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音楽は世界を救えない

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 人生は時には迷い、苦しい道を歩く羽目になることがある。

 しかし、深い闇を抱えながらも、希望を見つけることができるからこそ、人は生きる意味を見つけることができる。


 私は歌を歌うことしかできない。

 でも、辛い道を歩んでいる人たちに寄り添い、彼らが失った希望を取り戻す力を与えることができるかもしれない。


 そして、それが私たちの歌が届けることであり、それが私たちの歌が人々を勇気づけ、温かさを与えることである。


 欠点は、歌は個人にしか届かないという点である。ジョン・レノンの平和を歌った『イマジン』はことある毎に流されるが、戦争を止める力はなかった。自身への暴力すら止められず、殺されてしまった。


 それでも、歌は、苦しみから解放される道を照らし出す、そして、希望を見つけるために必要な勇気を与える、気がする。気がするだけかもしれない。徴兵されてシベリア抑留された芸能人が講談より歌の方がみんな幸せそうな顔をしていたので歌手になったと聞いたことがある。三波春夫だっけ。


 僕はカラオケはやらない。歌は金取って歌う。プロの歌手だ。アルバムが売れなくなって、ネットのサブスクに移行したら収入が激減して食うのがやっとになった。ライブと物販でなんとかやっていっている。まあ、路上で寒さに凍えながらギター片手に歌っていた頃よりはマシだが。


 それに、僕もそうだがヒット曲が出にくくなった。昔の曲ばかり聴いている。

 音楽業界の没落、と思う。


 でも、僕は音楽をやり続ける。心の底からふつふつと湧き上がってくる曲、詩。表現する快感、ウケたときの快感は得がたいものだ。


 バックバンドに合図する。

 ワン、ツー、ワンツースリー!

 ライトを浴び、前奏のギターリフが始まる。ファンの歓声が響く。

 僕の人生のショーが始まる。この瞬間のために音楽をやっているんだ。


 興奮して射精しそう。

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