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『救世主』

「それで、私のところへいらっしゃったわけですか」

「私の正体を知っている凄腕の回復魔導士は、この世界にフローラ1人しかいないからね」


 重傷を負ったサレヴィアとルーワカを連れて、私たちはアルファード城に来ていた。

 フローラの部屋に勢揃いした、気分次第で世界を滅すことができるメンバー。魔界の最上位悪魔が3体。天界の熾天使が1体。


「ほんと、私しかいなくてよかったですね。なんですかこの状況……普通の人であれば、このプレッシャーに耐えきれずに精神が崩壊してしまいますよ」

「あはは……」


 ルーワカを優しくベッドに寝かせながら、私は苦笑を浮かべる。


「それにしても、サレンが最上位悪魔だったなんて驚きましたよ。あの強さからして、ただ者ではないと思ってはいましたが」

「アンタこそ、王女様だったなんてね」


 微笑を浮かべる、フローラとサレヴィア。


「冒険者協会で働く魔界の最上位悪魔。リンが知ったら白目を剥きながら発狂しますよ」

「ふふっ、光景が目に浮かぶわね」

「リンだけでなく、ルーキスも寂しがっていますよ。その戦争とやらを早く終わらせて、冒険者協会に戻ってあげてください。ほら、傷を治すので服をめくりあげてください」

「ルーキス……?」

「可愛らしい格好をされている酒場のマスターですよ」

「ルーキスっていうの。大将の名前なんて初めて知ったわ。そうね、久しぶりにカツサンドも食べたいもの」


 フローラの回復魔法で、サレヴィアの傷が塞がっていく。その腕前は、時間を戻しているかのように思えてしまうほどである。


「はい、終わりましたよ」

「驚いた。傷跡ひとつないわ」

「戦闘能力は皆無ですが、回復魔法なら誰にも負けません」

「ありがとう。アンタがいなかったら、アタシは死んでいたかもしれないわ」

「困ったときはお互い様です。さて、次は――」


 全員の視線が、ルーワカに向く。

 腰まで届くふんわりとした金髪。3対6枚の黒翼。漆黒の天輪。首から下げられた青い宝石のペンダント。魔界の軍を率いる将軍だけが着用を許される軍服。


 ――そして。


「クソチートおっぱいがここまでやられるなんて、想像ができねえですよ」


 豊満な胸。

 間近でルーワカの胸を凝視しながら、エーテルノが呟く。


「エーテルノ!! 怪我人に近づかないでください!!」

「わ、わりいですよ」


 ささっと離れるエーテルノ。


「エーテルノの言うとおり、アズリオンの次に強いルーワカがここまでやられるんだもんね。サレヴィア、何があったの」

「アルバティンを守るために、ルヴィエラと戦ったのよ」

「えっ?」


 竜界の序列1位――『暴食』ルヴィエラ。

 神を喰らいし、竜界の王である。


「ラードニアやティアレじゃなくて、ルヴィエラが出てきやがったんですか!?」

「魔王様も、まさかルヴィエラ自らアルバティンを殺しにくるなんて思わなかったみたい」


 驚愕するエーテルノに、サレヴィアは真顔で答える。

 ルヴィエラが魔界最強のサポート役であるアルバティンを最優先で殺そうとするのは、私も予想していた。てっきり、ラードニアとティアレを組ませるとばかり。


「空間転移でアズリオンを連れて来ようにも、ルヴィエラが隙を作るはずもないか」

「一瞬の隙を作るために、ルーワカ様は全力で戦ったわ」

「すごいな」


 このひとことしか出てこない。

 過去のルヴィエラを知る私だからこそ理解できる。神の力を手に入れたルヴィエラを相手にして、一瞬の隙を作ることがどれだけ難しいことか。


「それでは、治療を開始します。ここまでの傷になると、全ての魔力を持っていかれそうですね」

「フローラ、アンタは魔界の救世主よ」

「あはは、熾天使カレイアと魔王アズリオンと友好な関係を持つ私は歴史に名を残すレベルの危険人物ですね」


 これは笑い事じゃない。

 下手したら、神からも目を付けられるレベル。まあ、神であってもフローラに害を成そうとするならば私が止めてみせるけどね。


「く、うぅ……」


 少しずつルーワカの傷が塞がっていく。

 魔力消費が激しいのか、きつそうな表情を浮かべるフローラ。


「大丈夫、フローラ……?」

「も、もう少し……も、う、すこ、し……あっ」

「おっと」


 ふらりと倒れそうになるフローラを、私は支えてあげる。


「カ、カレン、ありがとうございます……」

「気にしないで」

「世界の運命が私に懸かっているのです。失敗は許されません」


 ぱんぱんと頬を叩いて気合いを入れ直し、治療を再開するフローラ。

 苦しそうにしているフローラを見て「無理はしないで」と言ってあげたいが、世界の運命が懸かっているので口から出てこない。

 ルーワカの復活が、勝率に大きく関わってくるのだ。サレヴィアとアルンフィードも真剣な表情でフローラを見つめている。


 ――そして、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。


 フローラが、私たちの方に振り返る。

 ぷるぷると震える右手を持ち上げて、静かにピースサインを浮かべた。


「やり、とげ、ま、した……」


 体力と魔力の限界を迎えてしまったのか、フローラは気絶してしまった。

 素早く駆け寄って、私はフローラを優しく抱き寄せる。


「ありがとう、フローラ」


 私は微笑むと、幸せそうな表情を浮かべているフローラをベッドに寝かせてあげるのだった。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!


フローラ大活躍。

次回、ルーワカ復活か。


面白い・続きが気になると思っていただけましたら、こちら↓↓↓の広告下にあります「☆☆☆☆☆」欄にて作品への応援を頂けますと、今後の励みとなります。


これからもよろしくお願いします!!

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