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第3話

   

「今日は何か特別な日なのですか? 値引き品が多いみたいですけど……」

 会計の際、レジで軽く尋ねてみる。

 すると奥さんは、にっこり笑って答えてくれた。

「はい! 今日は創業の記念日でしてね。開店15周年記念として、昨日から明日までの3日間、セールをやってるんです!」

「ああ、それはそれは……」

 奥さんとご主人の年齢から考えて、前身の八百屋を含めず、スーパーになってからの「15周年記念」なのだろう。ならば「創業の記念日」と言いつつ、実際はスーパー開業の日付に違いない。

 そんなことを考えて、一瞬言葉に詰まりながらも、すぐに祝辞が口に出た。

「……おめでとうございます」

「ありがとうございます! いつもご贔屓にしていただいて、本当に感謝しています。これからもよろしくお願いしますね!」

 ぺこりと頭を下げる奥さん。

 私の「おめでとうございます」に返す意味での「ありがとうございます」のはずだが、この言い方だと「いつもご贔屓にしていただいて」に関する「ありがとうございます」みたいだ。


 心の中で少しだけ苦笑する。ただし口に出したのは、素直な感謝の気持ちだった。

「いえいえ、こちらこそ『ありがとうございます』ですし『これからもよろしくお願いします』ですよ。この場所にこのスーパーがあるおかげで、わざわざ駅の反対側まで行く必要がなくて……。本当に助かっていますから!」

「まあ! お客様から『本当に助かっています』なんて言っていただけると、まさに店主冥利につきますわ。本当に、これからもよろしくお願いしますね!」

 奥さんの笑顔は、見ている私の方まで嬉しくなるほどだが……。

 世間話はそこまでだった。背後に人の気配を感じたからだ。次の客がレジに並ぼうとするタイミングだったらしい。

「では、また」

 私は最後に一言挨拶して、スーパーを後にするのだった。

   

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