『騒動の原因』
「「「「「終わった~!!」」」」」
バーベキューの後片付けが終わると、私たちは歓喜の声を上げた。
立つ鳥跡を濁さず。サツキの故郷で伝えられている言葉らしく、立ち去る時には後始末をきちんとしておかなければならないという意味らしい。来た時よりも美しく。断言しよう、このビーチには塵1つ無い。
「予定よりも早く終わったねえ。夕方にもなってないし」
「時間もあるですし、観光と行きてえところですが……クラーケン騒動のせいでほとんどの店が閉まってやがるんですよね」
「あ~」
エーテルノに言われ、アメルは残念そうな表情を浮かべる。
「じゃあ、帰りますか?」
「サツキ、そうはいかないんだよね。ねえ、エーテルノ?」
「はい、クラーケンの討伐で依頼は完了したですが、騒動の原因は取り除けてねえです」
「原因?」
エーテルノの言葉に、サツキは首を傾げる。
「クラーケンは大昔から恐れられている上位の魔物なんですよ。そんな魔物がいきなり住む場所を変えるなんて、ただごとじゃねえですよね」
「あっ……」
理解したのか、サツキが声を洩らす。
「住む場所を追われたとすれば、クラーケンよりもやべえ魔物が現れたっていうことになるんですよ。私たちはまだそいつをぶっ倒してねえんですよ」
「クラーケンよりも強力な魔物……そんなもの数えられるほどしかいませんよ」
「さっきから魔力感知で捜しているんだけど、それらしいものはまったく見つからないんだよね」
魔力感知を行っているが、小型魔物らしき弱い魔力反応しか無い。
「カレイア先輩の超広範囲魔力感知で捕まらないとなると、島から遠く離れた場所にいるか存在しないかの2択ですわ」
「うーん」
クレアに言われ、私は魔力感知を停止させた。
魔力感知に引っかからないとなると捜しようもないし、私とエーテルノの思い過ごしならいいんだけど――
「こんなところで考えていてもアレだし、ギルドハウスに帰ろうよ。何かあったら冒険者協会に依頼が来るよ」
「そうだね」
今からワイバーン航空サービスで帰れば、夜には帰り着くだろう。
ウォルマーレ島は、観光地というわけで宿泊施設の値段が高い。魔物が現れるまで泊まろうものなら財布がすっからかんになってしまう。
「皆様は、ご自宅に帰られるのですね」
「うん、クレアも来るよね」
「いえ、それはまたの機会にお願いしますわ。わたくしはアリアとルフィアを捜さなければなりませんので」
「そうだったね。じゃあ、アリアとルフィアを見つけたら商業都市レスドアの冒険者協会に来たらいいよ。私の名前を出せばいいから」
「商業都市レスドアですわね」
クレアは頷くと、黄金色の天輪と3対6枚の白翼を顕現させた。
「クレア様、お気をつけて」
「ギルドハウスで待ってるからねえ」
「海に落ちねえように気を付けるですよ。てめえの水死体なんて見たくねえですから」
「ありがとうございます。皆様もお気をつけて」
サツキ・アメル・エーテルノに別れの挨拶をすると、クレアは天高く舞い上がる。
一気に高度を上げていき、あっという間に見えなくなった。
「さあ、私たちも帰ろうか」
「通信魔道具でワイバーンを呼ぶですよ」
「ちょっとまって。ワイバーンだと時間が掛かっちゃうし、今回は私に任せてよ」
通信魔道具を取り出そうとしたエーテルノを、アメルが止める。
「ムンちゃんじゃあ、海は超えられねえですよ」
「霊峰ファウゲールで言ったかもしれないけど、私は空を飛べる魔物と契約しているんだよね。プライドが高いからお母さんの言うことしか聞かないけど、カレンとエーテルノちゃんが脅し……説得してくれたら仲良くなれると思うんだ」
「脅しって言わなかった?」
「言ってない」
私に見つめられ、アメルは視線を逸らす。
「いちいち通信魔道具で手配するのもクソだりいですもんね。アメル、その魔物とやらを早く呼ぶですよ。くだらねえプライドを圧し折ってやるですよ」
ぽきぽきと指を鳴らし、不敵な笑みを浮かべるエーテルノ。
「ちなみに、その魔物の名前はなんていうの?」
「しろちゃんだよ」
「えっと、しろちゃんって……?」
「お母さんは、ペガサスって言ってたね。白い翼が生えているお馬さんなんだよ」
「「……」」
アメルの発言に、私とエーテルノはポカンと口を開ける。
ペガサスといえば、神を背に乗せることを許された天界の神獣。天界の森林地帯にある聖なる泉に生息しており、熾天使もしくは神の命令にしか従わない。
「アメルのお母さん……どうして、ペガサスと契約しちゃってるの……?」
「わかんない。旅の途中で出会ったんじゃない?」
「ええ……」
アメルのお母さん。
シルバーウルフといいペガサスといい、どうして天界の神獣と契約できているのか。
ほんと、何者なんだろう。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
シルバーウルフだけでなく、ペガサスとも契約を結んでいたシオンさん。
何者なんですかねえ。
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