表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
41・息抜き依頼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/337

第124話 磯汁? ブイヤベース?でパワー充填

 よく煮込まれた海産物は、ガンガンに出汁を発揮して美味しくなる。

 コゲタも食べるから、塩は控えめに。

 自分たちが食べる時にちょうどいいだけ振ろう。


「いただきまーす」


「おや、ナザルの国の神の教えですかな? ではワタクシめも。おお太陽神よ、大いなる輝きの元、今日の糧に感謝します。美味そう! 美味そう! 美味そう!」


「思ったよりも野性的な聖句だった」


「うまそう! うまそう! うまそう!」


「あっ、コゲタがマネをしてしまった」


「ふしゅしゅしゅしゅ、バルガイヤーの教えを理解するとは、感心な子ですな。その気があれば神殿にいらっしゃい。ワタクシめが導きましょう……。コボルドの信徒は初めてですがな」


「わん?」


 コゲタはもう、磯汁というかブイヤベースというか、このスープを夢中で食べているところだ。

 声を掛けられたら、お顔をびしょびしょにしながら振り返った。


「おいしい?」


「おいしー!」


 コゲタニッコニコ。

 なんでも美味しく食べるコゲタ。

 いいことだ。

 僕も塩を振ってから磯汁を食べた。


 うん、いい味だ。

 野趣あふれる感じである。

 雑多な海産物から出た出汁がいい感じで効いているなあ。


 あまりに美味そうな匂いを漂わせていたので、近くにいた船乗りとかが集まってきた。


「ちょっともらっていい?」


「どうぞどうぞ」


「うめえー」


「あー、美味いわ。染み渡る」「魚は航海中に飽きるほど食ってくるのにな」「こうやって煮込むと全然風合いが変わって感じるな」「酒が欲しい……」


 彼らも夜の見張りらしく、酒は禁止されているようだ。

 今夜だけの我慢だからな。

 お互いこの夜をやり過ごそうな。


 こうして集まってわいわいとブイヤベース的なものを啜っていたら、バンキンとキャロティが戻ってきた。


「うわーっ、美味そうなもの作ってやがる! ぐるっと港を回って腹ペコだったんだ……!」


「今日ばかりはあたしも肉食うさぎよ! そのスープちょうだい!!」


 賑やかになった賑やかになった!

 では、鍋の采配権をバンキンに譲り渡し、僕らは仕事に出るとしよう。


「腹ごなしの運動だ。さあぶらつくぞ」


「ええ、参りましょうぞ。ワタクシめは夜目が効きましてね。まあ夜は寝てることが多いんですが、種族としては夜が有利で、しかし冷えると動きづらくなるので主に昼間に活動を」


「御託が長い人だな……!?」


「つまりですな。温度を見分けることができますぞ。ワタクシめの目には、ナザルよりもコゲタのほうがちょっと体温が高いのが見て取れる」


「サーモグラフィ!」


 リザードマンってそういう能力があったんだなあ。


「コゲタはね! はな!」


「うんうん、コゲタは鼻がいいなあ」


「嗅覚ではワタクシめもコゲタには勝てませんな!」


「やったー!」


 コゲタ、褒められたと思ったようでぴょんぴょん飛び跳ねている。

 はしゃいで海に落ちないようにね。


 こうして、停泊している船と船の間を歩き回る。

 警備である僕らは船に乗り込むことも許される。


「どうもどうも」


「ああ、こりゃどうもどうも」


 船員たちと挨拶しながら、船の中を練り歩かせてもらう。

 僕が知る、こちらの大陸……文明圏の船とはちょっと違う。

 意外とこちらの船は東洋風の帆船なんだよね。

 で、南方大陸のそれは西洋風というか。


「じゃ、頑張ってください」


「ほい、お疲れ!」


 船の一隻からちょうど降りるタイミングだ。


「ご主人、におい!」


 コゲタが顔を上げてキョロキョロした。

 そして鼻先が向くのは対面の船。


「どーれ? ふしゅしゅっ! 船をよじ登る体温! 水の温度に近くて見分けづらいですが、これは人間ですなあ。三つ!」


「いたかー。海から上がってきたんだろうな」


「あの距離ですと、ワタクシめはちょっと追いつき難いですな。泳ぎはいいのですが、壁を登るのがこの図体ですと」


「大きすぎるのね」


「我らの種族の中にはそういった曲芸が特異な小型種もおりますな! ちなみにワタクシめ、最大の種であるデミドラゴン種でございましてな! ふしゅしゅしゅしゅ」


「あー、でかいもんね……!! じゃあ僕が行くよ」


 海に飛び込む僕。

 だが、既に海面には油が広がっていく。


「がんばれ、ご主人~!」


「ああ、がんばるぞ!」


 コゲタの声援を受けて、海の上を滑る僕。

 油あるところ、僕は自在に移動できるのだ。


「異常なアクションをしてますなあ……」


 サルシュのしみじみとした呟きが聞こえた。

 そんなおかしなことをしているだろうか……? だって油は水に浮くではないか。


 僕は足元からさらに油を広げていく。

 あまりやり過ぎると、船が浮かび上がって横転してしまう。

 量はほどよいくらいで……。


 油が船の横を這い上がっていく。

 海側から侵入しようとしていた連中は、どうやら僕に気付いたようで素早く動き始めた。

 少し遅い。


 オブリーオイルとゴマ油を混ぜ合わせた、滑らかな油が加速する。

 油は侵入者が手にしていた鉤爪に絡みつき……。


「あっ!」「うおっ!!」「うぐわーっ!!」


 つるんと滑って、海に落ちた。

 だが潜ることは許さない。

 たっぷりの油で彼らの周囲を取り巻き、浮いたままにするのだ。


「な、なんだこれは!?」「油……!」「畜生、油使いが来てやがった!!」「あの野郎冒険者を引退したんじゃないのか!?」


「ところがどっこい、冒険者に復帰したんだ。よろしくな」


「くっそー! 水に潜れねえ!」「水に浮いたまま手で掻くこともできねえー!」


 これで船に侵入しようとした連中を確保だ。


「お仕事終了だー!」


 僕が声を掛けたら、サルシュが背後の船を見ながら、尻尾を振った。


「いやあ、残念ながら」


「なんだと!? まだいるの!?」

お読みいただきありがとうございます。

面白いと感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ