あつい夏の、かく恋慕
私はもうすぐ高校生になる。
私の住んでいる近くに高校はないから受験は少し離れた街ですることになる。
優くんの受験先は聞いてないけど、同じ学校に行きたい。
いずれ聞くつもりよ。
学力は同じくらいだから、私だけ落ちる心配は必要ないわ。
大丈夫。頑張れ、私!
私と優くんは2人とも一人っ子だったからいつも一緒に遊んでいたわ。
私と優くんは家族ぐるみの付き合いで、優くんの親から将来の娘だなんて言われたこともあるわ。
恥ずかいしけど・・・少し嬉しい。
その時、優くんの顔は直視できなかったけれど下を向いて少し赤くなってたと思う。
違っててもそうであったら嬉しいな。
まだ付き合ってはないけれどね。
いつも告白しようって思ってるの。
けれど優くんの顔見たら今の関係を壊したくないなって、毎回先送りにしちゃう。
もう、私のバカっ。
私と優くんが最初に会ったのは引っ越しの荷解きを終えて隣の家に挨拶に行ったときよ。
そこからは幼稚園なんて周りにないからいつも2人で遊ぶようになったわ。
小学校に上がっても私の学校は十数人しか全校生徒がいない小学校と中学校が混じった田舎の学校だったし、
同い年は優くんしかいなかったから、そこでも私たちはいつも一緒にいたの。
小学3年生の一学期の終業式の日、放課後に何人かで遊ぼうってなったの。
年齢が大きく離れてて、鬼ごっことかは流石にやめたわ。
そんなの年上が有利すぎるもの。当然よね。
それで、みんなで平等にできる遊び何かないかなぁって、考えたわ。
そこで私はひらめいたの。
「かくれんぼにしたい」って。
勝つ自信があったの。
なんたって私と優くんは2人で遊ぶとき互いの家でかくれんぼばっかりやっていたんですから。
やるからには勝ちたいじゃない。
2人でやっていたかくれんぼはいつも引き分けだったわ。
毎回優くんは私を見つけたし
私も優くんを毎回見つけられた。
2人揃えば怖いもの無し、鬼に金棒って思っていたわ。
かくれんぼならみんなでできていいってことで、かくれんぼをすることになったわ。
鬼は最年長の美咲お姉ちゃん。
いつも大人びていて甘えさせてくれる大好きなお姉ちゃん。
血は繋がってないけど本当の姉妹みたいに慕っているわ。
けれど怒るとすごく怖いの。
小学校に入って少し経ったとき、美咲お姉ちゃんに優くんと2人でいたずらしたのよ。
別に大したことはしていないわ。
なにをしたかなんて今回の話にはさして関係ないのですし。
ふふ、話を戻すわ。
それで他のメンバーは2個年上の圭介お兄ちゃんと舞お姉ちゃん。
2人も私たちみたいに小さいときから一緒に遊んでいたらしいわ。
いつも仲良しで2人が別々なのを見たことがなかったわ。
あとは4個上で中学1年生の涼太お兄ちゃん。
2個下の快斗くんと修介くん。
涼太お兄ちゃんは美咲お姉ちゃんの弟よ。
そして合計8人でかくれんぼをすることになったわ。
場所は学校。
小さい子供がいるし、学校終わりだったから当然と言えば当然の結果ね。
さて鬼ごっこが始まったわ。
涼太お兄ちゃんは快斗くんと修介くんを連れて隠れに行った。
圭介くんと舞ちゃんはやはり2人で隠れに行った。
私と優くんはもちろん一緒に隠れることにしたわ。
学校はそこまで大きくないから、隠れる時間は5分だけ。
美咲お姉ちゃんが外で数を数えている間に、急いで隠れなきゃいけなかったわ。
私は優くんと相談したわ。
今までのかくれんぼの経験からどこが見つかりにくいかを考えながら隠れ場所を探していたの。
コツは隠れていそうなところに隠れるけれど、見つからないように工夫することよ。
この前、押入れの布団の中に優くんが隠れたとき全然見つからない時があって、その時私いなくなっちゃったって泣いちゃったわ。
私の泣き声を聞いた優くんが出てきて見つけれたけどね。
嘘泣きではなかったけれど、少しずるいかしら?
それもあって私たちはそのような場所に向かうことにした。
それは保健室の押入れよ。
2人だと流石に布団の中には隠れられない。けれど布団の奥に隙間がある。
そこに2人で体育座りで足を布団の下に滑り込ませれば隠れられる
私たちは勝ったと思ったわ。
そのとき美咲お姉ちゃんの声が聞こえた。
「探すからねー。ちゃんと隠れたー?」
私たちは急いで隠れたわ。
押入れは正面から見て左側に布団が少し寄ってるから、右側から入ったらすんなりと隠れることができた。
それに幸い我が校唯一の入り口からは1番遠いところに保健室はあるのでちゃんと隠れられた。
ただひとつだけ問題があったわ。
私、実はあんまり暗いところは得意ではないの。
私が先に押入れの中に入ったから少し怖かったわ。
いつもかくれんぼをするときはカーテンの裏とか、ソファーの下とか、明るいけれど見つかりにくそうな場所に隠れていたわ。
1番優くんが私を探すのに手をこまねいていたのはお風呂の浴槽に隠れた時よ。
半分だけ蓋を閉めておいて外から浴槽の半分が覗けるようにしたのよ。
蓋を全部開けられて見つからないようにね。
あれは今でもとてもよかったと思うわ。
怖かった私はずっと優くんの左手を握っていたわ。
蒸し暑い押入れの中だから、汗ばんでいたら恥ずかしいわ。
優くんのほうもいつもより強い力で握り返してきていた。
優くんはそんな暑くなかったのかしら。
むしろ少しひんやりしていたもの。
私の手が暑すぎたのかもしれないわ。
ただ握られた手は少し痛かったわ。
まぁ私も強く握っていたからお互い様よね。
それに嬉しかったから、少し痛いくらい気にしないわ。
私達が息を潜めて隠れていると、とうとう保健室の扉が開いたわ。
古くて立て付けが悪い扉はガラガラと大きな音を立てた。
保健室の隠れる場所なんてベットの中かベットの下、そして押入れくらいしかないものだから、すぐに押入れの扉は開かれた。
けれど大丈夫だったわ。
作戦勝ちね。
布団を押して調べていたけど私達はその奥にいたから気づかれなかったわ。
少し時間が経ってたから、美咲お姉ちゃんの声が聞こえたの。
「私の負けー。出てきてー。他の人は全員見つけたよー」
私たちはみんなのいるところに行った。
もう少し粘られて探されていたら危なかったわ、健康面でね。
暑すぎて意識が朦朧としてきていたもの。
おそらく脱水症状でも起きていたのね。
優くんも汗びっしょりだったし、私も汗びっしょりだった。
私は壁側に隠れていたから優くんが出たあとに出よあとしたんだけどね、握られていた右手が動かなかったわ。
多分強く握られすぎて痺れていたんだと思う。
私の右手には跡がついていたから優くんも暗いところは本当は怖かったのかもしれないわ。
それでも次の瞬間には普通に手を動かせたから特に気にもしなかったわ。
けれど優くんの左手には後がついていなかったのが不思議だったわ。
後で優くんに聞いても手なんか握ってないって言ってたし。
しかしもう少し粘られて美咲お姉ちゃんが探していたら健康面で危なかったわ。
暑すぎて意識が朦朧としてきていたもの。
おそらく脱水症状でも起きていたのね。
優くんも汗びっしょりだったし、私も汗びっしょりだった。
お父さんにかくれんぼの話をしたら、最後に「男は見栄を張りたがるもんだ。」って笑って言われたわ。
ふふ、そうなのね。照れ隠しかしら。
だとしたら優くんも私を意識してくれてるのかもしれないわ。
ってそんなことを小学3年生のときに思っていたのだから、私ってば本当におませさんね。
ところで吊橋効果って本当にあるのかもしれないわね。
だってそのときから互いに意識し始めたと私は信じているもの。
そうそう。
言ってなかったわね。
この前、夏祭りの最後に言いたいことがあるって言われたわ。
もし告白だったら嬉しいわ。
うふふ、これで話はおしまい。
惚気が多かったかしら。