『師匠と弟子』
クレアの治療が終わると、私たちはバーベキューを始めることになった。
「さあ、てめえら食うですよ!! どんどん焼いていくですよ!!」
「「「ごちになります!! 我らがバーベキューマスター!!」」」
エーテルノの掛け声で、私たちはクラーケンの肉にかぶりつく。
噛み応えのあるクラーケンの肉。素材の味を楽しむということでそのまま食べても美味しいが、エーテルノが作ったソースをかけるとお肉の旨味がもっと引き出される。
「うふ~♪」
幸せそうな表情で、クレアが口元に付いたソースを舌で舐めとる。後輩の幸せそうな表情を見るだけで、なんだか私も元気が湧いてくる。
「クレア、ジュース飲む?」
「ジュース!! いただきますわ!!」
「天界には無かったジュースだよ。私も大好きなんだよねこれ」
「ふあああぁぁぁっ!! なんですかこれ!! しゅわしゅわしますわ!!」
しゅわしゅわジュースを飲んだ瞬間、クレアがキラキラと目を輝かせる。
「作り方は分からないけど、甘酸っぱい果実ジュースをなんらかの気体でしゅわしゅわさせているらしいよ」
「わたくしも好きですわ!! お肉との相性抜群ですわ!! しゅわしゅわですわ!! パクパクですわ!!」
無邪気な笑みを浮かべるクレアを見て、エーテルノが小声で話しかけてくる。
「なんかキャラ違うくねえですか。ヤンデレって、こんな可愛いやつだったですか」
「うん、私とアリアといる時はこんな感じだよ」
「キレた時とのギャップが凄すぎてなにがなんだかわかんねえですよ」
「あはは……」
困惑した表情を浮かべるエーテルノを見て、私は苦笑する。
「食事をしたら、元気が湧いてきましたわ!! 今ならハレスもソフィエルも殺せそうですわ!!」
具材が無くなり、バーベキューの終わりが近づいてきた頃――
クレアが声を上げた。
「元気いっぱいになっても勝てないよ。私たちが天使であるかぎり、ハレスには何があっても勝てない。ハレスに勝てるのは、アズリオンとルヴィエラだけだよ」
「魔王と竜王ですか」
「魔界に行って、アズリオンに頼んでみようかな……サレヴィアの件で1つ貸しがあるし」
「厳しいと思いますよ。魔界と竜界は戦争中ですから」
「「えっ」」
クレアの言葉に、私とエーテルノは驚愕の表情を浮かべる。
「天使兵が言っていましたの。決戦の場は魔界と竜界の境界壁。戦争を仕掛けたのは竜界。戦況はやや魔界優勢と」
「誰と誰の部隊かわかる?」
「サレヴィアとヴェルナですわ。実力差はそこまでありませんから、状況次第ではどうなるか分かりませんわね」
サレヴィアとヴェルナ。
サレヴィアのほうが1枚上手ではある。
しかし、地上に落とされてしまえばサレヴィアに勝ち目はない。
「デカい貸しを作るチャンスじゃねえですか。でこすけとイケメンくそったれと合流して、魔界を助けてやったら」
「まって、アリアとルフィアも人間界にいるの!? てっきり、クレアが1人で逃げてきたのかと」
「あれ、言ってなかったですか」
「言われてないね!!」
エーテルノの爆弾発言に、私は思わずツッコミを入れてしまう。
「アリアちゃんとルフィアちゃんって?」
「私たちも話に入れてください」
クラーケンの肉を食べながら話を聞いていた、アメルとサツキが会話に入ってくる。
「アリアは後輩で、ルフィアは友達だよ」
「天界の序列4位――『神装』ルフィアですか。星座となった神の権能を扱うことができるんですよね。熾天使カレイア伝説に書いてありました」
「そんなことまで書いてるんだ……うん、ルフィアは強いよ。ラードニアと互角くらい」
「ラードニアと……!!」
ルフィアの強さを聞いて、瞳を輝かせるサツキ。
「サツキ様は、ラードニアとなにかあったのですか」
「ルヴィエラとラードニアに村を滅ぼされまして。10年後にラードニアを殺すために修業中なんです」
「サツキは飲み込みが早くてね。教え甲斐があるよ」
弟子の成長は、何よりも嬉しいものである。
笑みを浮かべる私を見て、クレアは何かを閃いたのかポンと手を叩く。
「その計画、わたくしも協力しますわ。カレイア先輩の弟子ならばわたくしの妹弟子になるということですから」
「えっ」
クレアに手を握られ、サツキは間抜けな声を上げる。
「クレアは教え方上手いし、ちょうどいいかもしれないね」
「カレイア先輩の許可も頂きましたし、さっそく修業を始めますわよ!! まずは貴方の実力を見せてくださいな!! サツキ!! 殺す気でかかってきなさい!!」
妹弟子と認めたのだろう、サツキに対しての様呼びが無くなった。
バーベキューの匂いが漂うウォルマーレ島のビーチで、弟子同士の手合わせが始まるのだった。
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地雷さえ踏み抜かなければ、クレアは優しい子なんです。
地雷さえ踏み抜かなければ。
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