶつたちこわがる! こないよ!」


「そうなの!?」


 コゲタから衝撃的な話を聞いてしまった。

 コボルドは人間と動物の間くらいの存在だから、双方の気持ちみたいなのを察することができるのかも知れない。


 では、テントを立ててコゲタと一泊する。

 夕食は持ってきたパスタを、戻した干し肉と合わせてトマドで和えたやつだ。

 僕のにはちょっと塩を振る。


「いっしょのごはんたのしみね!」


 コゲタがお料理が出来上がるさまを見つめて、ウキウキしている。


「そうだなあ。一緒に食べるとさらに美味しくなるもんな」


「おいしい、すきー!」


 ということで。

 二人でパスタをもりもり食べ、その後、コゲタが昼間見つけたものについて色々お話をしたいらしいので、それを聞くなどした。

 ほうほう、食べられる草のにおいがたくさんしたと。

 だが、その中に蕎麦の存在はなかった。


 このあたり、土が割と肥沃なので、蕎麦が生えにくいのかもしれないな。

 森は広葉樹が茂っているのだが、古い樹木はオウルベアが押し倒したり、ヴォーパルバニーが試し切りで倒すのだ。

 お陰で、日差しが差し込む場所が森のあちこちに出来上がり、木々の新陳代謝を呼んでいる。


 で、倒れた木々や枯れた草花は分解され、森の掃除屋が土に変えてくれるわけだ。

 なるほど、肥沃なはずだ。


 どこかの国では、森を切り開いてそのまま畑に使えてしまうらしいしな。


 蕎麦はもっと地面が痩せているところを探すのがいいのかもなあ……。

 そんな事を考えてたら眠くなってきた。


 コゲタは喋り疲れて、うとうとしている。


「コゲタ、寝るならテントの中で寝るんだぞ」


「はぁい」


 ふらふらテントに入っていたコゲタは、尻尾と後ろ足が入りきってないのにぐうぐう寝始めてしまった。

 仕方ないなあ。

 僕は彼を持ち上げて、テントの奥の方に寝かせる。

 そして隣で僕も寝転がった。


 テントの外からは虫の声がする。

 なんとものどかな森の夜。

 こんなに緊張感の無いキャンプを楽しむことができるとは……。


 僕のにおいが強くて危険なモンスターが寄ってこないなら、それを最大限に利用させてもらおう。

 朝まで無防備に爆睡してやるのだ。


 明け方。

 コゲタの尻尾が顔をパタパタしてきたので目覚めた。


「うおー」


 なんだか、もさもさしたもので全身をはたかれる夢を見た。

 なるほど、コゲタが僕の上で大の字になって寝ていたんだな。

 しかも上下逆だ。


「コゲター。コゲター」


 足の裏をむにむにする。


「ふわわわわ」


 コゲタがぷるぷるし始めた。

 犬がご主人よりも長く寝ていてどうするんだ。

 一緒くらいの睡眠時間で行こう。


 コゲタがころんと横に転げて、パッと起き上がった。


「おきた!」


「起きたかー。朝ご飯食べたらまた出かけような」


 近場の川から水を汲んできて、煮沸する。

 で、お茶にして飲むのだ。


 あー、朝のお茶が美味い。

 そう言えば茶そばというものがあったな。

 お茶でそば粉を練るのかな……。


 蕎麦が食いたいな……!


 小麦を練り、無発酵パンというかチャパティを作って食べた。


「おいしー」


「コゲタはなんでも美味しく食べられるから偉いなあ」


 僕はコゲタの眉間をもみもみした。

 ちょっと食休みをした後、テントを片付けてまた出発だ。


 森の奥までは、およそ半日で到着した。

 詰め所の前で職人たちが材木を加工している。


「おーい、おーい」


「おや、ナザルじゃないか!」「久々だなあ」「また何か仕事のついでに来たのか?」


 客人が珍しい場所なので、職人たちが集まってくる。


「実はやんごとなき事情がありまして」


「事情……?」


「蕎麦を探しているんだ。こう、栄養のなさそうな土地で育つ植物から採れるやつで、ボソボソしてて、灰色で、食えなくもない味みたいな……」


「むう……」「食ったことがあるような」「いや、確かに食ったことはあるぞ。粉が尽きちまった時に、代用で食った」「ああー、あれかあ!!」


「知っているのか!!」


 ついに蕎麦の手がかりが得られた!!

 どこだどこだ!


「いや、ナザル。お前も見たことがあるだろう。去年、国の旗を立てに森の外れに行っただろ。あそこの崖に山ほど生えてる……」


「な……なんだってー!!」


 ごくごく身近なところに、蕎麦はあったのだ!



お読みいただきありがとうございます。

面白いと感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すでに、害獣から人外扱い・・・
[一言] 二人仲良くキャンプの情景、微笑ましい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ