表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第2話

   

「こんにちは、奥さん」

 店に入りながら、軽く挨拶する。私の名前までは認識されていないとしても、常連客の一人として顔は覚えられているはずだった。

「あら! いつもありがとうございます」

 聞き慣れた陽気な声が返ってくるけれど、今日のレジには奥さんのみ。ご主人の姿は見当たらなかった。

 とはいえ、心配する必要もないのだろう。ほとんどバイトも雇わずに夫婦二人で(いとな)むスーパーだ。品物を奥から出したり、あるいは仕入れに出かけたり、ご主人はレジ以外で働いているに違いない。

 だから彼の不在についてわざわざ彼女に聞くことはせず、私は普通に店の中へ。

 店内の陳列棚では、天井の白色ライトに照らされて、どの商品も美しくディスプレイされていた。それらを見て回りながら、肉や野菜、足りなくなった調味料など、予定通りの品物を買物かごへ入れていく。その(かん)もご主人の姿を目にすることはなかったが、特に気にしたりはせず……。

 それよりも気になったのは、値引きシールの貼られている商品が多いこと。「3割引!」とか「半額!」みたいな手書きポップも、あちこちで目立っていた。


 駅の反対側にある大手スーパーは、毎月20日と30日に5%オフのセールをしている。それと重ならないよう、このスーパー「尾塚屋」では5の付く日、つまり5日と15日と25日が恒例の割引日になっていた。

 さらに時々、週末に臨時セールを開催する場合もあるけれど、今日は13日の金曜日だ。いずれにせよ、割引の日ではないはずだが……。

「とはいえ、安いなら安いで問題ないよな」

 自分を納得させるかのように、買物しながら独り言を口にする。「安かろう悪かろう」という言葉もチラッと頭に浮かんだものの、ほんの一瞬だけだった。

 少なくとも素人目には、肉も野菜もいつも通りの品質に見えたからだ。有名メーカーのチルド食品や冷凍食品なども、ほとんどが大幅に値引きされているけれど、特に賞味期限が迫っているわけではなかった。

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ